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米国では遂に全面ストリーミング放映に! 第98回アカデミー賞直前予想

今年のアカデミー賞は、ネットワーク局の独占生中継という従来の放映形式をアップグレードして、Webやアプリからも視聴できるストリーミング配信と「二人三脚」形式へと移行。そんな転換期の中で、今年のオスカーはどんな選択をするのだろうか。

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第98回アカデミー賞ノミニーズ ランチョン Photo by Frazer Harrison/Getty Images
第98回アカデミー賞ノミニーズ ランチョン Photo by Frazer Harrison/Getty Images 全 13 枚
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今年のアカデミー賞は、米国ではネットワーク局の独占生中継という従来の放映形式をアップグレードして、Webやアプリからも視聴できるストリーミング配信と「二人三脚」形式へと移行する。若年層を中心に「テレビで生放送を見る」という行為そのものが減ってきた今、Hulu Live TV、YouTube TVなどのライブ配信を通じて「ABCネットワークのみで放送する番組」ではなく、「どのデバイスでも見られるストリーミング時代のライブイベント」として打ち出すのである(※日本ではNHK BSにて生中継、同日20時よりWOWOWオンデマンドにて配信)。

ほんの数年前までは、ストリーミングに対して嫌悪感を抱いていたアカデミー会員も少なくなかったが、映画の消費体型が猛スピードで更新され続ける現在、保守的と言われてきたアカデミーも、ハリウッド映画界と足並みを揃え、大きな変化を受け入れざるを得なくなった。その象徴が、今年の授賞式だと言える。そんな転換期の中で、今年のオスカーはどんな選択をするのだろうか。

一騎討ちか?『罪人たち』VS『ワン・バトル・アフター・アナザー』

作品賞には10作品がノミネートされているが、下馬評では明確に軸が見えている。「さすがに作品賞は難しいだろう」と見られている作品もある中で(たとえば『F1』はエンターテインメントとしては成功したが、アカデミー的評価とは距離がある)、本命視されているのはライアン・クーグラー監督の『罪人たち』(原題:Sinners)と、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ワン・バトル・アフター・アナザー』の二作だ。

『罪人たち』(C) 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

1932年の米南部ミシシッピーを舞台に、マイケル・B・ジョーダンが一人二役で双子の兄弟を演じる『罪人たち』は、公開からわずか2週で北米興収2億7500万ドルを突破。ジャンルとしてはヴァンパイア映画の形式を取りながら、その内側では南部社会に根深く残る人種差別を鋭く描き出している。ホラーと社会性を巧みに融合させた語り口は高く評価され、エンタメ性とメッセージ性の両立に成功した作品として話題を呼んだ。

対する『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、レオナルド・ディカプリオ演じるダメ親父が、過去の因縁から娘をさらわれ、彼女を救うために次々と訪れる窮地に立ち向かっていく物語。『マグノリア』や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』で知られるポール・トーマス・アンダーソン監督らしい癖の強い演出は健在で、一般映画ファンの好みは分かれるが、その作家性は揺るがない。

アクター賞(旧SAG賞/全米映画俳優組合賞)史上最多7部門ノミネート『ワン・バトル・アフター・アナザー』

BAFTAでは、『ワン・バトル・アフター・アナザー』が6部門を制覇し、全米プロデューサー組合賞(PGA)でも最高賞を獲得して、ひょっとするとアカデミー賞も同じ流れになるかと思っていた。しかし、現地時間3月1日に発表された全米俳優協会賞(SAG)では、主演男優賞を『罪人たち』のマイケル・B・ジョーダンが受賞し、SAG最高峰のキャスト賞も『罪人たち』の面々が受賞するという結果になり、俳優の会員数が多いアカデミーでも同様の結果が反映される可能性が出てきており、面白い展開になってきた。

主演男優賞・女優賞の行方

マイケル・B・ジョーダン Photo by Gilbert Flores/Variety via Getty Images

主演男優賞では、『罪人たち』で双子の兄弟を一人二役で演じ切ったマイケル・B・ジョーダンと、『ワン・バトル・アフター・アナザー』のレオナルド・ディカプリオがレースの先陣を切っている。とりわけディカプリオは、欠点だらけで決して英雄的ではない父親像を通して、人間の弱さと滑稽さを体現しており、「キャリア後期の代表作」と評価する声も多く、まだ若手であるマイケル・B・ジョーダンと比べて、ディカプリオがやや有利と見る向きは少なくない。

