1943年に出版されたアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリによる「星の王子さま」を、初のアニメーションとして映画化する『リトルプリンス 星の王子さまと私』。詩的で美しい「星の王子さま」の物語をそのままに、現代を生きるの女の子を主人公に原作のその後を描く物語をスクリーンに描き出す。シネマカフェでは本年度カンヌ国際映画祭でも絶賛を浴びた本作の魅力を大特集!
大人になることは、色々な経験を積み重ね、生きていくための“判断力”を持つことですが、経験に頼りすぎてしまうことで気づかなくなるものもあります。たとえば、昔は両手いっぱいに“何かを信じること”や“想像すること”を持っていたはずなのに、いつの間にか、指と指の間からこぼれ落ちてしまっているような…。原作『星の王子さま』の物語を包み込んで描く映画『リトルプリンス 星の王子さまと私』は、そんなこぼれ落ちてしまった大切なもの──どんな大人もかつて必ず持っていた子供の目線、子供の思考を思い出させてくれます。そもそもサハラ砂漠に不時着した飛行士が、砂漠のど真ん中でB612という小惑星から来た小さな王子と出会う、子供ならすんなりとそのファンタジーの世界に入り込めても、大人になると“現実としてありえるのだろうか?”と考えてしまうものです。そんなふうに固くなった思考を柔軟にして、王子さまってどんな少年だろう? 家ほどの大きさしかないB612ってどんな星だろう? 想像する力を呼び起こしてくれます。
この物語に登場するお母さんは、9歳の娘のことを愛するがゆえに、勉強することに力を入れ、進学校に進むために引っ越しまでします。おそらくずっと勉強第一の規則正しい生活を続けてきたので、女の子にとってもそれが当たり前になっているのでしょう。ところが、引っ越してきた隣の家に住んでいる元飛行士のおじいさんと出会い、机の上では教えてくれない経験をするわけです。要は、おじいさんと過ごす時間は課外授業という感じでしょうか。一方、星の王子はバラのことを大切に大切に世話していましたが、ある日、バラの“表面的な”ワガママに疲れてしまい、バラの“本心”を知ろうとせずに、彼女を残したまま旅に出てしまいます。最終的には自分にとってバラがどれだけ大切な存在かを知る旅になりますが、お母さんにも星の王子にも言えるのは、相手の気持ち、心の奥にある気持ちが見えていなかったということです。母と娘は引っ越し先でおじいさんと、星の王子は地球上でキツネと出会うことで、本当に愛するとはどういうことなのか知ることになります。
星の王子が旅の途中で出会うのは、威張っている“王様”、褒められたくて仕方ない“うぬぼれ男、”損得勘定ばかりしている“ビジネスマン”など、おかしな大人たちです。彼らは、大人になった人のなかに必ず存在する感情を表現しているキャラクターとも言えるので、なんて横暴な人なんだろう…、なんて欲にまみれている人なんだろう…と、彼らのことを嫌だなぁと思いつつも妙に共感してしまうところもあるはずです。この映画のサブキャラクター、実は共感しやすいのです。そして、共感というフィルターを通して、自分はどうだろう? と自分自身を見つめ直す、反面教師の役割でもあります。そして、おじいさんを助けるために女の子がプロペラ機に乗って星の王子を探す旅先でもうぬぼれ男やビジネスマンのような大人が登場します。しかも、女の子が迷い込む大人の世界がこれまたダーク。人は、朱に交われば赤くなるものですが、その逆──女の子が大人の世界に飛びこむことで大人の世界が変わるように、人はいつでも変われることを伝えています。《text:Rie Shintani》
それは、あの「星の王子さま」のお話と、誰も知らないその先の物語――。よい学校に入るため、友だちもつくらず勉強漬けの毎日を送る9歳の女の子。名門校の学区内に引っ越してきたが、隣には風変わりなおじいさんが住んでいた。ある日、隣から飛んできた紙飛行機が気になって中をあけると、そこ書かれていたのは、小さな王子の物語。話の続きが知りたくてたまらず、女の子は隣家を訪ねた。王子の話を聞き、一緒に時を過ごすうちに、二人はかけがえのない友だちになっていく。しかし、ある日、おじいさんが病に倒れてしまう。女の子は、もう一度王子に会いたいと言っていた彼のために、プロペラ機に乗って、王子を探す旅に出た――!
監督:マーク・オズボーン(『カンフー・パンダ』)
脚本:イリーナ・ブリヌル(『恋におちたシェイクスピア』)
ストーリー統括/脚本:ボブ・パーシケッティ(『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』)
キャラクターデザイン:ピーター・デ・セブ(『ファインディング・ニモ』)
キャラクター監修: 四角英孝(『塔の上のラプンツェル』)
音楽: ハンス・ジマー(『ライオン・キング』
キャスト(英語版): ジェフ・ブリッジス、マッケンジー・フォイ、レイチェル・マクアダムス、ジェームズ・フランコ、ベニチオ・デル・トロ、マリオン・コティヤール
キャスト(日本語版): 鈴木梨央、瀬戸朝香、伊勢谷友介、滝川クリステル、竹野内豊、ビビる大木、津川雅彦 ほか
日本語吹替版主題歌: 「気づかず過ぎた初恋」松任谷由実
配給:ワーナー・ブラザース映画
オフィシャルサイト:http://www.littleprince.jp
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