2014年に刊行された、ある女性の回顧録。それは、世界でも名を知らぬ人がいないほどのセレブリティを顧客に持つエクスクルーシブなポーカー・ルームの内幕を明かしたもので、たちまちベストセラーとなった。彼女の名はモリー・ブルーム。2002年、女子スキー・モーグル競技で冬季オリンピックの出場権を目前で逃した彼女は、休暇で滞在したLAで運命を変えるあるものと出会う。それは、エンタメ界、音楽界、財界など、桁違いの大物たちが集う秘密のポーカー・ゲーム。参加費は1万ドル(100万円相当)という高額ゲームの運営を手伝うモリーだったが、ある出来事をきっかけに自らのポーカー・ルームをオープン。数年後、NYに場所を移したモリーは、参加費25万ドル、一夜で100万ドルが動くゲームの主催者に。どんなに大物でも、彼女の招待なしにはプレイできない。モリーはその世界では知らない者がいない、“ポーカー・プリンセス”となっていた。
彼女の報酬は、顧客たちからのチップのみ。手数料を取らない限りは合法なのだ。だが、大金を持て余す富裕層の欲望に応じるうち、扱う金額はどんどん膨れ上がっていく。やがて、大金に吸い寄せられるように、さまざまな大物が集うことでポーカー・ルームの均衡が崩れ――。身の危険を感じたモリーは、このビジネスから身を引くことに。ところが、これが最後だと決めていたゲームに捜査が入り、全財産を没収されてしまい、すべてを失うことになる。そして引退から2年後、FBIから顧客情報を渡すかわりに財産を返却するとの交渉がもちかけられる。トップアスリートから、セレブリティが集う高額ポーカー・ルームの経営者となったとき、モリーはまだ26歳。ロースクールを目指す明晰な頭脳と決断力を武器に、人を騙すことなく500万ドルもの富を手にしていた。FBIの真の目的とは?モリーが下す驚きの決断とは?目標を見据えそれに突き進み、どんなときも自分を失わず、挫折を味わってもなお自らにとって最も大切なものを見極め、それを守り抜こうとする姿に、モリー・ブルームの美学が見えてくる。