2025年も残りわずか。この1年で多くの作品が公開・配信されました。そのなかでも印象深かった作品、2025年映画No.1を映画ライター10名が発表します。
👑『シャッフル・フライデー』👑
鴇田崇
今年はよい映画がたくさんあった一年で、年末もディズニー映画『ズートピア2』の勢いが凄まじい最中ではありますが、個人的な想い入れの強さで選抜! 日本公開してくれただけで本当に感謝しかない。宣伝戦略としてディズニー・チャンネル的な売り方をしていたけれど、『フォーチュン・クッキー』の約20年ぶりの正真正銘の続編であり、4人の新旧メインキャストが集い、これだけの年月を経てこそ描ける、厚みのある涙と笑いと共感の感動のドラマで魅せてくれます。前作ファンにはたまらないエンドロールの小粋な演出まで手抜かりない、最高の続編でした!
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👑『HAPPYEND』👑
赤山恭子
そもそも2024年秋公開の作品なのですが…2025年にTIFFでも上映されていたり、自分の周りでも熱心に語られ続けた1作でしたので選出しました。不勉強ゆえに、ほぼ知らないキャストさん、初めての監督(空音央さん)、「とにかくいい!」という情報のみで観た本作。純粋に、静かに感動を覚えました。ぞっとするほど美しい俯瞰の冴えわたるカットと、うそがない人物たちの声。なりゆきの見つめ方や切り取り方のセンスにひれ伏すばかりで、作品との出会いに感謝。観ていない方にはドヤ顔でおすすめしたいです。(みんなみてますね)
👑『フォーチュンクッキー』👑
牧口じゅん
『国宝』は別格として、今年特に印象に残ったのが本作。孤独で不眠症のアフガニスタン移民ドニヤの人生が、ゆっくりと輝き始める様子をモノクロームの映像美に閉じ込めている。意地悪な人物や無神経な者も登場するが、彼らですら彼女の物語に彩りを添える存在で、人生への慈悲深い視点が感じられる。くすっと笑ってしまう場面も散りばめられ、ジム・ジャームッシュやアキ・カウリスマキの作風を思わせる味わいがある。遅ればせながら、終盤に登場するジェレミー・アレン・ホワイトの存在感にも思わず痺れた。終演後に心地よい余韻が残る、そんな一作。
👑『かたつむりのメモワール』👑
児玉美月
15年近く前に観た『メアリー & マックス』が、かわいらしいクレイアニメーションのルックとは裏腹に、あまりにも辛辣な現実が描かれていて深く心に残っていた。そんなアダム・エリオットの新作『かたつむりのメモワール』は、世界の周縁に置かれている少女とかなり年上の高齢女性との稀有な紐帯に光を与える異色作で、期待を大きく上回ってきた。主人公のグレースが紆余曲折を経たその先に、自身の夢を叶えてみせる美しい展開が忘れ難い。この時代だからこそ、エリオットの構築する手作業ならではのアナログ性が映画の始原性を思い起こさせる。
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👑『KPOPガールズ!デーモンハンターズ』👑
上原礼子
日本で“今年の1本”といえば『国宝』だろう。ここまでになるとは、誰も予想していなかった。『KPOPガールズ!デーモンハンターズ』は、世界的に見たときのそんな1本だ。日本では今ひとつ…と聞いたが、実際7月から25週もTOP10圏内を維持している。
とにかく曲が全ていい! その楽曲のカがシスターフッドとエンパワーメントの礎になった。「もう自分を隠さない。今こそ輝く」「もっともっと高く、声を上げて」と“歌ってみた”子どもたちの映像には胸が熱くなる。作り手が自分自身を重ねたK-POPや韓国カルチャーの描写が、「SHOGUN 将軍」のようにオーセンティックであったからこその成功だ。まやかし、ごまかしは利かない、いまの時代。然るべき物語はちゃんと届くのだ。
👑『シャドウズ・エッジ』👑
西森路代
今年、アジア・香港映画好きにとっては、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』に始まり、『シャドウズ・エッジ』に終わった一年と言ってもいいのではないでしょうか。実は、去年の企画でも『トワイライト…』を挙げていましたが、『シャドウズ・エッジ』は、また違う興奮を覚えました。もともと原作となった『天使の眼、野獣の街』と、韓国版リメイクの『監視者たち』も好きで、自分の本でも取り上げていたほど。それを考えても、『シャドウズ・エッジ』は、予想を上回る脚本の密度とアクションによるハラハラドキドキ感が持続していました。しぶときヴィランのレオン・カーフェイに、ジャッキー演じる追跡のエキスパートと、彼と深い因縁のある若い女性刑事・何秋果の関係性や、彼女の成長にも泣かされました…。2026年もアジア・香港映画を見るのが楽しみです。
👑『ワン・バトル・アフター・アナザー』👑
渡邉ひかる
父娘愛で泣かせると思いきや、泣かせはするけど気づけば特に何もしておらず、センセイ(大好き)ほか皆さんに終始お世話されるディカプリオが愛おしい。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』再来(?)の匍匐前進も、高所からズルズルと地味に落下するのも、携帯の充電すらなかなかできず涙目になっていくのもある意味アート。敵の息の根を止めるのすら、主人公のくせに自分でやっていないし。幸せになるほど面白おかしいのに、絶望的なほど風刺に満ち満ちているのだからPTAってすごい。ただし、カーチェイス場面は三半規管弱者泣かせ。
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👑『罪人たち』👑
冨永由紀
進化し続けるライアン・クーグラー監督とマイケル・B・ジョーダンのコンビが示した新たな地平。これは見事というほかない。ホラーという強烈なエンターテインメントの中にアメリカ史の記憶を刻み込み、喜怒哀楽すべての感情に訴える物語だ。ヴァンパイア襲来という非現実的な設定が差別や搾取のメタファーとして機能し、映画の舞台である1930年代にも現代にも通じる現実を鮮明に照らし出す。音楽の魔力や心に残る台詞の数々も奏功して、エンタメと社会性を両立させるジャンル映画のポテンシャルは計り知れない。
👑『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』👑
新田理恵
4本製作された『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズの中で、実は一番心に刺さったのがこれ。最愛の人を亡くし、シングルマザーになったブリジットが、周りの人に支えられながら新たな一歩を踏み出していく。ブリジット・ジョーンズの軽妙な語り口はそのままに、「死別」と「老い」という、誰にも避けられないテーマに向き合った見事な脚本だったと思う。プレイボーイで社交的なダニエルが、病に倒れた時に頼れる存在がブリジットだけだったことに気づく場面が身につまされた。今からでも友達を大事にしようと思いました。
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👑『愛はステロイド』👑
黒豆直樹
『エディントンへようこそ』、『サブスタンス』と並ぶ、「終盤、なんでこんな展開になった……?」オブ・ザ・イヤー! またはシスターフッド版『ドラゴンボール』。邦題も秀逸!
