【ディズニーの楽しい映画の作り方 第3回】ディズニーアニメの鉄則「常にリアルに忠実に」
『美女と野獣』や『ピーター・パン』などのスピンオフ作品を製作し、良作なアニメーションを生み出し続けるディズニーの新たな顔となる――ディズニー・トゥーン・スタジオ。アメリカ・ロサンゼルスにある…
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第3弾は、『プレーンズ』の“アニメーション・ディレクター”を務めたシェリル・サケット。40~60人と大所帯のアニメーター部隊を率いる敏腕指揮官だ。しかし、彼女から受けるイメージは柔らかく、その中に凛とした“デキ女”を思わせる眼差しが印象的。そんな彼女が自身の仕事を通して見えてきたのは、ディズニー・アニメーションの変わらぬ理念だった。
――まず始めはこの質問から。「What kind of work is an Animation Director?」(“アニメーション・ディレクター”ってどんな仕事?)。
シェリル:これまで長きにわたってディズニーの歴史があって、その流れの中で2Dから3Dへと移っていったけど、基本的なアニメーションの作り方はずっと一緒なの。キャラクターが伸びたり、縮んだり、またリアクションが違ったりしても基本の部分は変わらないのよ。
――そう言って、彼女が見せてくれたのは創始者ウォルト・ディズニーが残した手法で、スタジオジブリなどでもアニメーション制作に用いると言われている“ストーリー・ボード(連続したイメージスケッチ)”。そして、これは第2弾(※参照)で紹介した、“ストーリー・アーティスト”のアート・ヘルナンドたちが何度もボツをくらいながら作り上げた渾身のものだ。
シェリル:私たちの仕事は、この“ストーリー・ボード”が出来上がってから始まるの。最も重要なことは、キャラクターたちの感情はもちろんだけど、“マテリアルの真実”を伝えることなの。例えば、私たちが“鉄”を描いた時に、それがちゃんと観客に“鉄”として見えないといけないの。つまり、ぐにゃぐにゃ曲がったりしてはいけないの。だって、それは真実ではないでしょ(笑)?
アニメーションだからこそ、すごくリアルであることにこだわって作っているわ。縮んだり伸びたり、そういった表現は『プレーンズ』にもあるけど、それは機体と車輪を繋ぐサスペンションで表現しているの。人間の腕だったり足だったりとは違って、この作品ではそういった制約が多かったけど、それでもそこに妥協はないの。「常にリアルに忠実に」よ。
――アニメーションからイメージすることと言えば、「想像の世界」「思い通りの世界」と思いがちだが、ディズニー作品の根底にあるのは徹底した「リアル」。それはむしろアニメーションであるからこそ、そこの一線を越えないようにディズニーのアニメーターたちは描いているという。もちろん妥協のない分、時間もかかるだろう。最初に見せてくれたストーリー・ボード10数枚分のワンシーンを作るのに、どれくらいの時間がかかるのだろう?
シェリル:ストーリー・ボードの状態から、テストCG(クレイ・ホール監督に見せるチェック用のアニメーション)にOKが出るまでクオリティを上げるだけで大体2週間はかかるわ。その間には10回くらい監督と話し合って、また作り直して、またチェックして…その繰り返しなの。
最初にアニメーター一人一人に、“ここからここまでがあなたの担当”という風に各シーンの担当が割り振られるの。それを各人が、十数秒のシーンに細かく分けて少しづつ、少しづつ作り上げていくのよ。感情を表すために、サスペンションを伸ばしたり縮めたりしてポーズを試しては作り変えて、最後にリップシンク(キャラクターの口元の動き)を調整していくの。これを1日中やっているの。
――主人公・ダスティだけでも動かせる部分は、体に30か所、顔の部分には100以上ものポイントがあるという…まさに途方もない細かい作業。その微細な変化を研究し、話し合い、監督のチェックを経て、さらにまた次へ。何事も積み重ねとはいうものの、チームのリーダーとして職人として、さらにあふれんばかりの笑顔を湛える美しき女性として、輝くシェリル。そのプロフェショナルな姿に感服!
《シネマカフェ編集部》
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