多くの人に響く作品は「努力して、もがいてつくる…」
――本作に限らず、多くの人を魅了し、感動させる作品をつくる上で大切にしていることはどんなことですか?
マン監督:私の映像作家として仕事は「観客の感情を呼び起こすこと」だと思っています。僕自身、映画を見に行った時、映画から呼び起こされる感情に自分を浸らせるんですが、そこであまり感じるものがないという場合は、その映画があまりうまく機能していないということですし、最悪の場合、退屈してしまうこともあります。
自分が映画をつくる時、観る人のどんな感情を呼び起こしたいのか? ということを考えるようにしています。
ある意味で、私は(『インサイド・ヘッド』の感情たちのように)みなさんの頭の中にある感情の制御装置を操作しようとしているわけですね。もちろん、良い方向にね(笑)。

――言葉も文化も違う世界中の人たちに届く作品を制作するというのは、決して簡単なことではなく、大変な苦労もあるかと思います。
ニールセン氏:YES(笑)。ピクサーの作品は、平均して4年もの苦難の期間を経て制作され、完成に至るわけですけど、つくっている自分たち、そして観客の方々にも共鳴する作品をつくろうとすれば、それだけの時間が必要になります。
そのために何度も何度もつくり直すんですけど、最初の段階の話は……。
マン監督:ひどいものだよね(笑)?
ニールセン氏:そうだね(笑)。そこから、練っては壊して、また練って…というのを繰り返して、最終的に自分たちも観客のみなさんも共感できるものをつくり上げていくんですけど、そのためには時間もかかるし、才能あふれる多くのピクサーのスタッフ陣と協力体制をもって進めていくわけです。
努力して、もがいて、誰しもが人間としての根っこの部分で響くものをつくる――と同時に楽しく、娯楽的で、でも意味がある作品にしていくのです。

――日本のアニメーション作品に対して、どのような印象をお持ちですか? お気に入り日本の作品などがあれば教えてください。
マン監督:日本のアニメは大好きですし、17歳の息子は、いつも私の知らなかったアニメをいろいろと教えてくれるんです。「呪術廻戦」や「ヴィンランド・サガ」は息子から教えてもらったんだけど、大好きです。もちろん、宮崎駿監督によるジブリ作品も毎回素晴らしいですね。
ニールセン氏:ジブリとピクサーは長年にわたって良い関係を保ってきましたし、宮崎さんがピクサーのスタジオを訪れて、作品を上映し、Q&Aセッションをしたこともありました。
マン監督:この『インサイド・ヘッド2』のプロモーションツアーの最終到着地が日本だということは最高だし、この後、バカンスに入るんだけど、今回は家族も一緒に来ていて、仕事が終わったらアニメショップを巡っていろいろ収集するつもりです!
アメリカではアニメと言うと、どうしても“子ども向け”の作品だと受け取られがちなんですけど、日本では子どもが楽しめるだけでなく、大人にも真面目に受け取ってもらえて、非常に複雑なことを扱っていると思います。それはまた、ピクサーがやろうとしていることでもあります。私たちは、子どもだけでなくあらゆる人たちに作品を楽しんでもらいたいと思っています。