以前のハワードは、華やかなニューヨークの広告業界における成功者で社員に向けて人生論を語るほどでした。ところが、いまでは出社をしても黙々とドミノを並べては倒す日々。ハワードのカリスマ性にあふれたキャラクターとクリエイティブな才能により成長してきた会社は、業績が悪化するばかりです。長年苦労を共にしてきた仲間であり、彼の親友でもあるホイット、クレア、サイモンは、ハワードが人生訓だった“愛”“時間”“死”について手紙を記したことを知り、3人の舞台俳優たちにそれぞれを“演じて”もらおうとするのですが…。
“愛”とは、いわばハワードが最も失望している存在であり、彼にとっては“時間”などただ過ぎ去るものでしかありません。“死”に対しては戸惑い、拒絶が先に立ちます。そんな3人と出会ったハワードがつい足を向けるのは、彼と同じ喪失と悲しみを共有するサポートグループ。カウンセラーのマデリン(ナオミ・ハリス)は、ハワードにもぜひ参加してほしいと願っていたのです。少しずつ変わり始めるハワードと、彼を取り巻く人々がすべてつながったときに見えてくる人生がくれた素晴らしいギフトに、私たちはただ、静かに心震わせることになります。本作をいち早く観た、ハワードと同じ広告マンたちの“温かい感動”もそれを強く表しています。