サミット開催にちなんでvol.3 公開から21年。再び『風が吹くとき』
7月のサミットでは、環境問題が大きな関心事となっていましたが、世界の首脳たちが集まるたびに、重要事項として議論されているのが世界の非核化。特に朝鮮の全面的な核廃棄をはじめ、各国に散らばる核をいかに減らしていくかに首脳たちは知恵を絞っています。もちろん、核保有国それぞれが、にらみ合いながら駆け引きを行っているのですから、なかなか状況は変わらず。核の脅威が相変わらず世界にはびこっていることを考えると、21年前に比べていったい何か変わっているのかと疑問を感じずにはいられません。
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“21年前”に言及したのは、それが核戦争を描いた衝撃的なアニメーション作品『風が吹くとき』が発表された年だったから。これは、心温まる絵本の名作「スノーマン」で知られる世界的絵本作家、レイモンド・ブリッグズによる同名作品が原作。1982年に出版されると、瞬く間に大きな話題となりました。
アニメ版では、音楽をピンク・フロイドの元メンバー、ロジャー・ウォーターズが手がけ、主題歌を歌ったデヴィッド・ボウイをはじめ多くの大物ミュージシャンが参加したことでもかなり話題になりましたが、やはり内容の衝撃性が印象的でした。アニメというスタイルをとりながら、イギリスの田舎に住む年老いた夫婦が、核爆弾の影響を受け、次第に死へと向かっていく姿をリアルに描いていきます。
映画が公開された1987年は、チェルノブイリ原発事故の翌年。そんな悲劇も重なって、人々の心に強い平和への想いを植えつけた作品です。劇場外でも広く紹介されたので、子供の頃に学校や公民館などで観た記憶のある方もいるのではないでしょうか。そんな『風が吹くとき』が今年、デジタルリマスターで復活。その鮮やかな色彩は、当時感じた核への恐怖と、平和への想いをも鮮やかに蘇らせてくれるはずです。
それにしても、この作品がいまも鮮烈さを保っているのは、世界がいまも21年前と同じ問題を抱えているからなのかも。それはあまりに悲しいことではありますが。
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