今年の主演女優賞は、作品ジャンルの影響からか穏やかなレースという印象がある。最有力とされているのが、『ハムネット』で喪失と再生を静かに演じきったジェシー・バックリー。シェイクスピアの名作戯曲「ハムレット」の誕生背景となった悲劇と愛の物語を描いた本作で、派手さを排した内向的な演技ながら、感情の深度で強い印象を残している。

ジェシー・バックリー Photo by Rebecca Sapp/Getty Images for Santa Barbara International Film Festival

対するは、家族内の人間ドラマを描いた『センチメンタル・バリュー』レナーテ・レインスヴェ。北欧的な抑制の効いた演技が作品全体のトーンを決定づけており、演技派支持層からの評価が高い。 

レナーテ・レインスヴェ Photo by Christopher Polk/2026GG/Penske Media via Getty Images

注目カテゴリー:助演男優賞

今年、最も読みづらく、同時に面白いのが助演男優賞だ。『ワン・バトル・アフター・アナザー』からはショーン・ペンベニチオ・デル・トロという二人の怪物級俳優が名を連ねる。ショーン・ペンはすでに二度のオスカー受賞歴を持つが、今回も強烈な印象を残している。一方、デル・トロも画面に登場するだけで物語を引き締める存在感を放つ。ただし、同一作品内での票割れは避けられない。

『罪人たち』のデルロイ・リンドーもかなり有力視されている。手堅い助演男優として長年ハリウッド映画界に貢献してきたリンドーだけに、作品自体の話題性とも相まって、そろそろ受賞の時期ではという声が聞かれる。『罪人たち』においては、もしマイケル・B・ジョーダンが主演男優を逃しても、デルロイの助演男優賞受賞に救われる、というパターンも考えられる。

デルロイ・リンドー Photo by Earl Gibson III/Deadline via Getty Images

さて、そうした中で静かに支持を広げているのが『センチメンタル・バリュー』のステラン・スカルスガルドだ。長年ハリウッドで活躍し、どの作品に出演しても作品の質を高め、物語の柱を根底から支えてきた名優である。健康上の理由から引退説も囁かれており、今回の名演を機にアカデミーが“功労”の意味合いを込めて票を投じる可能性は十分にある。

ステラン・スカルスガルド Photo by Lia Toby/Getty Images

アカデミー賞の醍醐味

アカデミー賞 Photo by Santi Visalli/Getty Images

アカデミー賞は毎年、前哨戦の結果や下馬評をもとに予想を楽しむことも醍醐味のひとつ。近年では、アカデミーが多様性を重視した会員構成になったことから、アカデミー賞投票のパターンが変わってきた。『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』で主演男優賞レースで有力視されているティモシー・シャラメだが、BAFTAでは、トゥレット症候群に苦しむ主人公を『I Swear』で演じたロバート・アラマヨに敗れるという意外な結果が出た。

全米アカデミー賞の候補には上がっていないので同じ結果になることはありえないものの、結局のところ、アカデミー賞は予想通りに進む年もあれば、あっさり裏切られる年もある。最後にどんな選択がなされるのかは、蓋を(正確に言えばアタッシェケースだが。)開けてみるまでわからない。そのワクワク感こそが、アカデミー賞を追いかける永遠の面白さで醍醐味と言える。果たして今年はどのような授賞式ドラマが待ち受けているのだろうか。2026年の第98回アカデミー賞は、現地時間2026年3月15日ロサンゼルスにて授賞式が開催される。

《Akemi Kozu Tosto/神津トスト明美》

映画プロデューサー・監督|MPA(全米映画協会)公認映画ライター Akemi Kozu Tosto/神津トスト明美

東京出身・ロサンゼルス在住・AKTピクチャーズ代表取締役。12歳で映画に魅せられハリウッド映画業界入りを独断で決定。日米欧のTV・映画製作に携わり、スピルバーグ、タランティーノといったハリウッド大物監督作品製作にも参加。自作のショート作品2本が全世界配給および全米TV放映を達成。現在は製作会社を立ち上げ、映画企画・製作に携わりつつ、暇をみては映画ライター業も継続中。

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