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会社員から転身、自身の経験をリアルに映画化…天野千尋監督が描く“夫婦”のかたち『佐藤さんと佐藤さん』

岸井ゆきの、宮沢氷魚W主演の『佐藤さんと佐藤さん』が11月28日(金)より公開。東京国際映画祭2作連続出品でいま注目を集める、本作の監督・天野千尋とはどんな人物なのか? その素顔に迫った。

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『佐藤さんと佐藤さん』(C)2025『佐藤さんと佐藤さん』製作委員会
『佐藤さんと佐藤さん』(C)2025『佐藤さんと佐藤さん』製作委員会 全 11 枚
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岸井ゆきの、宮沢氷魚W主演の『佐藤さんと佐藤さん』が11月28日(金)より公開。東京国際映画祭2作連続出品でいま注目を集める、本作の監督・天野千尋とはどんな人物なのか? その素顔に迫った。

いま日本映画界で大注目の監督の一人、天野千尋監督。一般企業の会社員から監督に転身、2009年より映画制作を開始すると現代社会の問題を痛烈に描く作品が高く評価され、映画『ミセス・ノイズィ』(20)で第32回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門に正式出品された。人と人との争いがどのように生まれ、拡大していくのかという“構造”そのものを描き、NYジャパンカッツ観客賞、日本映画批評家大賞脚本賞など国内外問わず世界的に評価された。そして脚本を手掛けたNetflixドラマ「ヒヤマケンタロウの妊娠」では、男性側が妊娠するといういままでにない設定を基に、男らしさ、女らしさ、父親らしさ、母親らしさ…「らしさ」を突破した物語を生み出し、話題を呼んだ。

そんな天野監督の最新作『佐藤さんと佐藤さん』は、“夫婦”という誰にとっても人生において一度は考えるテーマを軸に、人と人との関係を丁寧に、そしてヒリヒリするくらいリアルに描いたオリジナルストーリー。苗字が“佐藤”同士のサチとタモツが、交際、結婚、出産を経て歩んだ15年間を丁寧に描き出す。苗字は変わらなくても、夫婦という関係は常に揺れ動き、ぶつかり合い、変化し続ける――そんな“リアルな夫婦”のかたちに迫る、誰もが共感してしまう物語。

芯が強く明るい佐藤サチ役を務めるのは、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞するなど高い演技力で多くの支持を集める岸井ゆきの。そして真面目でインドアな佐藤タモツ役を、国内外の数々の賞に輝き、ドラマ・映画・舞台など幅広く活躍する宮沢氷魚が演じる。

まず天野監督は、W主演の岸井ゆきの・宮沢氷魚について、「岸井さんは芯が強くてバイタリティがある印象が、サチの生き方にぴったりだなと思ってオファーしました。チャーミングで愛嬌があるところもサチには欠かせない要素でした。宮沢さんはそれまでカッコよくてクールな印象があったので、タモツのように惨めで痛々しい役を演じてもらったら面白いかも、と思ったんです。新しい宮沢さんを見せてもらえるんじゃないかなと」と語る。

また本作の着想については、「自分自身が結婚、出産に直面したときに、それまで知らなかった社会の仕組みの不具合に気づき、悩んだり、苦しんだりした経験が出発点になっています。フリーランスなので仕事を中断すると保育園が決まらず、夫が外で働いて自分は家事、育児の毎日の中で、アイデンティティを失った感覚になってしまって、そのときはもう社会から取り残されたような孤独感に陥ってしまいストレスから夫に当たってしまうことも多々ありました」と語り、自身の日常からヒントを得て、まさに誰もが共感してしまうようなリアルに映し出す作品に仕上がっている。また司法試験が題材になっていることについては、「私自身が法学部出身であることや、弁護士を目指す友人や親族が周りにいて、試験の大変さについて身近に感じていたことが理由のひとつです」と明かす。

映像面では、2人の関係性の移ろいを映像のルックやカメラワークの変化で表現したそうで、「撮影の趙聖來さんと、ふたりの関係性や心境の変化をカメラでどう見せていくのかを話し合い、子供が生まれるまでは16mmフィルム、生まれてからはデジタルで撮影しています。前半は仲が良かったふたりのシーンに合わせるように標準レンズで手持ちが多く、後半のシリアスなシーンになってくると望遠レンズで狭く撮っていきました。視野が狭くなっている感じや、窮屈さやヒリヒリ感が出せたのではないかと思います」とかなりのこだわりも詰まっている。

さらに印象的なタイトルに込めた思いについて、「私自身は、結婚で苗字が変わる経験をしていないのですが、もしも違う苗字になっていたとしたら、あの時以上に自分を見失っていたような気がします」と言い、「日本では欧米に比べて苗字で呼ばれることが多いので、私も自然と天野がアイデンティティになっています。苗字は個人のアイデンティティであるはずなのに、結婚は家制度や戸籍と紐づいているものだから、そこに矛盾が生じてしまう。結婚は今の社会では個人だけの問題ではなく、家と家の問題という面が大きいんですよね。選択的夫婦別姓の議論もあり、結婚をテーマにするときに苗字の問題は外せないと考えていました」と回顧。

また前作『ミセス・ノイズィ』とも共通しているのは、立場の違う者同士のドラマが描かれている点が挙げられるが、「私の根底には、自分と他人は違うということをちゃんと理解して、だからこそ相手とどう折り合いをつけていくのかを考え続けないといけないんじゃないかという思いがあって。それは人と人だけではなく、国同士でも同じことだと思います。身構えずにサチとタモツの物語を楽しんでもらって、こっちから見たらそうだけど、あっちから見たら違うようね…? っていうズレを体感してもらえる作品になっていたらいいなと思っています」と話す。

そんなこだわりの詰まった天野監督の最新作『佐藤さんと佐藤さん』は東京国際映画祭で上映され、観客からは「何度か涙腺が崩壊しそうになった」「ラストシーンで号泣」など、心に深く届いたことがうかがえる感想が多数寄せられている。ぜひ劇場で映画を体験し、それぞれの視点や思いを語り合ってみてほしい。

また、『佐藤さんと佐藤さん』の公開を記念して11月20日(木)にはTOHOシネマズ ピックアップ・シネマVol.11「天野千尋監督」の開催も決定。2020年に公開された天野監督の『ミセス・ノイズィ』を上映するほか、トークイベントも予定されているので要チェックだ。

『佐藤さんと佐藤さん』は11月28日(金)より全国にて公開。


《シネマカフェ編集部》

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