『タイピスト!』デボラ・フランソワ インタビュー/キュートに燃える女優魂
6月に開催された「フランス映画祭2013」で、観客投票によって最優秀賞にあたる「観客賞」に輝いた『タイピスト!』。女性の社会進出が始まったばかりの1950年代のフランスで、“タイプライター早打ち”の才能を開花させ…
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「ローズは、現代なら共感を得やすいけれど、50年代当時は変わり者と受け取られたタイプ。父親に反抗して就職する、自由に生きようとする、というのは難しいことだったのよ。女性を取り巻く状況は少しずつ変化していたけど、女性は男性の言うことに従うという風潮で、特に子どもを抱えて仕事をするなんて選択肢はない時代だった」。
デボラ自身の親族の女性たちは、そんな時代に逆らうように生きてきた。役作りのうえで、大いに影響を受けたという。「私の親族の女性は戦前、戦中、戦後と、ずっと働いていたの。美容師をしたり工場に勤めたり。祖母は私の母を女手ひとつで育てたんだけど、曾祖母も働きながら娘(=デボラの祖母)の子育てを手伝っていた。世間からは必ずしも受け入れられはしなかったけど、一所懸命に生きていたの。ローズは仕事も愛する人もちゃんと掴むことができた。それって、とても素晴らしいことだと思うわ」。
ローズは「タイプライター早打ち大会」の地方大会からフランス大会へ、そしてついにニューヨークで開催の世界大会へ出場し、優勝を目指す。その過程で、ロマン・デュリス扮する鬼コーチのルイとの間に愛が芽生えるが、波乱含みで順調には進まない。
「心に傷を負っても、最後まで突き進もうとするローズには共感するわ。ルイだって、自分のために彼女が何かを犠牲にするようなことは望まない。それが2人の愛なのよ」。
ローズや大会出場者の女性たちが持つ競う精神は、女優という仕事にも通ずるものがあるのでは? と聞いてみると、「“俳優という仕事は、オリンピック選手とは違う”という言葉があるの」という答えが返ってきた。
「一つしかない役を勝ち取らなかった人に銀メダルはない。意味がないの。2番目でも200番目でも同じ。そういう意味では、私自身もすごく勝ち気なところはあると思う」。50年代のスター女優のようなシックな装いに、ガッツあふれる女優魂。ギャップが新鮮だ。
それにしても、50年代のフランスは完全に男性優位の社会。やや息苦しいその雰囲気は日本に暮らす女性には馴染みあるものかも…と伝えると、「すごく分かる! 私も何週間か日本に滞在したことがあるから」と大きく頷く。
フランスの女性監督が全編日本ロケで撮り、阿部寛や西島秀俊が出演した『メモリーズ・コーナー』でも主演を務めたのだ。「でも、彼らは家に帰るとちょっと違うみたいね(笑)。外では威張ってるけど、家庭での主導権は女性が握ってる」と笑う。
目下の望みの一つは、日本で日本の映画監督の作品に出演すること。日本映画も好きで、「最近観たのは『歩いても 歩いても』。素晴らしかった!」と、共演した阿部さんの作品を挙げる。もう1本、挙がったタイトルはなんと『バトルロワイヤル』。「フランスでは絶対に作られないタイプの映画だと思う。すごく暴力的だけど、消費社会への問題提起があったり、深遠な内容で。何度も観たわ。ああいう、日本ならではの作品に出演したい。オファー待ってます!」と快活な笑顔で目を輝かせた。
《photo:Mana Kikuta/text:Yuki Tominaga》
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