Netflixシリーズ「おつかれさま」のナ・ムニと、「イカゲーム」のキム・ヨンオクが共演、韓国で全世代の心をつかみミニシアターで大ヒットとなった『最後のピクニック』。この度、韓国の高齢女性のリアルを描いた本作から本編映像が解禁となった。
60年ぶりに故郷である美しい海沿いの町・南海に帰った主人公のウンシム(ナ・ムニ)は、親友グムスン(キム・ヨンオク)の家に身を寄せていた。ある日、ウンシムは彼女にかつて恋をしていた同級生のテホ(パク・クニョン)と偶然再会する。
南海の場所に根を張り生き続け、住民たちのムードメーカーでもあるテホは、ウンシムを何かと気にかけ、グムスンも交えて様々な交流を続けていた。

そんなある日、テホが急死。葬儀で悲しみにくれる仲間たちは、彼の死の原因をめぐりウンシムも交えて大喧嘩になってしまう。
今回解禁となった本編シーンは、テホの娘が父親の死因を明かす様子を捉えたもの。彼女は自分を責め、初めて死因を知った参列者たちには動揺が走る。そんな中、「テホは、最後の瞬間まで1人で苦しんで逝った。どれほど寂しかったか」と口を開いたのはウンシムだった。
彼女は、テホから「誰か1人には知っててほしい」と、唯一、病のことを打ち明けられていたのだ。葬儀が終わり、1人になったウンシムは、テホとの様々な思い出がよぎり声を上げて泣く。

それは悲しみだろうか、悔しさだろうか。人一倍波乱万丈な人生を送ってきたウンシムだったが、テホの死は彼女に大きな影響を与えることになる――。
本作は企画者であり、すでに出演が決まっていたナ・ムニがキム・ヨンギュン監督に監督の打診をしたという異色な成り立ちを持つ。
監督は、高齢者女性の生き様をまっすぐ描いた本作のテーマについて「数年前、自分の母親を亡くしたばかりで、自分にとってもいずれやってくるであろう未来だと思えたんです」と語る。その上で「このような感覚を作品に込めるのはつらいかもしれないけど、私にとって素晴らしい作品になるだろうと直感で思い、監督させてほしいとお願いしました」とふり返る。

このシーンでも熱演が光るナ・ムニは「この映画は、今の韓国を現実的に描いています」とコメントする。
韓国では近年、ナ・ムニがIUの祖母役を演じた今年配信のNetfliシリーズ「おつかれさま」や、ナ・ムニとグムスン役キム・ヨンオクが共演したドラマ「ディア・マイ・フレンズ」をはじめ、高齢者がメインキャラクターとなる作品も多く作られている。

映画研究者である崔盛旭氏は、本作のトークイベントで「いま80歳を超える方は、韓国にとって現代史そのものといえる存在なんです。植民地時代、朝鮮戦争、軍事独裁時代、そして民主化の全てを経験してきた方たちだから」と世代背景を明かす。
その上で、この世代の特徴のひとつとして「ウンシムとグムスンの姿とも共通していますが、特に女性や母親は子どもたちのために自分を犠牲にし我慢することが美徳とされ、それが強いられてきた世代で、<我慢と犠牲の世代>とも言われています」と紹介する。
「こうした考え方の良し悪しは別にして、そういった方々が亡くなっていく中で、韓国の作り手はこの世代の方々のありのままの姿を物語として記録し、残したいと感じているのではないでしょうか。だから、こういった作品はこれからも出てくると思います」と分析している。
『最後のピクニック』は9月12日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。

