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「女性の力の台頭は、台湾では自然に起こった現象」女性の活躍を反映した企画が多数、文化コンテンツ産業の大型展覧会の様子をレポート

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「女性の力の台頭は、台湾では自然に起こった現象」女性の活躍を反映した企画が多数、文化コンテンツ産業の大型展覧会の様子をレポート
「女性の力の台頭は、台湾では自然に起こった現象」女性の活躍を反映した企画が多数、文化コンテンツ産業の大型展覧会の様子をレポート 全 9 枚 拡大写真

台湾が2020年から開催している文化コンテンツ産業の大型展覧会「TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ(Taiwan Creative Content Fest)」が11月4日から11月7日、台北・南港展覧館で開催され、出展規模が過去最高を記録するなど賑わいをみせた。

TCCFは、文化コンテンツ産業の支援を行う台湾の行政機関、台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー (TAICCA/タイカ)が主催。世界の業界関係者を招き、「ピッチング」「マーケット」「フォーラム」の3つを柱に、台湾の文化コンテンツ業界や独自のIP(知的財産)がグローバルに展開するうえで欠かせないパートナーとのマッチングの機会を提供する。

女性の活躍やラブストーリーの企画プレゼン…台湾文化コンテンツの強みとは?

5月にTAICCAの新董事長に就任した王時思(ワン・シースー)氏は、「TAICCAがコアとするミッションは、台湾オリジナルのコンテンツのグローバル展開、より商業的なビジネスモデルと産業エコロジーの構築、それから台湾オリジナルIPの奨励です。これらは継続して行っているものですが、以前より強化した点を挙げるとすれば、投資先の判断をより精緻に、正確に行うようにしたことでしょう。大規模プロジェクトと小規模プロジェクトを分け、異なるニーズに応じた支援策を用意しています」と語る。

今回のTCCFで特に目を引いたのは、女性の活躍を反映した企画が多数用意されたことだ。ピッチングでは、俳優・モデルの林志玲(リン・チーリン)氏が、女性目線の作品を中心に選ぶ個人賞を新設。フォーラムでは、柯佳嬿(アイス・クー)張鈞甯(チャン・チュンニン)林予晞(アリソン・リン)という台湾のトップ女優3人が登壇し、“演じる”という枠に留まらない俳優のキャリア展開について語り合った。

また、初めてピッチングにラブストーリーに特化したドラマ部門が設けられたことにも注目したい。王董事長によると、海外の映像業界関係者から「台湾といえばロマンティックなラブストーリー」と言われることが多く、ニーズを感じたためだという。

今回、ピッチングで最多となる5つの賞を受賞したのは、このラブストーリー部門の『分手擂台- 你還愛我嗎?』だった。婚姻をテーマにした人気バラエティ番組をモチーフにしたもので、番組プロデューサーと司会者の夫婦が出演し、台本のないバトルを繰り広げるという内容だ。かつて「流星花園」(2001)や「時をかける愛」(2019)など、アジアを席巻する大ヒットドラマを生んだ台湾。今も台湾発のラブストーリーに対する海外からの関心が高いことがうかがえる。

台湾の文化コンテンツの強みは何か? 投資すべきところはどこなのか? より精度の高い投資と支援を行っていこうとするTAICCAの方針が現れた企画と言えるだろう。

台湾のトップ女優たちがキャリア展開について語り合うフォーラムも開催

今年、世界の映画祭で注目されている台湾映画がある。『左利きの少女(原題)』(2026年日本公開予定)と『女孩(原題)』(第26回東京フィルメックスで『女の子』の邦題で上映)だ。

前者は、『ANORA アノーラ』(2024)で米アカデミー賞主要4部門を受賞したショーン・ベイカーの作品に長年プロデューサーとして関わってきた鄒時擎(ツォウ・シーチン)監督の単独監督デビュー作。台北の夜市で屋台を営むシングルマザーと娘2人の暮らしを描いた作品で、今年カンヌ国際映画祭の批評家週間でワールドプレミア上映され、第98回米アカデミー賞国際長編映画賞への台湾代表作品にも選ばれている。

後者は、世界三大映画祭の審査員を務めるなど、国際的に知られる俳優、舒淇(スー・チー)の監督デビュー作だ。問題のある家庭環境で育ち、抑圧された日々を過ごす少女が、自由な世界に一歩踏み出そうとする姿を描く。ベネチア映画祭でのワールドプレミアを皮切りに、釜山国際映画祭では最優秀監督賞を受賞するなど、高い評価を受けている。どちらも監督自身の幼少期の記憶に着想を得た作品で、逆境にいる女性たちの背中をそっと押してくれるような作品だ。

こうした女性作品の盛り上がりは、今回のTCCFのプロフラムの傾向と関係があるのだろうか? 王董事長は「女性の力の台頭は、台湾では自然に起こった現象だと思います」と言う。

