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【インタビュー】工藤梨穂監督、“映画づくり”原点の地からの新たな挑戦『オーガスト・マイ・ヘヴン』

映画について学び続けた地・京都に舞い戻り、新作『オーガスト・マイ・ヘヴン』を創り上げた工藤監督。Roadsteadとの協働や自身のクリエイティブについて、語っていただいた。

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『オーガスト・マイ・ヘヴン』工藤梨穂監督©️ Naoko Kumagai
『オーガスト・マイ・ヘヴン』工藤梨穂監督©️ Naoko Kumagai 全 11 枚
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影響を受けた人と作品、今度の展望――


――工藤監督の感性に影響を与えた作品や作り手、近年琴線に触れた作品や作り手には、どういったもの/人がいるのでしょう。

近年ですと、川上未映子さんの「夏物語」をはじめとして「ヘヴン」や「黄色い家」には、かなりくらいました。それらの物語は苦しくもあるのですが、最後には生きることに背中を押してくれるような力強さがありますよね。また、どの登場人物も「ひとり」であることが印象的で、読み手に対して小説にしかできない寄り添い方をしてくれるような気がします。それが魅力的です。

映画作品では、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの『不安は魂を食いつくす』や『自由の暴力』などを劇場で観ることができて、彼の描く人間の非情さや愛に心を射抜かれました。

また、昨年は素晴らしい邦画作品との出会いが多かったように感じていて、特に森井勇佑監督の『ルート29』がとても好きでした。画面の切り取り方やショットの繋ぎ方に鳥肌が立つほど感銘を受けたのですが、何よりも寓話的要素も含めながらこんなにも心の奥深くに迫る作品が邦画として作られたということが嬉しくてたまらなかったです。

その他にも、空音央監督の『HAPPYEND』や山中瑶子監督の『ナミビアの砂漠』、川添彩監督の『とおぼえ』には本当に圧倒されました。素晴らしかったです。

――『オーガスト・マイ・ヘヴン』は第74回ベルリン国際映画祭でも上映されました。工藤監督の今後の映画制作における展望や野望、目標、或いは現状の課題に感じている点等々、将来に向けた想いを伺えますでしょうか。

これまでは作品に現代を意識するよりももっと根源的なことをテーマにしたいという思いがありましたが、世界的な映画祭に参加したこともきっかけの一つとして最近は考えが変化してきていて、今のこの世界を生きている人たちの励みになるような作品を目指すことができたらと思うことが多くなってきました。

それは、リアルタイムで起きている戦争や虐殺について自分自身が自分ごととして向き合う機会が増えたことが背景として大きかったと思います。

それと同時に性暴力や貧困、LGBTQや特定の人種に対するヘイトの動きなど日本に限らず世界中どこでも毎日のように起きている。私自身、精一杯の生活の中で挫けそうになることもありますが、いろんな状況の中でそれぞれ何かに耐えて暮らす人のことを考えながら、それでも生きていくことを信じられるようなものをいつか撮ることができたらいいなと今は思います。

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《SYO》

物書き SYO

1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、小説・漫画・音楽・ゲームなどエンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。並行して個人の創作活動も行う。

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