韓国ドラマを観ていると、キャラクターたちが疲労を感じた瞬間にポケットからスッと小さなパッケージを取り出し、一粒の飴を口に入れて「あぁ、生き返る」「疲れが吹き飛ぶ」と呟くシーンに遭遇しないだろうか。
あの正体は、コーヒーキャンディの「KOPIKO(コピコ)」だ。
『海街チャチャチャ』『シスターズ』『模範タクシー』『私の夫と結婚して』『素晴らしき新世界』『エージェント・キム: リアクティべーティッド』など、ジャンルを問わず数々のメガヒットドラマに登場したことで、今や日本の韓国ドラマファンの間でも「あ!またコピコ出た!」と突っ込まれるほど、お馴染みの存在となっている。
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しかし、このコピコがなぜこれほどまでに韓国ドラマに頻出するのか、その裏側には非常に戦略的なマーケティングの背景が隠されていた。
実は韓国発ではない!「KOPIKO」の意外な正体
ドラマの作中で韓国の俳優たちがこぞって口にしているため、韓国の国民的お菓子だと思っている視聴者も多いかもしれない。しかし実はこれ、インドネシアの食品メーカーが展開するインスタントコーヒーブランドなのだ。
「KOPI」とは、インドネシア語でコーヒーという意味。KOPIKOは本物のコーヒー原液を抽出してキャンディ化した製品で、1粒あたりなんと約25mgのカフェインが含まれている。劇中で登場人物たちが「眠気覚まし」や「疲労回復」のアイテムとして食べるのには、しっかりとした理屈(カフェイン効果)があったというわけだ。
現在、韓国国内ではコンビニエンスストアはもちろん、街中にあるダイソーでも手軽に購入可能。価格も1パック1500ウォン(約170円程度)と手頃で、日常に寄り添う親しみやすい存在として定着している。
「チャイナリスク」の隙を突いた見事なPPL戦略

KOPIKOが韓国ドラマのPPL(プロダクト・プレイスメント=劇中での間接広告)に本格的に登場し始めたのは2021年頃。そこには、当時の韓国エンタメ界が抱えていた“ある事情”が大きく関係している。
2020年から2021年にかけて、韓国ドラマ界では中国ブランドによるPPLが猛威を振るっていた。『女神降臨』や『ヴィンチェンツォ』など数々の人気作に中国製品が登場したが、一部の歴史ドラマ(『朝鮮駆魔師』など)での描写や不自然な商品の登場により、「グローバル視聴者に誤った文化的認識を与えかねない」と韓国国内で大きな非難が巻き起こったのだ。
この“PPLへの嫌悪感”が高まっていたタイミングで、巨額の投資とともにスマートに入り込んできたのがKOPIKOだった。「疲れた時にコーヒー味の飴を舐める」というごく自然なアクションはドラマのノイズになりにくく、視聴者も抵抗感なく受け入れることができた。

結果的にこの戦略は大成功。ドラマに登場するたびに検索量や関心度が急上昇し、実売へと直結した。その勢いは凄まじく、2024年には韓国のコンビニ「GS25」に入店してわずか1カ月で20万個以上を売り上げるという爆発的なヒットを記録している。
世界へ届く「韓ドラ」という最強の広告塔
興味深いのは、KOPIKOが韓国ドラマに巨額のPPL投資を行った最大の理由は、「韓国市場だけを狙ったわけではない」という点だ。
KOPIKOの母国であるインドネシアをはじめ、東南アジア全域には巨大な韓国ドラマのファンダムが存在する。さらにコロナ禍以降、韓国ドラマはNetflixやDisney+、AmazonプライムビデオといったグローバルOTTを通じて、瞬く間に世界中へ配信されるようになった。
つまり韓国ドラマは、「世界中の視聴者に向けた巨大なグローバル・ショーウィンドウ」へと進化したのだ。
ドラマを観た世界中の視聴者が「彼らが食べているあれは何?」と好奇心を抱き、SNSで拡散されていく。あからさまなTV CMを打つよりも、憧れの俳優たちが劇中でごく自然に消費する姿を見せるほうが、遥かに効果的なマーケティングとなる。韓国ドラマという“最強のツール”を利用し、KOPIKOは世界規模での広告効果を十二分に享受しているのだ。
次に韓国ドラマを観る時は、ぜひ登場人物の手元に注目してみてほしい。絶妙なタイミングで登場するKOPIKOは、もはや単なる小道具を超えた“名脇役”と言えるかもしれない。
(文=韓ドラLIFE編集部)
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