王時思(ワン・シースー)氏

「台湾では女性問題だけでなく、ジェンダーの問題も非常に一般的です。多くの作品の中で、自然にジェンダー平等が描かれています。多様な性を受け入れるということ、男性だから、女性だからという枠で定義しない考え方が、台湾ではますます普通になっています」

さらに、「興味深いのは、これらはわずかここ数年で起きたことなのです」と指摘する。

「台湾でも同性婚が合法化される前は、非常に大きな反対の声がありました。でも見てください。合法化されるや、社会全体が驚くほど速く、さまざまな性のあり方を理解し、受け入れたのです。ジェンダーフリーのトイレもあちこちにできました。人間がこうした違いを受け入れる能力を過小評価してはいけないということです。むしろ違いを通じて、お互いのユニークさを見出せる可能性の方が大きい。そして、そういう物語こそ、私たちの文化コンテンツの素材になるのです。

女性の力を感じる企画が増えたのは、グローバルなトレンドに合致したということでしょう。

例えばピッチングに今回、リン・チーリンさんが参加されることになったのも、そんな流れの1つです」

俳優、モデルとして活躍するリン・チーリン

俳優リン・チーリンが個人賞を新設、日台を行き来する仕事と子育てのベストなバランスとは?

日本では映画『レッドクリフ』シリーズなどで知られ、俳優、モデル、社会活動など、マルチに活躍するリン・チーリンさん。王董事長が“みんなのチーリンお姉さん”と表現するほど、台湾では誰もが知る存在だ。シネマカフェは、今年新設した「未来力量(未来の力)賞」の選考を終えたばかりのリンさんに、単独インタビューを実施した。

――TCCFのピッチングに個人賞を設けた経緯を教えてください。また、今年4月にTAICCAと協力して国際市場に通用する映像コンテンツの開発・製作を支援していくと発表されましたね。このような活動を始めることにした動機は?

リン・チーリンさん(以下、リン)TCCFに設けた個人賞の名称は「未来力量(未来の力)賞」といいます。未来とは? 力とは? 優れた理念と価値観も含め、未来に生きる世代にどんな新しい世界を渡していくべきなのか? マルチメディア社会の現在、メディアは非常に重要な社会的責任を負っています。子供たちはYouTubeやTikTokなどからいろいろと吸収しているかもしれませんが、映画はもっと共感を呼ぶメディアだと思うのです。観客は映画の世界に入り込み、何かを感じ、気づきを得ることで、人生が変わることさえあります。ピッチングを通して、多くのクリエイターを見つけ、彼らの映像作品で次の世代を励ましたい。まず、そういう考えがありました。

もちろん、TAICCAという国際的なプラットフォームを通じて、台湾の豊かな創造力を世界に見てもらいたいという思いもあります。ここ数日、ピッチングを見てきて、私たちのストーリーを世界に届けられる最高のマッチングの場だと思いました。

――受賞作品の選定基準は?

リン社会的に価値があり、女性問題を扱った作品に贈りたいという希望があったので、もちろん選考の時もこれらを重視しました。女性のリアルな声を通じて表現された立体的で多様な力強いテーマにたくさん出会えました。作品を観る女性たちに力を与え、日常における疑問や迷いに気づかせてくれる、そして新しい自分に出会わせてくれるような作品を選びました。

――2019年にEXILEのAKIRAさんとご結婚されたあと、生活の拠点を日本に移し、しばらくお仕事をセーブされていましたね。その間、ご自身の仕事やキャリアについての考え方に変化はありましたか?

リン結婚後、5年間は完全に重心を家庭に置いていました。私にとって、本当に貴重な時間だったと思います。でも、もうすぐ子供が小学校に上がるとなった時、「子供の成長ってものすごく早い。私も彼と一緒に成長すべきかも」と思い、暮らしの中に別の重心を見つけようと決めたのです。母親が日々成長していく姿を子供に見せるのも、いいことだと思いました。社会と密接に関わり、自分も成長し続けることで、子供をより良い方向へ導けると考えています。

私自身、皆さんがよくおっしゃるように、仕事と家庭のバランスを取ることを難しいとは感じていません。何をするにも集中しなければいけないと考えているので、もし3日間仕事をすると決めたら仕事に集中しますし、子供と一緒にいると決めたら、周りに「しばらく連絡してこないで。するとしても夜12時以降にして」と言います(笑)。集中していると気持ちが安定します。母親が楽しそうで安定していると、子供も落ち着く。子供に安心感を与えること、母親が出かけても必ず帰ってくると分かってもらっておくことが大切だと思うのです。

今の私は、いわゆる表舞台のスポットライトや拍手に全く未練がありません。ありふれた日常の中で、家庭の温もりと幸せを感じていると、とてもバランスがとれていると思えます。

――リンさんは台湾と日本、両方における女性を取り巻く仕事や子育て環境をよくご存じだと思います。日本では、まだまだ女性がワンオペ育児を強いられる状況が多く、映像業界でも結婚・出産をきっかけに仕事を離れざるを得ない女性が多い状況です。この点について、日本が台湾を参考にできる点があるとすれば、どんなところだと思いますか?

