『恋は飴模様』で、斧を振りかざしながら主人公たちを追い詰める、怖すぎる男がいる。表向きは企業の会長、裏では犯罪組織を率いるボス、ペク・サンギルを演じるホ・ソンテ(48)だ。記憶を失った検事コ・ウンセ(演者ハヨン)と、彼氏だと名乗るチャン・テハ(演者チョン・ヘイン)の甘辛い恋模様に、この男が不穏な影を落とす。
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ロマンチックコメディーをベースに、メロ、ノワール、ミステリー、アクションへと展開する本作で、ペク会長は物語に緊張感をもたらす重要な存在だ。自分の弱みを握る女検事を執拗に追い、怒りに任せて部下にまで斧を振り回し、飼っている高級魚アロワナの水槽を叩き割るなど、その暴れっぷりはすさまじい。

そんな凶暴なペク会長をさらに際立たせているのが、演じるホ・ソンテの顔つきで、まず目に飛び込んでくるのが、目の下の大きなふくらみだ。一般的には、疲れて見える、老けて見える眼下脂肪は、加齢とともに目立ちやすくなり、特に女性にとってはできれば消したい存在で、美容施術で除去する人も多い。ところが筆者は、まさにそこがホ・ソンテの悪役顔のポイントであり、俳優としての大切な個性になっているのではないかと思った。
実際、2025年12月、MBCのトークバラエティー『ラジオスター』に出演した際も、この目の下の脂肪が話題になった。スタッフから「いつも疲れて見える」と言われ、目の下の脂肪再配置施術を勧められることがあるという。ところが本人は、「遺伝なんです。家族みんなこんな感じ」と説明。さらに、「凶悪な表情を演じるときには、これがないとダメなんじゃないかと思う」と話した。

別のインタビューでも、照明を当てたときに目の下やほうれい線に生まれる陰影について、「悪役を演じると、もっと汚く悪く見える」という話もしている。本人にとってこの目の下のふくらみは、単なるコンプレックスではなく、悪役を演じるための個性なのだ。
そこでふと思い出すのが、往年の日本の名優・宍戸錠(享年86歳)だ。宍戸錠といえば、ふっくらと張り出した頬がトレードマークだった。実はもともと、線の細い二枚目俳優としてデビューしている。1950年代、石原裕次郎や小林旭ら正統派の二枚目スターが台頭するなか、宍戸は自らのキャラクターを際立たせるため、1956年に頬を人工的に膨らませる「豊頬手術」を受けた。二枚目路線からあえて外れ、悪役や殺し屋役へと活路を求めたのである。ふっくらとした頬を手に入れた宍戸は、小林旭主演のアクション映画『渡り鳥』シリーズなどで敵役として圧倒的な存在感を放ち、人気を確立していった。
ここで面白いのが、ホ・ソンテ本人の素顔だ。2021年、『イカゲーム』で暴力と脅しで周囲を支配する粗暴なヤクザ役を演じ、世界的に知られるようになったが、本人が語る実像は、スクリーンで見る姿とはかなり違う。シャイで小心な一面があり、危険なことがあれば避けることもあるという。
そしてまた、かなり異色のキャリアを持つ。釜山大学でロシア語を学び、卒業後はLG電子でロシア市場向けテレビの営業を担当。その後、大宇造船海洋でも勤務した。英語とロシア語にも通じている。そんな会社員生活から俳優へ転身したのは、35歳のときで、2011年、SBSのオーディション番組『奇跡のオーディション』への参加をきっかけに、俳優の道へ進んだ。もちろん、すぐにスターになったわけではない。『王になった男』などに端役で出演しながらキャリアを積み、『密偵』『トンネル』あたりから顔を覚えてもらえるようになったという。2021年には『怪物』と『イカゲーム』で一気に知名度が上昇。『イカゲーム』では、73kgほどだった体重を監督の要望で1カ月で92kgまで増量し、ヤクザ役の体を作った。その後も悪役や強烈なキャラクターで存在感を発揮してきたが、悪役だけを演じてきたわけではない。『恋は飴模様』の制作発表会では、「3年間、善良な役ばかりやっていた。今回は久しぶりの悪役」という発言もしている。
美しく整った顔だけが、俳優にとっての強みではない。加齢とともに目立ってくる目の下のふくらみも、ときには「欠点」と見なされるような点も、作品の中では唯一無二の武器になる。『恋は飴模様』で、斧を振りかざすホ・ソンテを見るとき、ぜひその「目の下」にも注目してみてほしい。そしてその唯一無二の“チャームポイント”を持ち味に、次はどんな作品で出会えるのか楽しみだ。
(文=田名部 知子/Xで気ままなソウルの日常を発信中:@t7joshi)
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