第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にて公式上映が行われた濱口竜介監督の最新作『急に具合が悪くなる』。フォトコールおよび公式記者会見の模様が明らかになった。
公開前から大きな注目を集め、すでに50か国以上での配給が決まっている本作。
フォトコールはフランス現地時間5月16日(土)10:00~10:15に行われ、濱口竜介監督、ヴィルジニー・エフィラ、岡本多緒、長塚京三、黒崎煌代、マリー・ビュネル、ジャン=シャルル・クリシェが参加した。

ヴィルジニー・エフィラは、カンヌの青空に映える「サン・ローラン(SAINT LAURENT)」のスーツと「カルティエ(CARTIER)」のイヤリングで登場。

岡本は「シャネル(CHANEL)」のジャケットとプリーツスカートをまとい圧倒的な存在感で周囲を圧倒した。フランスの国民的女優と国際的なトップモデル・俳優の登場に、現地カメラマンからも歓声が上がった。

長塚はイタリアの高級ブランド「ゼニア(ZEGNA)」のセットアップ、黒崎は「トッズ(TOD'S)」を着用し、リゾート感溢れる爽やかな装いで濱口監督とともにリラックスした笑顔を振りまいた。
公式記者会見(フランス現地時間5月16日(土)10:15~11:00)では、世界中のジャーナリストからの質問に各キャストと監督が回答。

がんを患った哲学者と文化人類学者の往復書簡を原作とする本作について、濱口監督は2020年末から企画を温めていたと明かしつつ、「言葉の多いこの内容を、どう映画にすればいいか分からずにいた」と語る。そこへフランスのプロデューサーからの誘いが転換点となったという。
「大部分をフランスで撮るということであれば、この会話劇を受け入れてくれる土壌があるのではないかと思いました。目指したゴールはただ一つ、自分が原作を読んで得た、本当に体が震えるような思いをなんとか映画に移し替えることでした」と濱口監督は熱量を語った。
フランス側プロデューサーのジャン=リュック・オルミエール氏も「濱口監督はフランスに数ヶ月間滞在し、文化に完全に浸り、現地の俳優たちとワークショップを行って働き方を理解しようとしました。それは全く例外的で注目すべきことでした」と監督の徹底したリサーチと情熱を絶賛した。
前作『ドライブ・マイ・カー』でも話題を呼んだ「多言語での会話」と「感情を排した本読み」、いわゆる濱口メソッドについて、監督は「俳優が言葉の情報ではなく、体から溢れてくる感情の情報を使って演技ができるのではないか。俳優の集中力を非常に高めてくれるものだと期待して取り入れています」とその意図を語った。

黒崎は「経験が浅い中で、このような素晴らしい作品に参加させていただいて、ただただ無我夢中でした」とふり返り、「濱口スペシャルメソッドでトレーニングメニューを組んでくれて、私は乗っかれば自然とたどり着いている、魔法のような演出をうけたという印象でした」と感想を述べた。

81歳で50年にわたるキャリアを持つ長塚は「大変勉強になりました」と語り、「フランス語のテキストを書き写しまして、書斎に貼ってその前を通るごとに黙々と読むということを日課にしました。そうやってセリフを覚え、一言一句間違えずに、そのまま、ただ声にするという。今回の現場で、私はああ、演技というのはまだこんなにも奥深く、新しい発見があるものなんだな」と謙虚にふり返った。

日本語での演技に挑んだヴィルジニー・エフィラは、「私はまず『ひらがな』を読むことから習得するように言われました(笑)。子供のように読みながら、本当に早口でテキストを繰り返しました。大変な作業でしたが、それができて本当に幸せでした。これは単なる撮影ではなく、別の世界へ連れて行かれるような、人間としての深い経験でした」と明かす。

フランス語での演技に挑んだ岡本も、「短い役者人生の中で、これほど豊かな時間をいただけたことはなかった」と語り、「毎日、次の日のテキストを何回も何回も読む作業を繰り返すことで、母語ではない言語が体に染み付き、恐怖なく現場に行ける段階まで持っていっていただけました。言語の壁を越えて、身体的・エネルギー的に『本当に通じ合えている』と感じられる瞬間が多々ありました」と手応えを明かした。
前作『悪は存在しない』との繋がりについて問われた濱口監督は、同時期に企画が進行していたという2作品について、「根本的には自分が『何かすごく疲れたな』という気持ちだったと思います。なんでこんなに疲れているんだろうと考えた時、自分たちがいる社会というものが何かしら作用しているんじゃないかという気持ちが、両作品に反映しているのではないでしょうか」と真摯に語る。

本作の大きなテーマである「ケア」について問われた濱口監督は、「他者に対する関心」というキーワードを挙げ、「自分たちの生活の中で、人に関心を向けることがすごく難しくなっていると感じています。ケアのプロフェッショナルの仕事でさえ、その根本にある関心が奪われ、行為が形骸化してしまう状況がある。自分が今回拾い上げたいと思ったのは、その『ケアの根本にある、自分たちの関心を奪ってしまう何か』について考えたいということでした」と語り、監督の社会への「疲れ」に対する一つのアンサーを聞き、会場は暖かな空気につつまれた。
授賞式はフランス現地時間5月23日(土)19:25(日本時間5月24日午前2:15)から行われる。
『急に具合が悪くなる』は6月19日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。
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