『ケイコ 目を澄ませて』『夜明けのすべて』三宅唱監督最新作『旅と日々』から、主演のシム・ウンギョン、河合優実、堤真一、高田万作、三宅唱監督らの様子を捉えたメイキング映像と、キャスト4名による撮影現場でのコメント映像が解禁。さらに、三宅監督、シム・ウンギョン、河合が公開を目前に、互いへの印象や、本作にのせた思いについて述べた3ショットインタビューも到着した。
つげ義春の漫画「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を原作にした本作は、スペイン語圏最大の国際映画祭である第73回サン・セバスチャン国際映画祭にて、多様で驚くべき映画・新しいアングルやフォーマットに挑戦する映画を上映するサバルテギ・タバカレラ部門へ正式出品され、第30回釜山国際映画祭のコンペティション部門にも正式出品。
そのほか20以上の海外映画祭での上映や、アメリカ、カナダ、メキシコ、フランス、韓国、中国、台湾、香港、インドネシア、ポルトガル、ギリシャで配給が決まっており、世界各国からの熱い視線が注がれている。

また、先日行われたジャパンプレミア上映後にも「傑作」「度肝を抜かれる」「何度でも観たい!」とSNSでは熱いコメントが相次いでいる。
この度、解禁となったメイキング映像は、夏、神津島の風を受けながら、和気あいあいと現場の感想を述べる三宅監督、河合、高田の姿が。

一方、雪深い景色のなか防寒着に身を包み撮影に臨む三宅監督、シム・ウンギョン、堤。雪がちらつく極寒での撮影でも、辛さを感じさせない集中力をみせるシムと堤。

ラストには、座長シム・ウンギョンのクランクアップ時のコメントも。「みなさんのおかげで無事に撮影を終えることが出来ました」としみじみと語った後に、「イエーイ!」とみんなを盛り上げるも、直後に恥ずかしそうにぺこりと頭を下げる姿が印象的。
さらに、キャストひとりひとりの撮影現場でのコメントも到着。シム・ウンギョンは「『旅と日々』は絆についての映画だと思う」と語り、河合は「三宅さんがなにか新しいことをやろうとしてる感じを受けた作品」と脚本から、現場から感じ取った感想を述べる。
堤は今回、東北弁初挑戦に際し、なんと「初めて台詞をすべて覚えていきました」とこれまでとは違った現場への取り組み方を明かす。今回、オーディションで抜擢された高田は「皆さんのおかげで すごく馴染めているような気がします」と素直な思いを語った。
三宅唱監督、シム・ウンギョン、河合優実が語る『旅と日々』
オフィシャルインタビュー到着

――三宅監督との出会いは?
三宅唱監督(以下、三宅):シム・ウンギョンさんとは『ケイコ 目を澄ませて』が釜山国際映画祭で上映されたときに初めてお会いしました。上映後に「いつかご一緒したいです」と声をかけてくださって。あのときの印象がとても特別で、いつか必ず、と思っていたんです。『旅と日々』の脚本を書いている途中で、ふと彼女がこの役を演じたら面白いに違いないと感じました。
河合さんは以前、別の作品のオーディションでお会いして、すごく印象に残っていました。残念ながらそのときはご一緒できなかったのですが、ずっと気になっていた俳優でした。「海辺の叙景」を題材にすることを決めた段階で、脚本がまだ固まる前から声をかけました。
シム・ウンギョン(以下、シム):監督の作品は以前から大好きで、いち観客として尊敬していました。『ケイコ~』にとても感動して「この作品を韓国でも紹介したい」と思い、釜山でお話しさせていただいたんです。『旅と日々』の脚本を読んだ時、まるで自分の話のように感じました。自伝を書くなら、この映画のようになるんじゃないかと。
河合優実(以下、河合):私も『きみの鳥はうたえる』を観たときから、監督の映画の空気がすごく好きなんです。いつかご一緒したいとずっと思っていました。今回、お話をいただいたときは、本当にうれしかったです。脚本を読んだときは、登場人物たちの空っぽな時間の中にある感受性に惹かれました。現場で実際にその時間をで感じながら演じることができました。

