【インタビュー】綾瀬はるか 大河ドラマが教えてくれた、ものづくりの感動を糧に挑む「精霊の守り人」
「自信を持てる第1話ができたと思ってます」――。綾瀬はるかは、ほんわかした口調からほんの少しだけ語気を強めてそう語る。NHKの大河ファンタジーとして3年で計22話という長丁場で製作される…
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原作は昨年「鹿の王」で本屋大賞を受賞するなど、いま最も注目を集める作家・上橋菜穂子のファンタジー巨編。帝が統べる新ヨゴ国とその周辺を舞台に、女用心棒のバルサと彼女が偶然救った王子との旅路、追手や魔物との戦いを通じ、知られざる国の秘密、バルサの背負った過酷な運命が明らかに…。
多くの熱烈な読者を持つ原作であり、その主人公を3年にもわたって演じ続けるというのはさぞやプレッシャーが…と思いきや、意外と綾瀬さん本人はあっけらかんとしたもの。
「原作があって人気であればあるほど、みなさんの中にイメージもあって、もともと『綾瀬はるか? 違うでしょ!』と思ってる人も多いでしょうから(笑)」。
見えない不安やプレッシャー以前に、向き合うべきは目の前にある課題――上橋先生から「一番大事にしてほしい」と言われたアクション!
「それ以前から私自身、アクションをもっとやりたいと思っていたので、それがやれるのは嬉しかったです。やってみると大変でしたけど(苦笑)」。
腕立てに腹筋、スクワットなど筋トレを重ね、バルサが持つ短槍の殺陣の訓練を積み、撮影に臨んだが、それでも撮影初日から、心が折れるかというほどのつらい撮影の連続だった。
「稽古だと長くても4~5時間で足場もいいですからね。本番となると朝から晩まであって、足場も砂浜のように踏ん張ろうとしても踏ん張れないような場所で、そこでダッシュしたり…(苦笑)」。
肉体的な負担はもちろん、殺陣に関しては相手との呼吸、集中力も求められる。
「ちょっとしたタイミングや動き次第で怪我してしまう。アクションに関しては、できないと撮影で大変なことになるっていう恐怖感、危機感がありましたね。相手もいるので、自分ができないと危ないし、何度もやり直すことにもなるので」。
そしてもうひとつ、バルサの内面! 「孤独や苦しみ、恨み…いろんな気持ちひとりで背負って、それでも強く生きている」というバルサの烈しさをもって演じ、これまでにない綾瀬はるかの新たな一面を見せてくれている。ここでもヒントになったのは、アクションだった。
「どういうバルサにするか? 声のトーンやしゃべり方はどうするか? 男っぽく表現するか? 礼儀や作法はちゃんとしているのか? 悩んだ時期があったんですけど、アクションをやりながら、獣のように叫んでいる自分がいたんです。いざ戦いになると獰猛な、獣のように襲いかかる――これがバルサなんだ! と掴めた気がして、それは自分でも気づかなかった新しい発見でした」。
シーズン1、さらにシーズン2、3と重ねていく中で、そうしたバルサの過去やより深い内面が描かれていくことになる。大河ドラマ「八重の桜」は1年を通してずっとひとりの役柄を演じるという挑戦だったが、本作は3年にわたり、間に違う作品にも参加しながらの挑戦となる。
「間に違う作品があって自分なりの成長もあったり、シーズン1を見て『もっとこうしたら』と思ったものを取り入れたりできる」とこの変則的長丁場を前向きにとらえる綾瀬さん。やはり「八重の桜」で手に入れた“経験”と“財産”が、女優・綾瀬はるかを大きく変えたようだ。
「それまでは、作品に参加しても、自分は自分の役を精一杯、迷惑かけないようにと心がけ演じてて、いっぱいいっぱいだったところがありました。大河ではリハーサルが週に1回あるんですが、そこではみんなが同じ目線で、どうしたらもっとよくなるかを意見しながら作り上げていくんです。1年間、それを見ていて、ものを作るってこういうことなんだ! と感じました。そこから『迷惑かけないように精一杯』という意識ではなく『私も参加して、みんなで作ってるんだ』と思えるようになってすごく面白いなって。『大河ってすごい!』といつも感動してたんです」。
その喜びを胸に、綾瀬さんはこの大河ファンタジーに挑む。美しい肌をメイクで真っ黒にし、あざだらけになりながら。「家に帰っても(メイクが)なかなか落ちないんですよ! 撮影期間中は白い服着られないですね」と苦笑しつつ、その表情は何とも楽しそうだった。
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