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『ザ・イースト』は実在のモデル事件がゴロゴロ! 米在住・町山智浩が斬りこむ!

日本ではなじみの少ない“環境テロリスト”を扱った映画『ザ・イースト』の公開を前に1月24日(金)に行なわれた試写会に、アメリカ在住の映画評論家でコラムニストとしても活躍する町山智浩が来場。劇中の描写について詳しい解説を加えた。

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町山智浩/『ザ・イースト』試写会
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日本ではなじみの少ない“環境テロリスト”を扱った映画『ザ・イースト』の公開を前に1月24日(金)に行なわれた試写会に、アメリカ在住の映画評論家でコラムニストとしても活躍する町山智浩が来場。劇中の描写について詳しい解説を加えた。

環境汚染や健康被害をもたらす企業を狙い、過激な報復活動を行う環境テロ集団“イースト”。元FBIエージェントのサラは、クライアント企業を守るためにイースト内部への潜入捜査を命じられるが、彼らの活動や企業の理不尽な行為を目の当たりにし、徐々にイーストの理念に正当性を感じるようになり…。

本作は「LA TIMES」紙による「2013年 最も過小評価された映画」で1位に輝き、町山さん自身も2013年のベストテンの1本に選出。特にL.A.を拠点に活動する町山さん自身の目線で、映画内の描写について解説が行われたが、驚くべきことに映画内のほとんどの事件や団体、この物語の主軸とも言えるエピソード自体、実在の組織や実際の事件をモデルとしているという。

民間の情報調査機関…つまり言い方を変えれば、スパイ機関と言える「ストラトフォー」の存在、そのストラトフォーが大企業の依頼を受けて活動家の動向を探っていたという事実を暴いた「ウィキリークス」、実際にハッキングを仕掛けてメールを盗み出した「アノニマス」などなど、実在の組織について、町山さんは丁寧に解説を加え、それらの事件が劇中にも反映されていることを明かす。

特に映画『Vフォー・ヴェンデッタ』でもおなじみのガイ・フォークスのマスクをかぶった活動集団「アノニマス」のメンバー、ジェレミー・ハモンドがストラトフォー内に潜入し、その内部の実情を告発した事件が取り入れられている点に関して、町山さんは「事件が起きたのは2年くらい前で、すでにこの映画の製作は始まっていたはず。実際に起こったことをすごい早さで取り入れている」とその姿勢に対し驚嘆と称賛を隠さない。

また、映画の描写については「イーストがやっていることの善悪や是非を判断はせずに作られていて、たとえばテロを起こすにせよ、そこで働いている一人一人に罪はあるのか? というところまで描いてる。どっちかを一方的に悪とするのではなく、考えさせる作品になっている」とも。

“環境テロ”という言葉に関しても、町山さんは「それがテロなのか、単に活動なのかは一概には言えず難しい」とも語る。

最近の“事件”として「例えば最近、サンフランシスコ周辺では、グーグルやアップル、ツイッターなどの会社の従業員で高収入の人々が集中的に住んでいるために地価が上がり、その分、家賃も上がって2LDKが35万円にもなった。これに抗議するために彼らの通勤のバスの運行を邪魔する活動が行われているけど、これも“テロ”と言えなくもないけど、難しい。ただ、アメリカでは何か問題が起きればすぐにこうした運動が起こる」と語る。

また、この日はツイッターで寄せられた質問に町山さんがその場で答えたが、こうした活動団体の資金源について質問が飛ぶと「実は有名な人たちが金を入れていたりする」と明かす。例えばかつて、ジョン・レノンがテロリストに資金提供をし、それをきっかけにCIAに目を付けられることになった事件などを紹介(※この事件は映画『バンク・ジョブ』として公開された)し、観客を驚かせていた。

こうした問題や活動に対する日本と欧米各国の違いについても話はおよんだが、町山さんは「アメリカでは“政府の企業化”が問題となっていて、政府が大企業のために動くのが当たり前になっている。それはロシアや韓国や中国でもそう。一方で日本は安倍さん(首相)が初めてアフリカに行ったけど、ほかの国と比べて10年遅い。電気自動車を作るためのリチウムの確保も中国かボリビアにしかないけど、日本は(政府の人間が)なかなかボリビアに行かない。TPPも、あれはアメリカ政府が企業の奴隷になって進められていることだけど、日本だけ(企業と政府の足並みは)バラバラなんです」と説明。

映画で描かれるように、政府が企業の走狗と化しているアメリカの現状を踏まえ、日本の現状について「それはそれで良いことなのかもしれないけど、日本だけが取り残されることにもなり得る」と問題提起。観客は最後まで町山さんの濃い解説に興味深そうに耳を傾けていた。

『ザ・イースト』は1月31日(金)よりTOHOシネマズシャンテ、新宿シネマカリテほか全国にて公開。

《シネマカフェ編集部》

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