――登場人物のキャラクターをどのように捉えた?
三宅:生きていると、驚きや変化の中でこそ実感を得られると思うんです。旅や映画も同じで、予想外のことが起きて初めて「生きている」と感じる。ウンギョンさんはその“生の驚き”を、悲しみとおかしみの両方で体現してくれました。
シム:私が演じた李という人物は、大学の授業で「自分には才能がない」と言ってしまう人です。そのセリフがすごく刺さって。私自身も俳優として、足りなさや迷いを常に抱えています。だからこそ、李の勇気ーー悩みながらも旅に出る決断ーーに強く共感しました。
河合:監督からは「映画内映画であることは考えなくていい」と言われていました。なので、渚を演じるにあたって、とにかく「そこにいる」ことを大事に、何もしないという挑戦をしていました。それによって、“場所”と“体”が一体になった瞬間にしか生まれない表現があると思いました。
――“言葉”がテーマのひとつですが、言葉による表現をどう思うか?

シム:普段から、私は韓国語と日本語の両方で演じているので、言葉については常に考えています。セリフが自然に自分の中に馴染むまで、何度も何度も棒読みを繰り返します。そこからようやく感情を乗せられる。今回は日本語での演技を通して、「言葉を自分のものにする」大切さに改めて気づきました。
河合:私はもともとダンスをやっていたので、身体表現からお芝居に興味を持ちました。だから、言葉よりも身体のほうが雄弁だと感じることがあります。言葉にできないことを言葉にしないまま表すことができるーーそれがお芝居のおもしろさだと思います。
三宅:旅も映画も、先入観が覆されることで豊かになる。言葉も同じで、正確に言い当てようとすればするほど、すり抜けていく。映画ではまず、言葉にならない部分をどう撮るかが、自分の興味でもあります。

――どのような撮影現場だった?
シム:監督は本当に映画が好きな方です。無声映画の話などもよくしました。現場ではあまり細かい指示はなく、俳優一人ひとりの個性を観察して生かしてくれる。段取りの中から自然に生まれたひと言が採用されることもありました。
河合:夏の撮影は少人数のチームで島に行って、みんなでご飯を作って、海に出て……まるで合宿のようでした。監督は部活のキャプテンみたいに頼もしくて、繊細さも思慮深さもある方。現場はとても穏やかで、リラックスしていられました。
――みなさんにとって旅とは?
三宅:僕がどこかに行く、としたら出張ばかりなんですが……東京の知らない道をただ歩くのが好きです。何も考えずに歩くことが、自分にとっての旅かもしれません。新しい風景に出会うことで、少しずつ自分の中の水が入れ替わるような気がします。
シム:私は映画館で旅をしています。スクリーンの中で、さまざまな国や人の生き方を体験できる。映画を観ること自体が旅だと思っています。
河合:私は休暇で行く旅も好きですが、印象に残っているのは仕事で行った旅ですね。スペインのバスク地方で短編映画を撮ったとき、言葉が通じなくても人と協力して作品を作った体験は、いまでも心に残っています。

――完成した映画を観て、お互いの演技をどう思わったか?
シム:河合さんの演技には本当に魅了されました。セリフが少なくても、仕草や佇まいからその人の人生が見える。あの繊細さは素晴らしいです。
河合:私もシムさんの冬編をいち観客として、とても感動しました。最初のひとりの執筆のシーンからもう目を奪われました。ふわっとしているのに、地に足がついている。観ていて幸せになるキャラクターでした。
――『旅と日々』をどのように観てもらいたい?
三宅:風景や光、俳優の身体が雄弁に語ってくれています。そういう瞬間を、ぜひ観客の方にも感じ取ってもらえたらうれしいです。映画をみた後、言葉や意味を考えることもあると思うんですが、まずは「あっ」という驚きの余韻を、映画館の外を歩きながら楽しんでもらえたらと思います。
シム:この作品は「旅とは何か」「映画とは何か」をもう一度考えさせてくれる映画だと思います。観てくださった方の心の中で、静かに何かが動き出すのではないでしょうか。観たあと、少し散歩したくなるような――そんな作品です。
河合:撮影中は、本当に風や光に導かれるように過ごしました。観客のみなさんにも、映画を観ながら体の力を抜いて、それぞれの「旅」を続けてほしいと思います。
『旅と日々』は全国にて公開中。


