汚名を背負った、あの大統領の真の敵とは? その人間像を丸出しにする『ブッシュ』
第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュの半生を、社会派の巨匠オリバー・ストーンが映画化。出来の悪い学生として酒とパーティに明け暮れ、挙句の果てには警察に逮捕されたこともあるイェール大学時代に始まり、職を転々とした末にテキサス州知事を経て大統領に就任、さらには9.11同時多発テロに直面した後イラク攻撃に踏み切るまでの過程が、コメディともシリアスドラマとも取れる独特の調子で語られていく。
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2期を務めた大統領の伝記映画であるだけに、本来は社会派色の強い作品になってしかるべきだが、本作で良くも悪くも目を引くのは“人間”たるブッシュの内面。偉大だと信じ、越えなくてはならない壁として脅威に感じていた父親への不満、愛情と背中合わせにある憎しみ、父に愛される優秀な弟の存在も手伝って肥大した劣等感が、典型的な家族ドラマの枠の中で見つめられていく。しかしながら、オリバー・ストーンがあえて家族ドラマとして見せた物語は、世界の未来にも影響する歴史の1ページとして語られるものでもある。大統領と言えど人の子ではあるが、家族ドラマのもたらす悲劇が国家レベルで処理されることの恐ろしさと馬鹿馬鹿しさが本作にはあり、だからこそ私たちの目にはこの作品がコメディにもシリアスドラマにも見える。
父はエミー賞受賞の名優ジェームズ・ブローリン(ちなみに、彼はTVドラマ「ザ・ホワイトハウス」に共和党の大統領候補役で登場し、民主党の大統領候補に敗れる展開を演じている)、継母はオスカー女優のバーブラ・ストライサンド、妻はダイアン・レインというジョシュ・ブローリンが、主人公たるブッシュの心の内を巧演。アカデミー賞にはもう1本の出演作『ミルク』で候補入りを果たしたが、本作の演技も考慮されての結果だと思う。
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