韓国ドラマには、「現実では絶対に関わりたくない」と思う男が出てくるが、筆者が久々に強烈な“クズ男”だと感じたのが、『誰だって無価値な自分と闘っている』で、俳優チェ・ウォニョン演じる、映画配給会社社長のドンヒョンだ。彼をきっかけに今回は、韓ドラ史に名を刻んだガチな“クズ男”たちを振り返ってみた。
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1.善意を装って人を支配するモラハラ社長
『誰だって無価値な自分と闘っている』(2026)
チェ・ドンヒョン(演者チェ・ウォニョン)

大手映画配給会社社長のドンヒョンは、一見すると有能な業界人。けれど本性は「文化人の顔をした支配者」だ。小規模映画会社の女性代表ヘジン(カン・マルグム)に対し、大手の力を使って作品を譲れと迫る姿が象徴的だ。そんな彼に対し、ヘジンは怒りを爆発させる。
「そんなことできるか、このクソ野郎!」
「韓国で映画を作る目的は金じゃない。楽しむためだよ」
この痛快な啖呵は、視聴者の代弁でもあった。
彼の厄介な点は、「君のためを思っている」という顔をすることだ。才能を認めているように見せながら評価を奪い、自信を削っていく。その根底には嫉妬や支配欲が透けて見える。「こういう上司、いた!」と思う方も多いかもしれない。被害者が「自分が悪いのでは」と思い込んでしまうあたりが実にリアルである。
チェ・ウォニョンといえば、チェ・ジウ主演の『二度目の二十歳』(2015)でも、外では立派な大学教授、家では妻を見下し続けるモラハラ夫を演じていた。派手な悪役ではないのに強烈な不快感を残す――そんな“嫌な男”を演じさせたら、チェ・ウォニョンの右に出る者はいないのかもしれない。
2.妻を搾取し続ける“ゴミ夫”
『私の夫と結婚して』(2024)
パク・ミンファン(演者イ・イギョン)

パク・ミニョン演じる主人公ジウォンの夫ミンファンは、末期がんの妻を支えるどころか親友と不倫し、妻を死に追いやろうとする最低男。家事も責任も他人任せで、自分だけは被害者の顔をする。韓国で「スレギ・ナンピョン(ゴミ夫)」と呼ばれるほど嫌われ、愛情も労力も搾取する、関わると人生を吸い取られる男だ。イ・イギョンの怪演もあって、韓ドラ史に残るクズ夫となった。
3. 家族を完全コントロールするロースクール教授
『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』(2018)
チャ・ミニョク(演者キム・ビョンチョル)

検事出身のロースクール教授ミニョクの信条は、「幸せは成績順」だ。自分が叶えられなかった夢を双子の息子に託し、家族の人生を思い通りに動かそうとする。彼の恐ろしい点は、本人が本気で「家族のため」と信じていることだ。愛情が支配へと変質した典型例で、教育熱が暴走した結果、生まれた怪物といえる。
ちなみにミニョクを演じたキム・ビョンチョルもまた、『ドクター・チャ』(2023)でも、不倫を重ねながら妻の献身を当然視する問題夫を演じている。
4. 妻も愛人も手放したくない身勝手な映画監督
『夫婦の世界』(2020)
イ・テオ(演者パク・ヘジュン)

テオは、韓ドラ界で伝説級の不倫男だ。医師である妻ソヌ(演者キム・ヒエ)にも愛人ダギョン(ハン・ソヒ)にも愛されて当然と思い込み、妻から離婚を突きつけられても、「どちらも失いたくない」と平然と言い放つ。不倫、嘘、責任転嫁、自己正当化のフルコース。それでも自分を被害者だと思っているから救いようがない。
この最低な夫を演じたパク・ヘジュンは、『おつかれさま』では家族思いの無骨な父親役を、『誰だって無価値な自分と闘っている』では主人公を不器用に支える兄役を演じている。真逆の役を自在に演じる振り幅の大きさは、さすが実力派俳優といえる。
5. 親の権力を自分の力だと思い込む御曹司
『梨泰院クラス』(2020)
チャン・グンウォン(演者アン・ボヒョン)

パク・ソジュン演じるセロイが巨大飲食チェーン「長家(チャンガ)」に立ち向かう青春サクセスストーリーで、「長家」の会長を父に持つ御曹司グンウォン。いじめや暴力を繰り返しながら、自分では責任を取らない。父親の権力を自分の力だと勘違いしている典型的な特権階級型クズだ。
一方で、父親に認められたいという強い劣等感を抱え、傲慢さの裏にある弱さも併せ持つ。そして、この憎たらしい御曹司を演じたアン・ボヒョンの存在感は圧倒的で、その怪演により、本作が彼の出世作となったと言える。
他にも、『涙の女王』のウンソン(演者パク・ソンフン)、同じくパク・ソンフンが演じる、『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』のジェジュン、『マスクガール』のブヨン(演者イ・ジュニョン)、『わかっていても』でソン・ガンが演じるジェオンなど、韓ドラには強烈なクズ男が数多く存在する。
視聴者の神経を逆なでし、「こんな男だけは無理だ」と思わせるキャラクターがいるからこそ、主人公の成長や復讐、恋愛はより痛快に映る。できることなら現実には出会いたくないけれど、韓ドラには欠かせないスパイスと言えるだろう。
(文=田名部 知子/Xで気ままなソウルの日常を発信中:@t7joshi)
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