【高杉さと美 BLOG】『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
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
ケイシー・アフレック演じる主人公のリーは、アメリカ・ボストン郊外でアパートの便利屋として働いている。
兄ジョーの突然の死をきっかけに故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーへと戻ってきた彼は、遺言により16歳の甥パトリックの後見人となった。
二度と戻ることはないと思っていたこの町で、過去の悲劇と向き合わざるをえなくなるリー。
彼はなぜ町を去ったのか。なぜ心を閉ざして生きるのか。
父を失ったパトリックと共に踏み出す、小さな一歩の行方は―アッシュ。
もし人が、独りぼっちで生きていくとするならば、胸を裂くような激しい痛みと出逢わずに済むだろう。
そしてまた明日を、1年後を、10年後をも明るく照らすような、確かな希望を抱くこともないだろう。
この映画に登場する人々は皆、痛みを抱えている。 わたしたちもそうであるように。
とりわけリー・チャンドラーが抱える苦悩は深く、それによって彼は孤独の中に沈む日々を送っている。
しかしその苦悩は、彼を取り巻く人々との関わりの中で、哀しくもありながら、時折可笑しく、たくましく、様々な顔を見せる。
暗く冷たいブルーを秘めた水面が、太陽の日差しを受けてきらきらと色を変えるように。
リーが独りぼっちじゃなくて良かった。 大切に想える相手がいて。
たとえ傷ついても、哀しくても、誰かと寄り添って生きる時、哀しみの成分は哀しみ100%ではないから。 そこには必ず温もりがある。
堪え難い痛みに襲われようとも、それが歩みを進めるための力になると信じている。
マット・デイモンがプロデュースを手がけ、第89回アカデミー賞主演男優賞、脚本賞を受賞した本作
公開は5月13日(土)です★
《text:Satomi Takasugi》
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