Netflix『恋は飴模様』で、チョン・ヘイン演じる主人公チャン・テハの相手役となるエリート女性検事コ・ウンセを演じている女優ハヨン。記憶障害を抱えた検事と、突然現れた「自称彼氏」が繰り広げるラブコメディで、これまでとはひと味違う魅力を見せている。
仕事のできるエリート検事でありながら、記憶を失ったことで揺れ動くウンセを自然に演じ、回を重ねるごとに生き生きとした表情を見せている。そんな女優として飛躍のときを迎えた矢先、韓国で思わぬ逆風が吹いた。

8月7日、番組宣伝のため出演したKBS2のトーク番組『屋根部屋の問題児たち』で、ハヨンは4代続く医師家系で、曽祖父が日本で西洋医学を学んだ医師だったと明かした。これをきっかけにネットユーザーが曽祖父の経歴に注目し、日本統治時代の親日団体への所属歴などが掘り起こされた。所属事務所の説明も二転三転し、批判が広がる中、本人直筆で謝罪文まで公開されたが、番組の再放送・再配信の中止や活動にも大きな影響が及んでいる。共演のチョン・ヘインもインタビューが中止となった。
こうした状況だからこそ、改めて注目したいのが、ハヨンの女優としての歩みだ。
比較的短い期間で脇役から着実に経験を重ね、作品ごとに役柄の幅を広げてきた。2019年に『ドクター・プリズナー』でデビュー。『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(2022)では、ウェディングドレスが脱げてしまう花嫁役で強いインパクトを残し、『模範刑事2』(2022)『イ・ドゥナ!』(2023)など話題作に出演。そして転機となったのが、チュ・ジフン主演の『トラウマコード』(2025)だ。

演じたのは、重症外傷センターで働く5年目のシニア看護師、チョン・ジャンミ。仕事はできるのに言動にはクセがあり、ひと筋縄ではいかないキャラクターだ。無造作に髪を束ね、華やかさを封印した粗野な雰囲気をまとったハヨンは、表情や間の取り方でキャラクターを巧みに作り上げた。筆者も、『鉄槌教師』で演じた明るく美しい主人公の婚約者役と同じ女優だとは気づかなかったほどだ。美人女優のイメージにとらわれず、クセのある役も自分のものにする。それがハヨンの強みであり、女優としての面白さでもある。

その振り幅は、Netflix『鉄槌教師』(2026)でも際立っている。ハヨンが演じたチェ・ガユンは、主人公ナ・ファジンの婚約者であり、のちに教育部長官となるチェ・ガンソクの娘。教師として生徒と真摯に向き合っていた人物だが、物語では回想シーンを通して描かれる。出演時間は決して長くはないものの、彼女の存在が社会を動かすのだ。ガユンの出来事をきっかけに、ファジンは教権保護局の監督官となり、教育現場の問題に「鉄槌」を下していく。ハヨンはファジンが守ろうとする大切な存在として、強い印象を残した。
脇役から着実に存在感を高め、個性的な役を経て、ストーリーを大きく動かす重要人物、そしてヒロインへ。『トラウマコード』『鉄槌教師』『恋は飴模様』とNetflix作品で存在感を高めているのも、彼女の実力を物語っているのではないだろうか。
家族の歴史をめぐる問題は重く受け止めなければいけないものだけれど、ハヨンが女優として積み重ねてきた仕事は、切り分けて評価したい。家族の歴史が本人の活動にまで大きな影響が及ぶ今回の騒動は、韓国社会の歴史認識をめぐる議論の厳しさを感じさせる一件でもある。それでも作品ごとに新たな顔を見せてきたハヨンが、これからどんな役に挑むのか、今後も注目したい女優であることは間違いない。
(文=田名部 知子/Xで気ままなソウルの日常を発信中:@t7joshi)
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