傑作はアカデミー受賞作だけじゃない! ベルリン金熊賞&銀熊賞作品が2週連続で公開
先日のゴールデン・グローブ賞の発表や2月に発表を控えるアカデミー賞と、世界中から注目を集めている賞レース。しかし、良作がこの2つの賞だけで決するものではないこともまた事実…
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まずご紹介したいのは、ベルリンの壁崩壊の9年前、「シュタージ(秘密警察)」の厳しい監視下で恋に身を捧げたひとりの女性を描き同映画祭で銀熊賞を獲得した『東ベルリンから来た女』。西ベルリンに住む恋人・ヨルクとの幸せな生活を夢見て、東ドイツからの脱出を願う美しい女医・バルバラの姿がサスペンスフルに描かれる。
『善き人のためのソナタ』や『ベルリン・天使の詩』、『グッバイ、レーニン!』と様々な形で描かれてきたこの“ベルリンの壁”崩壊前の時代。シュタージによる命令で一般市民の誰しもが密告する側へと翻る、プライベートなど皆無と言われた旧ドイツ。猜疑心にまみれ、ただ誰かを信じることが、愛するということがいかに難しかったか、ただ1枚の鉄の壁がどんなに固く人々を拒絶したのか、そして最後まで“女”であろうとしたバルバラが下す結末に涙すること必至の感動作だ。
一方、現代のローマにある刑務所を舞台に、囚人たちが繰り広げる劇中劇を名匠パオロ&ヴィットリオのタヴィアーニ兄弟が描いた金熊賞受賞作『塀の中のジュリアス・シーザー』。実際の囚人たちが一般客の前で演劇を披露する演劇実習を更生プログラムに取り入れる、塀(=刑務所)の中で起こる物語を描き出す。
本作で鍵となるのは、囚人たちが劇中で演じることとなるシェイクスピアが残した最大の悲劇「ジュリアス・シーザー」のストーリーだ。この物語が、これまでに裏切り、裏切られを繰り返してきた囚人たちの人生と重なり、いつしか囚人たちには役が乗り移り、徐々に刑務所全体を虚構が飲み込んでしまうところに本作の面白さがある。罪深き男たちが作り上げる“古代ローマ”に刑務所を訪れた一般客たちは盛大な拍手を送り、そして本作を観る者も知らぬ間に歓声を送ってしまうことだろう。
作風は、女性的な『東ベルリンから来た女』と男性的な『塀の中のジュリアス・シーザー』と対照的な2作品。しかし、奇しくも“壁”と“塀”という世界から隔絶された場所で繰り広げられる濃密な人間ドラマが展開していく、この2本の傑作。あなたはどう楽しむだろうか?
『東ベルリンから来た女』は1月19日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国にて公開。
『塀の中のジュリアス・シーザー』は1月26日(土)より銀座テアトルシネマほか全国にて公開。
(C) SCHRAMM FILM / ZDF / ARTE 2012
(C) 2011 Kaos Cinematografica - Stemal Entertainment- LeTalee Associazione Culturale Centro Studi "Enrico Maria Salerno"
《シネマカフェ編集部》
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