リンこれは難しい質問ですね。日本の育児に関する法律や政府の支援などについてはあまり詳しくないのですが、お子さんがとても小さい時期から託児所などに預けて、お仕事されているといった状況は知っています。台湾ではどうかというと、社会全体で女性を支援しようというムードがあります。それぞれの人生のステップに合わせた施策でサポートしてくれるところがポイントで、映像業界や大きな企業では託児所やシッターさんのサポートがあるので、女性にとってありがたい環境だと思います。

日本についてはそれほど詳しくないですが、私の友人の中には、確かにひとりで子供を見てる人が多く、大変そうだなと感じます。

社会全体でシェアして、子育てしていこうというムードができるといいですよね。職場も、もう少し女性に時間と空間を与えて、柔軟な働き方を認めてあげるだけで、彼女たちが仕事を諦めずに済みます。政府や企業の支援があれば、状況は変わるかもしれません。柔軟性を持つことが大事だと思います。それは他人を理解する姿勢でもありますよね。

――リンさんが考える台湾コンテンツの魅力を教えてください。

リンとても人情味豊かで、リアルで、温度を感じるという意見には、きっと皆さん同意してくださると思います。加えて、台湾映画を見ていると、何者でもない市井の人々の物語が輝いて見えます。これは台湾映画の大きな強みです。

――日本で暮らしてみて、あらためて気づいた台湾の文化のよさはありますか?

リン同じ答えになりますが、台湾の一番の宝物は人情だと思います。先ほどの柔軟性の話にもつながりますが、人と人との温かい交流は一番の贈り物。それがあれば、他のいろいろな問題もおのずと解決できると思います。

――今後のお仕事の予定や展望を教えてください。

リン子供の成長に合わせて進む道を考えているので、さっきお話ししたように、自分自身を成長させていきたいです。もちろん、社会貢献につながる仕事にも力を入れていきます。発達障がいがある子供への早期発達支援、そしてメンタルヘルス教育は、社会全体の健康につながる取り組みとして一番重視している部分です。このメンタルヘルスに関するプログラムはすでに学校に取り入れられています。小学校高学年や中学生も対象になっているプログラムです。大きなプレッシャーのもと、親と上手にコミュニケーションが取れず、命を絶つことを選んでしまう子供たちがいますが、困難とどう向き合い、どう解決するかを早い段階で教えることができるはずなのです。心の健康があってこそ体の健康があり、未来に向き合える。学業よりも重要なことだと考えています。

台湾では50以上の学校が、私たちの財団(志玲姉姉慈善基金会)を通じて、私たちが用意した授業や専門家によるカウンセリングを導入しています。これは今後も続けていきたい活動です。

目を引いた日本関連作品、ピッチング最高賞は久保田徹監督のドキュメンタリーに

最終日には、ピッチングに設けられた各賞の受賞結果が発表された。

リン・チーリンさんによる「未来の力賞」には、長編映画部門の『逆流之舞』、アニメ部門の「Titi & Roro」、ドキュメンタリー部門のインド=フランス合作映画『How Sweet Does the Honey Taste?』が選ばれた。

また、最高賞に相当する「TAICCA X CNC AWARD」には、ポルトガル=日本合作、日本の久保田徹監督によるドキュメンタリー映画『My Camera, My Gun』が輝いた。

ドキュメンタリー映画『My Camera, My Gun』が最高賞を受賞

今年は他にも、日本との合作や関連のあるプロジェクトが数多く選出された。2024年全米図書賞(National Book Awards 2024)翻訳部門を受賞した「台湾漫遊鉄道のふたり」のドラマ化の企画は、吉田恵里香さんが脚本を担当するということもあり、日本でもいずれ話題になるだろう。また、日本の小説「魯肉飯のさえずり」(著者・温又柔)を原作に、映画『本日公休』の傅天余(フー・ティンユー)監督がメガホンをとる映画『聽媽媽的話』も「台湾高鉄美好旅程賞」と「台北国際影視大賞」を受賞するなど、高い関心を集めた。

今年のピッチングには44か国から700件を超える企画の応募があったという。マーケットには118社・機関が112のブースを出展。中でも、韓国は今年初めて、フランスは昨年に引き続き、それぞれ国家ブースを設置するなど、台湾の文化コンテンツへの関心の高さをうかがわせた。


「TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ(Taiwan Creative Content Fest)」

《新田理恵》

新田理恵

大学卒業後、北京で経済情報誌の編集部に勤務。帰国後、日中友好関係の団体職員などを経てフリーのライターに。映画、女性のライフスタイルなどについて取材・執筆するほか、中国ドラマ本等への寄稿、字幕翻訳(中国語→日本語)のお仕事も。映画、ドラマは古今東西どんな作品でも見ます。

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