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【MOVIEブログ】2017カンヌ映画祭 Day6

22日、月曜日。7時20分に外に出ると、本日も晴れ。あとはときどき曇りで、陽射しの強さが少し陰って暑さはあまり感じず、過ごしやすい感じ。

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22日、月曜日。7時20分に外に出ると、本日も晴れ。あとはときどき曇りで、陽射しの強さが少し陰って暑さはあまり感じず、過ごしやすい感じ。

8時半からコンペのヨルゴス・ランティモス監督新作『The Killing of a Sacred Deer』で本日はスタート。気が付けばカンヌ常連監督の仲間入りをし、毎回人を喰った内容で驚かせるランティモスの新作は今年のカンヌの期待の1本だ。

結果は、見る者の期待に半分は応え、半分は態度を留保させるものになった、かな…。ただ、内容には全く触れないほうがいいので、その理由を書くのが難しい。外科医の男とその家族を巡る不条理劇、と書くのが精いっぱいだ。監督がギリシャ出身であるからギリシャ悲劇を連想することも許されそうだけれど、具体的な引用元があるのかどうかは分からない。ただただ不穏で不気味な空気で映画が包まれていく…。

外科医にコリン・ファレル、その妻にニコール・キッドマン。配役はメジャーで、画面もお金をかけた端正なメジャー映画のそれだけれども、ハリウッド映画の明快さは無く、展開する世界観はヨーロッパの作家映画特有の暗闇だ。僕はパゾリーニを連想するのだけれど、どうだろう。

いや、これは見てもらうしかない。良い点も悪い点も書けない。書けるとしたら、不穏な展開の中心となる少年を演じた役者は主演男優賞候補だということで、とんでもなく気持ち悪い。あの上手さはすごい。

続けて11時から「ある視点」部門で『Until the Birds Return』というアルジェリアの作品へ。短編連作集と呼ぶべきか、ひとつのエピソードが終わると、その最後に登場した人物のエピソードにリレー的に繋がっていく構成を持った作品。狙ったスタイルは嫌いではないけれど、肝心のエピソードがいずれも単調でセリフによる説明も多く、いささか退屈してしまった。残念。

上映終わり、次の予定まで少し時間が空いたのでスーパーでサラダを買ってホテルに戻って食べて、14時から映画会社や映画機関と5件ミーティング。6月以降に完成予定の新作情報を確認し、秋のトーキョーに招待したいと思わせる作品もあったので興奮する。上手く進みますように。

会場移動中にルーベン・オストルンド監督『The Square』の主演俳優に遭遇し、思わず話しかけて面白かったですとご挨拶。スウェーデン映画だけれど俳優はデンマーク人で、いままでテレビが主戦場で映画出演は少ない(本人に直接聞いたわけではなく、映画会社からの情報)。『The Square』で強い印象を残したので、今後も映画でお目にかかりたいと伝えると嬉しそうに笑ってくれた。

夕方上映に戻り、「ある視点」部門のチェコ映画で『Out』という作品へ。予定の16時半開映から30分遅れて17時過ぎに上映スタート。やはりセキュリティー絡みの遅れであるらしく、なかなか今年は大変だ。

工場をリストラされたスロヴァキアの中年男性が仕事を探してエストニアに赴く物語。リアリズムの部分とシュールな部分が交わったテイストは悪くはなく、北東ヨーロッパの現在が垣間見えて興味をそそられるけれども、最終的な印象はまずまずといったところか。

続いて20時15分から、「監督週間」出品で『タンジェリン』のショーン・ベイカー監督待望の新作『The Florida Project』(写真)へ。フロリダのディズニー・ランドの外れに位置するモーテルを舞台にした、破天荒な幼女と母の物語。『タンジェリン』の過剰なテンションをそのまま母娘の物語に注入できる、ベイカー監督のセンス豊かな才能が証明される作品だ。

子役に惑わされることがあってはいけないと日頃から用心しているけれども、憎たらしくもかわいい本作の少女の魅力には抗えない。ちょっとずるいけど、ここまでやられたらもう降参。

一般社会の周縁で何とか生き延びようとする人々を描くベイカー監督のまなざしの温かさは、『タンジェリン』から確実に受け継がれている。爆笑を誘う描写をまぶしつつも、懸命に宿代を捻出しながらモーテルで暮らす他ない人々(実質的にホームレス)を描いて現代アメリカの病を暴き出す。脇を固めるウィレム・デフォーも絶品の存在感。ああ、これはいい。

上映終わって22時半。次の予定に組んでいた作品の時間にはもはや間に合わず、本日は4本しか見られなかったけれども、たまにはちゃんと寝た方がいいかなと自覚し、ホテルに戻って短めにブログを書いて、閉店です。

《矢田部吉彦》

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