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暗殺者、そして逃亡者——見たことのない“東京”を駆ける椎名桔平が背負った孤独

舞台は東京。だが、スクリーンに映し出される街並は、見知ったはずの東京でありながらどこか知らない異国の地の裏街のような雰囲気を漂わせている。ターゲットを全て自然死に見せかけて殺害する暗殺のプロでありながら、罠に堕ち、当局に追われる身となったジョン・レインはこの街を疾走する——。演じるは、椎名桔平。ジョン・レインの知的で冷たい一面と、時折、垣間見せる人間味あふれる部分を見事に演じわけ、さらに激しいアクションシーンもこなした椎名さんに『レイン・フォール/雨の牙』の魅力を聞いた。

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『レイン・フォール/雨の牙』 椎名桔平 photo:Yoshio Kumagai
『レイン・フォール/雨の牙』 椎名桔平 photo:Yoshio Kumagai 全 5 枚
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舞台は東京。だが、スクリーンに映し出される街並は、見知ったはずの東京でありながらどこか知らない異国の地の裏街のような雰囲気を漂わせている。ターゲットを全て自然死に見せかけて殺害する暗殺のプロでありながら、罠に堕ち、当局に追われる身となったジョン・レインはこの街を疾走する——。演じるは、椎名桔平。ジョン・レインの知的で冷たい一面と、時折、垣間見せる人間味あふれる部分を見事に演じわけ、さらに激しいアクションシーンもこなした椎名さんに『レイン・フォール/雨の牙』の魅力を聞いた。

ラストシーンの選択に、背負ってきた人生がにじみ出る

米海軍の秘密工作員として数々の作戦に携わってきた過去を持つジョン・レインを演じる上で、監督からは「孤独を背負ってほしい」という注文がつけられたという。
「映画には描かれない、ジョン・レインのバックボーンについても、監督と一緒にかなり詳細に作り上げていきました。その上で感じたのは、彼が常に抱えている葛藤ですね。人間的なふるまいをしたいと思う半面、拭いきれない過去の傷を持っていて、他人の優しさを受け入れられない。自分のルール、信じる道に沿って歩き続ける中で、殻をまとって生きているんです。みどり(長谷川京子)と出会うことで、その殻を破りはしないんだけど、少しずつ違った表情を見せるようになる。彼の中に内包された、相反する感情をそこで出すようにしました。孤独、ということに関して言うなら、最後のみどりとのシーンでの彼の選択には、彼が背負ってきたものが出ているのかな、と思いますね」。

原作者のバリー・アイスラーは元CIA工作員であり、企業弁護士として日本に滞在した経験もあるという異色の経歴の持ち主。また、マックス・マニックス監督はオーストラリア出身だが、日本での滞在経験を活かして『トウキョウソナタ』の脚本も手がけている。日本への造詣の深い彼らが持っている東京に対する独特の視点は、椎名さんをかなり刺激したようだ。
「純粋に新鮮でした。外国人の目を通して映し出される東京、というのが映画の特徴になっているんですが、おそらく彼らは、ランドマーク的な東京の名所に全く興味がないんですよね。『どこだよ? ここ』って感じの所にばかり興味を示して…(笑)。外国の人間が脚本書いて東京を撮って、僕らは英語をも操って、というのは自然かどうかで言えばやはりどこか不自然ですよね。だから当然、少しずつギャップが生じてくる部分はあるんだけど、それを埋めていく作業というのがまた新鮮でしたね」。

では、椎名さん自身は東京という街をどのように捉えているのかというと…。
「何でもあって…あり過ぎる街かな。政治も文化も経済も全部が集中している街なんて世界中探してもここしかないですよ。そこですごいエネルギーが生じるんだけど、複雑になり過ぎて風通しが良くないんですね。逃げ出したくなりますよ」。

ゲイリー・オールドマンから学んだ「“揺れながら演じる”自由」

そして、刺激という点で忘れてはならないのが、ジョン・レインを追い詰めるCIAの局長・ホルツァーを演じたゲイリー・オールドマンの存在。ゲイリーに話が及ぶと、椎名さんは笑みを浮かべ「20代の頃はかなり彼の演技に感化されましたね」と明かしてくれた。
「『レオン』の悪徳刑事に『JFK』のオズワルド、『シド・アンド・ナンシー』のシド・ヴィシャス…。僕自身、ファナティックな役を演じることが多々ありましたから、余計気になる存在だったのかもしれません。初対面の印象は気さくでユーモアがあって、スマートな方だな、と。スタジオ入って、カメラが回り始めると急にテンションが上がるという風でもなく、ナチュラルに役に同化していく感じでした。それから、覚えているのは、考えている様子で何かを見ているフラットな眼差し。彼の役作りを口で説明するのは難しいんですが、きっちりと線を引くのではなく、ぼんやりとした形を描いていく。その輪郭が自身の感情によって自由に変化していく感じ。普通ならしっかりと決めてしまう部分を決めずに、揺れながら演じる自由さがあるってことを教わりました」。

「もしかしたら、僕と似ているのかな、という気はしますよ…次元が違うだけ(笑)」。冗談交じりにゲイリー、そして自らについて語る椎名さん。だが、2人の直接対決の場面では、ゲイリーと共に短い時間の中に緊張感と烈しさを含んだ、クライマックスと呼ぶにふさわしい空気を見事に作り上げている。これまでにない、新たな形で日本と海外の才能が集結した、その中心を躍動する椎名桔平に注目してほしい。

《photo:Yoshio Kumagai》

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