
「一年後、あなたは消えてしまう」――川口春奈演じる北村志織が、引っ越したばかりのマンションの自室で“未来からの声”を聞くことから物語が始まる本作。そしてそんな彼女が運命的に出会うのが、同じマンションの隣人・小説家志望の平野進だった。
この平野役を演じる高橋一生は、深夜ドラマ「民王」では頭脳明晰、クールなドSのスーパー秘書・貝原を演じて話題を呼び、2017年には「カルテット」で唐揚げにレモンをかけるか否かなど、面倒くさいこだわりと茶目っ気を併せ持つ家森諭高を、大河ドラマ「おんな城主 直虎」で愛する人への思いを貫き、“究極の自己犠牲”といわれた小野政次を、朝ドラ「わろてんか」では優しく見守る王子様のような伊能栞を好演して大ブレイクした。
そして今回の、時間という壁を越えたラブストーリー『九月の恋に出会うまで』で演じるのは、言動すべてがとにかく愛おしい、“隣にずっといてほしい”癒し系男子だ。志織が熱を出して倒れれば、お姫様だっこ! 細身の割に大きな手で額の熱を測ってくれたり、冷却シートを貼ってくれたり! エプロン姿で料理をする平野に、「一緒にどうですか?」なんて言われたら、一体誰が断る!?
そうやって志織との距離が縮まったことで、2人肩を並べて歩くシーンで手が触れそうになれば、観ているこちらまでドキドキ。「ケチ~」「ケチで結構です」といったキュートすぎる言い合いもあり、“こんな高橋一生をスクリーンで観たかった!”という女性たちの願いがついに叶ったといえる。

“未来からの声”の主を探すため、平野と奔走する志織は、次第に惹かれあい、距離を縮めていく。そして、隣人・平野の“日常”(生態?)こそ、高橋一生が演じるからいちいち愛おしい。
アーモンド型の瞳をした色白のハンサムなのに、寝グセ頭で出勤して得意先回り。営業の仕事中以外は、どこか頼りなさそうで“へどもど”している。ときには志織に尾行されていることなどつゆ知らずに、こっそりスイーツを食べる姿も。まさに高橋さんは、原作から抜け出てきたかのように平野のイメージにぴったりだ。
志織が“未来からの声”の存在について打ち明けたときには、小説家の卵ゆえか好奇心や想像力が驚きよりも勝る。そして荒唐無稽にも聞こえる志織の話を信じ、受け入れてくれる。志織の命が助かったことによる矛盾(タイムパラドックス)を独自に調べ上げ、懸命に志織に解説する姿はちょっぴりオタクっぽくて理屈っぽく“独走”気味で、ドラマ「僕らは奇跡でできている」の大学講師・相河先生や「みかづき」の“教える天才”吾郎先生を彷彿とさせたりも。そして、いずれ彼女の存在が消えてしまうことに気づけば、その事態を防ぐため赤の他人であるはずの志織に力を貸していく。
そう、こうしたピュアで一途、静かなる情熱を内に秘めた姿も実に高橋一生らしい役回り。志織ばかりか観る者も好きにならずにいられない“平野”は、かつてないほどのハマり役なのだ。

原作の作家・松尾由美による同名小説は、タイムファンタジーやミステリーなど多彩な要素を含む普遍のラブストーリーとして「書店員が選んだもう一度読みたい恋愛小説」第1位に選ばれ、現在もロングセラーとなっている。この物語が胸を打つのは、過去に出来なかったこと、やらなかったことへの後悔や諦めきれない一途な思いが、切ない奇跡のような恋と結びついているから。
愛する人が消えてしまう――過去が変わったことで生じたタイムパラドックスから志織の身を守るため、平野が選んだ道は“相手を思う”からこそ、あるウソをつくことだった。平野は、志織が何事もなく、幸せに生きていく“未来”を必死に守ろうとしたのだ。愛する人の“未来”のためにつくウソは、「直虎」の政次の姿にも匹敵するほどに切ない。果たして、平野の大きな決断の行方は…!?
時を超えたラブストーリーがこれほどまでに胸に迫るのは、真剣に恋をした2人の不器用なまでに相手を思う気持ちに共感できるから、前を向いて生きるために大切なことを教えてくれるからなのかもしれない。最高のラスト20分を、ぜひ劇場で!

過去の価値をもう一回変え直す、過去に起きた出来事の価値は変えることが出来そうな気がする。後悔ではなくて反省するのか、もう一回改善しなおすのか、これからはこうしてみようということによって、過去に起きてしまった自分にとってネガティブなことを良い価値に変えていくことができると思う。そういった意味でタイムリープは、もしかしたら起きているのかもしれない。
© 松尾由美/双葉社
© 2019 映画「九月の恋と出会うまで」製作委員会