韓流時代劇『火の女神ジョンイ』は、陶磁器作りに人生を懸けた女性の成長と、王子・光海君との切ない愛を描いた歴史ドラマである。
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宮廷を舞台にした韓国時代劇は数多いが、本作が光を当てるのは、王室で使われる器を作っていた陶工たちの世界だ。主人公ユ・ジョンが父の無念を背負い、男性中心の職人社会へ飛び込んでいく姿を軸に、宮廷内の陰謀、出生の秘密、身分を超えたロマンスが展開される。
物語の途中からでも楽しめるように、まずは作品の基本情報、押さえておきたい見どころ、主要人物の関係を整理しておこう。
王室の陶磁器製造所を舞台にした異色作
本作の舞台となるのは、朝鮮王室で使われる陶磁器を作っていた「分院」である。
王や宮廷で使う器を製造する場所であり、そこでは高い技術を持つ沙器匠たちが腕を競っていた。美しい器を作る技術だけでなく、分院内での地位や宮廷とのつながりも重要となる、厳しい職人社会である。

主人公ジョンは、そこで宮廷陶工の頂点を目指す。
単なる宮廷ロマンスではなく、土を選び、窯を扱い、器を完成させる陶工たちの仕事が物語の中心に置かれている点が、本作ならではの魅力だ。
父の無念を晴らすため、沙器匠を目指す
物語は、2人の沙器匠の対立から始まる。
朝鮮王朝第14代王・宣祖の治世。優れた沙器匠であるイ・ガンチョンとユ・ウルタムは、王命を受け、分院の官職をめぐって技を競うことになる。
しかし、ウルタムは計略によって濡れ衣を着せられ、分院から追放されてしまう。やがて恩赦で釈放されたウルタムは、分院の窯で女児を産んだヨノクを発見する。死を目前にしたヨノクから赤ん坊を託され、その子をユ・ジョンと名づけて育てることになる。
ジョンは自分の出生に隠された事情を知らないまま、活発な少女へと成長する。そして山中で、一人の少年と運命的に出会う。
その少年こそ、のちに朝鮮王朝第15代王となる光海君だった。
その後、ウルタムは分院への復帰を果たすが、何者かによって命を奪われてしまう。
父の無実を証明し、その無念を晴らすため、ジョンは沙器匠になることを決意。女性であることを隠し、「テピョン」という名前で男装して分院の試験に挑む。
そこで再び光海君とめぐり合い、ジョンの運命は宮廷の権力争いへと深く結びついていく。
押さえておきたい5人の主要人物
ユ・ジョン/テピョン(ムン・グニョン)
本作の主人公。ユ・ウルタムに育てられ、幼い頃から陶磁器に触れてきた。父の無実を証明するため、男装して「テピョン」と名乗り、分院の工抄軍を目指す。明るく行動力があり、困難に直面しても諦めない。陶工としての成長が物語の中心だが、自らの出生に隠された秘密や、光海君とテドの間で揺れる心も描かれる。
光海君(イ・サンユン)
朝鮮王朝の王子で、のちの第15代王。王としての資質を備えているが、王位継承順位では不利な立場にあり、幼い頃から目立たないように生きてきた。ジョンと幼少期に出会い、成人後に再会。彼女の才能とまっすぐな性格に引かれていく。ジョンを愛する男性であると同時に、王位をめぐる宮廷の争いに巻き込まれる人物でもある。
キム・テド(キム・ボム)
幼い頃からジョンを見守り、実の兄のように守り続けてきた人物。武科の試験を受け、光海君の異母弟である信城君の護衛となる。寡黙で武術に優れ、自らの思いを前面に出すよりも、ジョンを危険から守ることを優先する。ジョンにとって最も身近で頼れる存在だが、その思いが報われるとは限らない。
シム・ファリョン(ソ・ヒョンジン)
ジョンとテドの幼なじみ。幼い頃はジョンとともに器作りを学んでいたが、父シム・ジョンスの借金を返すため、商団で働くようになる。ジョンとは親しい関係にあったが、成長するにつれて友情だけでは割り切れない感情を抱くようになる。商人として生き抜こうとする強さと、愛や嫉妬に揺れる複雑さを持つ人物だ。
イ・ユクト(パク・コニョン)
若くして沙器匠となった実力者。イ・ガンチョンの息子で、父のもとで陶芸一筋の人生を歩んできた。職人としての誇りが高く、当初はジョンを認めようとしない。一方、商団で働くファリョンに心を奪われ、陶芸だけを見てきた人生に変化が生まれていく。
今から見るなら、ここに注目
これから『火の女神ジョンイ』を見るなら、単に「ジョンは誰と結ばれるのか」だけを追うのではなく、彼女がどのように職人として認められていくかに注目したい。
女性であることを隠し、父の汚名をそそぎ、技術だけを武器に分院へ挑むジョン。その前には、身分の壁、宮廷の陰謀、出生の秘密、そして父の世代から続く因縁が立ちはだかる。
光海君との恋、テドの一途な思い、ファリョンとの友情と対立も見どころだが、物語の核にあるのは、ジョンが自分の手で作った器によって道を切り開いていく姿である。
王子から愛されるだけでは終わらない。自らの腕で職人としての居場所を勝ち取ろうとするからこそ、『火の女神ジョンイ』のヒロインは強く、魅力的なのである。
文=森下 薫
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