お腹とともに自尊心を膨らませ、たくましく生きる女性の物語『ウェイトレス』
田舎町のダイナーで働くウェイトレスのジェンナは、横暴な夫に支配される毎日。パイ作りの達人でもある彼女は夫のもとを離れ、パイの腕を武器に独立しようとするが、そんな折に予想外の妊娠が発覚し…。
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不幸せな結婚生活に鬱々とするヒロインを主人公にした『ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた』で描かれるのは、妊娠をきっかけに本当の自分と向き合うようになる女性の目覚め。ウェイトレスのジェンナは夫の支配下に甘んじ、人生も諦めモードにあるが、それは周りの状況がそうさせているだけではなく、彼女自身の曖昧さが招いた結果でもある。
そんなジェンナが大きくなるお腹共々自尊心を膨らませ、自分の欲望や恋心を露わにできるほどに自分自身と向き合うようになる。しかも、恋と欲望の対象は、お腹にいる子供の状態をチェックしてくれる産婦人科医のポマター先生。妻として、ないしは母としての自覚を語るのに用いられがちな“妊娠”というシチュエーションを、産婦人科医との禁断の関係を媒介に、ひとりの人間としての自覚の物語に結び付けているのが可笑しくも心憎い。
TVドラマ「フェリシティの青春」でゴールデン・グローブ賞主演女優賞に輝いたこともある人気実力派女優、ケリー・ラッセルが、ヒロインをコミカルかつチャーミングに好演。監督、脚本の故エイドリアン・シェリーは自身が妊娠、出産したときの体験を基に物語を書き上げたそうだが、ケリーもアメリカでの本作公開後に出産し、1児の母となったのがこれまたおもしろい。
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