株式会社帝国データバンクが、全国の映画館市場について調査・分析を行い、“「映画館業界」動向調査(2024年度)”を発表。2024年度の国内映画館市場は2775億円で、前年度比3.3%減少、4年ぶりに縮小という結果となった。
コロナ禍で大幅に落ち込んだ2020年度(1785億円)以来、4年ぶりの市場規模縮。これは、興行収入100億円を超えるメガヒット作が少なかったこと、洋画の本数減少、動画配信サービスの浸透を背景に、入場者数を大きく牽引する材料が乏しかったことが要因と考えられる。
売上高が前年度並みとなった企業数の割合が4割超を占める一方、増収は2023年度から低下。増収の割合が4割を下回ったのは、2020年度(7.1%)以来、4年ぶり。
『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』『ゴジラ-1.0』『キングダム 大将軍の帰還』など人気シリーズが配給されたものの、2020年公開の興行収入400億円を超えた『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に匹敵するメガヒット作が少なかったほか、米ハリウッド映画で広がった脚本家や俳優によるストライキの影響で配給本数が少なかった。
そして、昨今急速に普及した定額制動画配信サービスにより、「映画館に足を運ぶ」体験が日常的な娯楽ではなくなったことも逆風に。

また、赤字が4年ぶりに拡大。人員確保に苦戦しており、給与の引き上げを行ったケースが多かったほか、電気代、フードサービスでも仕入れ価格の上昇で運営コストが大幅に増加。多くの映画館で鑑賞料金や飲食メニュー料金の値上げ、映画上映以外の事業で補う動きも進んだものの、入場者減少による影響が大きい。
低迷が続く洋画の復調には、相応の時間がかかると予想。しかし、邦画ではアニメ・実写ともに好調な滑り出しを見せており、2025年度はそれが追い風となりそう。
特に、1か月で興行収入257億円を突破した『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』、興行収入100億円を突破した『国宝』など、メガヒット作が相次いでおり、映画ファン以外に大画面による迫力や音響などリアル体験を求める客層が再び映画館に入場する傾向もみられる。
一方、洋画大作やヒット作への依存、動画配信サービスの台頭により、映画館へ足を運ぶ機会が減少傾向だということに大きな変化はない。以上の背景から、各社の業績予想(2025年7月時点)を基にした2025年度の映画館市場は、2024年度から微増となる2800億円前後を予想している。



