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【シネマモード】ピエール・ニネ、「イヴ・サン=ローラン」から感じる“エレガンス”

伝説的ファッション・デザイナーの生涯を描いた映画『イヴ・サンローラン』で、亡き“モードの帝王”に扮し、そっくりだと話題になっているピエール・ニネ…

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『イヴ・サンローラン』ピエール・ニネ/photo:Nahoko Suzuki
『イヴ・サンローラン』ピエール・ニネ/photo:Nahoko Suzuki 全 12 枚
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伝説的ファッション・デザイナーの生涯を描いた映画『イヴ・サンローラン』で、亡き“モードの帝王”に扮し、そっくりだと話題になっているピエール・ニネ。彼自身も、11歳で初舞台を踏み、史上最年少の21歳という若さでパリの名門国立劇団コメディ・フランセーズの準座員になったという早熟の天才です。今年でまだ25歳。いったいどんな素顔の持ち主なのか気になって、来日したピエールに会いに行ってきました。

取材場所に現れた彼は、映画よりかなり若々しい印象。落ち着いた雰囲気はそのままに、時折見せる笑顔に20代らしい無邪気さを感じさせる美青年です。

――映画ではスーツをエレガントに着こなしていましたが、もともとファッションには興味が?
「実を言うと、映画に出演する前は、イヴ・サンローランのことも、ファッションのことも少ししか知らなかった。5か月半の準備期間があったから、その間にいろいろ学び、発見したんだ。今は、興味はあるよ。ショーの最前列に陣取るというような興味の持ち方ではないけれどね(笑)」

「リサーチしながら、イヴ・サンローランはもちろん、ほかの偉大なクチュリエ、例えばクリストバル・バレンシアガ、ココ・シャネル、カール・ラガーフェルドについても学んだから、ファッションというのはアートであり、クラフトマンシップであり、集団的に行う芸術、つまりコレクティブアートなんだということを学んだんだ」

――では、本作を通して、あらためてフランス文化のひとつであるファッションに誇りを持つようになったのでは?
「そうだね。ファッションというのはフランス人にとって大切なものでもあるし、イヴ・サンローランという存在はファッションを超えて、世の中の流れにひとつの革命を起こした人物でもある。女性に解放、自由をもたらした人物だし、フランス人ファッションクリエーターとして、博物館、美術館に展示されるような作品を始めて作ったからね。ファッションもメジャーアートになり得るということを示した人物だと思うよ」

――そんな偉大な人物を演じるにあたって、最も大きな挑戦だったことは?
「18歳から46歳を演じたので、経年を表現しなければならなかった点だね。メイクの助けもあったけれど、動きや話し方のリズムはもちろん、自己破滅の道を歩んでいく彼の心理的、肉体的な変化を表現することも心がけたよ」

――実在の人物を演じたわけですが、サンローランを知る人、ファンを納得させつつ、これまで私たちがあまり知り得なかった部分も表現しなければならなかったわけですから、難しさもあったのでは?
「確かにサンローランを知っていた人は今でもいるけれど、そんなに多数ではないし、彼らはこれが映画なのだと分かってくれたと思う。ウィキペディアのページを書いているわけでもなく、現実に起きたことを何もかも入れるのが目的ではないとね。もちろん、現実のサンローランに近づくことは大切だったけれど、これはあくまでも、ジャリル・レスペールというひとりの映画監督が自ら選んだ視点で描かれている映像作品なんだ」

「特に監督が強調したかったのはサンローランとパートナーであるピエール・ベルジェのラブストーリーと関係性。監督が例としてよく話してくれたのが映画『アマデウス』だった。モーツァルトという天才を、サリエリというひとりの凡人の視点から描いている作品だけれど、本作ではイヴ・サンローランという天才をピエール・ベルジェの視点から描いている。違うのは、サリエリとモーツァルトは嫉妬関係にあるけれど、イヴとピエールの場合は愛情関係にあるという点。この作品は、あくまでもそこに視点を置いて関係性を描いているんだ」

――ベルジェ氏は一切、作品の制作には口を出さなかったと聞いています。
「ピエールはとても協力的で、サンローランに関して、親しい人しか知らないことを語ってくれたんだ。その一方で、こう演じて欲しいとか、こうしろとかは一切言わなかった。そういう意味で、劇中に描かれている姿そのままに、彼はアーティストを助けるということを知っている人物だと思ったよ」

――ジャンルは違いますが、同じ表現者として、サンローランのどんなところに偉大さを感じていますか。
「世の中を観察する力があったということ。何が流行るか、何がモードになるかを読み取って、時代よりも先にクリエートしていたからね。それともうひとつ、不幸にも苦しみも多かった人物だけれど、その中から素晴らしいものを生み出したということころにも敬意を表するよ」

――モードの帝王を演じて、エレガンスを表現してきましたが、エレガンスとは何だと思いますか?
「エレガンスって定義がすごく難しいね。実はさまざまな違ったものの中に存在しうるものだから。例えば、女性はいろいろなやり方でエレガンスを表現できると思う。でも、ひとつ確かなのは、定義は難しいけれど、エレガンスに触れたとき、みんなすぐにエレガンスがそこに存在し、エレガントかどうか分かるということ。では、共通分母は何なのかとは言えない」

「例えば、ジェームズ・ディーンも、イヴ・サンローランもエレガントだけれど、全く別の要素を持っているからね。定義が難しいからこそ、それを皆が貴重だと感じるのかもしれない」

――では最後に、今一番エレガントだと思うもの、人物は?
「バラク・オバマはある種のエレガンスを持っていると思うよ」

映画『イヴ・サンローラン』からも、ピエールの言葉からも、エレガンスとはその正体を探るものではなく、感じるものだと教えられた気がして、あえて「なぜ」とは訊ねずにおきました。言葉ではなく、感覚で知るエレガンス。みなさんも探ってみてください。

《text:Jun Makiguchi/photo:Nahoko Suzuki》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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