ファッション小噺vol.53 最高にかっこいい勘違い女
最近になって、以前騒がれた恋愛について本音を語り始めた佐藤江梨子。“綺麗ごと”の多い芸能界ですが、彼女からはサバサバとした潔い素直さを感じ、常々、面白い女性だなと思っていましたが、会ってみてつくづくその魅力に納得しました。
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日本人離れした抜群のスタイルは、同性でも目が釘付けになるほど美しい。「その豊かな胸、きゅっとくびれた細いウエスト、すらりと細長い手足は本物?」と、問いたくなるほど。そのスタイル、あまりに理想的すぎるので、フィギュアっぽさがあるのも事実。ただ、そのぶん露出の多い服でも嫌らしくない。それに、物怖じしない性格で、インタビューでも自分の言葉ではっきりと質問に答えてくれるので、うっかり仕事だということを忘れてしまうほど楽しみました。TVドラマ・CM・映画・舞台・執筆活動と、タレント・女優として幅広いジャンルでの活躍も、彼女の頭の回転の速さを証明しているのかもしれません。
これまでにも、彼女ならではのキャラクターを生かしてきた作品は『CUTIE HONEY キューティーハニー』をはじめ数々ありましたが、“面白さ”が一番表現されているのは、公開中の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』と言えるでしょう。
2007年のカンヌ国際映画祭“批評家週間”に正式招待され、フランス人にもウケたというブラックユーモア満載のこの作品。過去に起きたとある事件のせいで、仲が悪くなった姉妹を中心に、家族内バトルが巻き起こるという話ですが、サトエリは、姉=久々に里帰りした売れない女優を演じています。
この売れない女優が、「自分は誰より秀でていて、自分の良さをわからないならアンタが悪い」、「自分が売れないのは人のせい」という考えの、良く言えば自信家、悪く言えば勘違い女という設定。その勘違いぶりは、家族に対する態度、仕事関係者に対するセリフなど、さまざまなところで面白おかしく表現されているのですが、最たるものは、手足の長さや胸の大きさを強調するかのような露出の多いファッション。舞台は北陸の山間部なのにも関わらず、しかもお金に困っているというのに、いつも極めて都会的なブランド物の服を着ているのです。マイクロミニやモード系サングラス、つばの広い帽子をかぶり、畑に囲まれた道を自転車で行く。どこにいても、どんな服をきていても垢抜けている…というのとはちょっと違う。身の丈とか、周囲の環境とかを全く無視した野暮な女なのです。
彼女以外の誰もが、その様子を場違いだと思っているのに、本人はかっこいいと思っているイタさは、一見の価値あり。そんな様子を、何を着てもかっこよくなってしまうサトエリが表現することで、断然面白さと説得力が増すのです。都会に出て行った友人が、里帰りしたときに様変わりしすぎていてネガティブに驚いた…などという経験を持つ人なら、余計に笑えるかもしれません。しかも、彼女は売れない女優…。「この映画を作った人ってなんてイジワル」と思いながらも、つい爆笑。
でも、このイジワルながら的を得た視点、フランソワ・オゾンの『スイミング・プール』に通じるような。だからこそ、フランスでもウケたのかもしれません。ところによっては公開もラストスパートに入っているので、気になったらお早めに!
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