クラシック映画であると同時に13歳の悩める少女の青春物語『神童』レビュー
プロの世界、とりわけクラシック音楽のプロの世界には、かつて神童と呼ばれた人間たちが一堂に会しているイメージがある。コンテストで優勝することなど当たり前、幼くして難曲をマスターすることなど当たり前の元・神童たちが、日夜努力して才能を磨き上げていくのがクラシック音楽のプロの世界なのではないか。そういう意味では、神童と呼ばれて育ったものの、プロの道に立ちきれていない13歳のヒロインの物語は、クラシックの世界を描いた音楽映画というより、悩める少女の青春映画と呼んだ方がしっくりくる。13歳の幼さにして青春映画のヒロイン然としてしまうのもやや気の毒ではあるが、それが大人たちの期待を背負わざるを得ない神童の宿命だ。
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14歳の成海璃子は早熟にして未熟なヒロイン、成瀬うたを凛とした佇まいでみずみずしく演じ上げている。松山ケンイチ演じる音大志望の青年・ワオとの曖昧な関係もいい。神童ではないワオのプライドを神童らしくグリグリ踏みにじることもあれば、ふたりの男女として対等にケンカし合うことも。なかでも目を引いたのは、自分の部屋のベッドの上でウジウジと悩みながら背中を丸めるワオと、彼の足元にちょこんと座るうたの図。ふたりの距離は、まさにそんな感じなのだ。映画の後半、うたに試練が訪れた時も、曖昧だが確かな糸でつながったふたりの関係が鍵を握る。
『神童』は人生の苦悩を大仰に騒ぎ立てもしなければ、恋愛の素晴らしさを高らかに謳い上げもしないが、人間ドラマの名手・萩生田宏治監督らしいホロ苦さと甘酸っぱさが味わえる珠玉の“青春映画”だ。
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