【シネマモード】映画『カラカラ』に人生を学ぶ "シンプルな生き方"の選択

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『カラカラ』  -(C) 2012 KARAKARA PARTNERS & ZUNO FILMS
『カラカラ』 -(C) 2012 KARAKARA PARTNERS & ZUNO FILMS 全 4 枚 拡大写真
新年がやってきました! 2013年もどうぞよろしくお願いいたします。仕事が始まるこの時期には、今年の抱負を考える方も多いことでしょう。かくいう私もその一人。今年は、「よりシンプルに、よりスリムに」を心がけていきたいと思っています。というのも、この世はとかく単純なものごとを複雑に考える傾向にあるから。シンプルに考えればさほど難しくはないことでも、しがらみや、世間体などを意識することで、何事も難しくなっている、そんな気がするのです。

だからこそ、お正月休みが明けて、そんな“複雑”な世界へと再び戻っていく人々へぜひオススメしたいのが映画『カラカラ』。沖縄を舞台に、親友を失い人生の岐路に立つ初老のカナダ人男性と、家庭内の問題に悩む日本人主婦との出会い、そして国籍、年齢、性別を超えた彼らの友情を描いた作品です。

元大学教授のピエールは、憧れのアジアを初めて訪れ、静かな日々を満喫しています。気功の合宿に参加した後は、残りの1週間を気ままに旅するつもりでした。ところが、偶然街で出会った主婦の純子と意気投合し、やがて、彼女が夫の暴力に悩んでいることを知るのです。翌日、彼を頼って「家出してきた」という純子は、これまで何度も夫から暴力を受けながらも、いままで「家出」、「離婚」を考えてこなかったと言うのですが、ピエールの存在が勇気のきっかけとなったよう。「ちょっとクレイジーなことを考えちゃった」とピエールの旅についていきたいと言い出します。成り行き上、一緒に旅をすることになったピエール。「こんなはずではなかった」とやや不満も抱えながらも、彼女を通して知る日本文化に心が解されていくのです。

時に人は、にっちもさっちも行かなくなった事態をリセットするために、突飛なことをして心のバランスを整える必要があるのかもしれません。ここで言う突飛なことというのは、ある意味では心の声に正直になった末に見えてくるシンプルなことだったりもします。例えば純子は、周囲の目、息子への遠慮、世間体などを気にし過ぎて、良い妻を演じ続けていたわけですが、自分の気持ちを優先したことで、家庭から少し距離を置いてみるというシンプルな答えにたどり着きました。つまり自分を見つめ直すチャンスを得たわけです。人にはいざというときに、思い切ったことをする力があるはず。その力を、ある人は勇気と呼ぶのかもしれません。もちろん、突飛なことをして人に迷惑をかけるのはいただけませんが、自分で責任を取れる範囲内ならば、勇気を振り絞ってものごとを単純化することは人生のカンフル剤にもなるはずなのです。

純子の勇気に感化されるように、人生の喜びを掴みとる勇気を持ち始めるピエールも、「年をとると、馬鹿なことだって気にせずできる」と、最後にはとある突飛なアイディアを実行すべく動き出します。年を取ると守りに入るというのが定説ですが、ここに登場する2人は、年をとるとことでよりアグレッシブになるのが素敵。この物語には、「○○をしたのは○年ぶり」という会話が頻繁に登場しますが、これらのエピソードは、人生を楽しむためには、いくつになっても攻めの姿勢を忘れないことも大切であり、忘れたらいつでも思い出せばいいのだと静かに教えてくれているようでした。

さて、本作のタイトルとなっている“カラカラ”ですが、これは泡盛を飲むための陶製の酒器の名前です。中に陶器の玉を入れると、泡盛がなくなったときにカラカラと音を出すことからそのように名付けられたと言います。どこか乾いていた登場人物たちの人生が、次第に満たされていく様子を暗喩したタイトルのようでもありますが、確かに生きることとは、人生という器をゆっくりと満たしていくことなのかもしれません。豊かに満ちるか、乾いたままかは、いつだって自分次第。劇中に登場するヴィンテージの美しく味のあるカラカラのように素敵な人生になるよう、今年もまた1年充実した年を過ごしたいものです。

(C) 2012 KARAKARA PARTNERS & ZUNO FILMS

《text:June Makiguchi》

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