【MOVIEブログ】中国映画の傑作2本
2015年も早1か月。今年最初のオススメ作品は『二重生活』と『薄氷の殺人』、中国映画2本です。『薄氷の殺人』は自分の宣伝担当作品でもありますが、色々と共通点があるので、まとめてご紹介します。
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
■『二重生活』『薄氷の殺人』
『二重生活』はダイナミックな空撮で幕を開ける。急激な成長を遂げる現代の中国を捉える映像からは、どこか寂しげな印象を受ける。巨大な高速道路やビルが立ち並ぶ都市で暮らす人々の孤独感のような。そんな浮遊感のある映像から一転、チャラチャラした若者が無茶な運転で一人の女性を跳ね飛ばす事件を強烈でショッキングな描写で見せる。一方、物語の軸となる家庭を持ちながらも愛人との逢瀬を重ねる男の昼ドラ的なドラマが動き始めると、手持ちカメラで男女の落ち着かない心情をダイレクトに伝えてくる。
街や社会を俯瞰する広い視点と人間の心に触れる狭い目線とを巧みに使い分けるカメラが良い。映画の舞台は大都市、武漢。この映画で描かれている二重生活者と巻き込まれる女性たちは、ほんのごく一部にすぎないだろう。オープニングと同じく空撮のエンドロールがまた、その他の無数の人々を思わせ、深い余韻を残す。
『薄氷の殺人』の冒頭は、トラックの荷台に積まれたある男の切断された腕が映し出される。バラバラ死体が石炭工場へと運ばれていくこのオープニング映像は、ただならぬ不穏な空気感をまとい、映画が始まってすぐに異様な日常へと引き込まれる。猟奇殺人事件の鍵を握る美しき未亡人を軸に物語は静かに進んでいく。1999年から2004年へと年代が転換するトンネル、黄色みがかった屋外スケート場、観覧車、白昼の花火など、頭にこびりつくショットが数多い。
プロットだけを見るとベタなサスペンスとも言えるが、ネオンと闇が際立つ照明と多彩なカメラワークによる斬新な映像がこの映画を独創性に富む傑作にまで持ち上げている。具体的な場所は示されないが、舞台は中国北部の地方都市。雪に覆われた凍てつく町で繰り広げられる男と女の理屈じゃない駆け引きを、台詞に頼らず、とにかく映像で語る。
貧富の格差、価値観の崩壊。2作品とも社会の影が遠因となる悲しき殺人をめぐるミステリー。
ロウ・イエとディアオ・イーナン。現代中国を捉える社会性と火サス的愛憎ドラマの娯楽性をバランスよく合わせる手腕は共通する点。映像スタイルは真逆だが、確固たる映画的なビジュアルセンスを持つこの二人の作品は必ず見続けていきたい。
《text:Shinpei Oguchi》
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