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アカデミー賞に向けた賞レースの始まりを告げる、北米最大規模の映画の祭典として名高い「トロント国際映画祭」。本作は、コンテンポラリー・ワールドシネマ部門(Contemporary World Cinema)という「世界的な視野と注目すべきストーリー性を持つ作品」をセレクションする部門に選出されている。
本作の世界初お披露目の舞台となったワールド・プレミアには白石監督が登壇。注目の作品をいち早く観ようと集まった観客で埋めつくされた会場では、泣いている観客も多数みられた。万雷の拍手が鳴り響くなか、現地の観客から日本語で「この映画は凄い、オメデトウ」と声をかけられると、白石監督は「ありがとうございます。嬉しいです」と感無量の様子で挨拶した。
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Q&Aコーナーでは、多くの質問に1つ1つ丁寧に答えていた白石監督は、「個人的には特に(阿部さん演じる)陣治に感情移入をしました。陣治の愛の証明の仕方は誰にでもできるものではないし、心が張り裂けそうな気持ちになりました」とコメント。本作のテーマは「陣治の愛」かと問われると、「それもそうですし、大切なものは常に隣にある。日本の芸能スキャンダルはいま“不倫”が全盛時代を迎えていて、そのニュースが多い中で、真実の愛はフラフラっと来たいい男よりも、僕みたいなブサイクな男にあるんじゃないかと(笑)。それがひとつの大きなテーマです」とも語った。
また、対する十和子役については「原作を最初に読んだときに蒼井さんが思い浮かびました。ほかの人にはオファーしておらず、蒼井優さんじゃなければ成立しなかったと思います」と告白し、「十和子の大事なシーンを撮っているときに、蒼井優さんに『どういう表情していいかわからない』と言われたんです。彼女の人生を想像したとき、『僕は凄い素敵だと思う、豊かな人生が待っているんじゃないかな』と、そう話したら、少しだけ泣きながらも、何とも言えないいい表情をしていた。素晴らしい女優です」とべた褒め。
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主演の蒼井さん、阿部さんの2人をそう絶賛しながらふり返る監督に、時間ギリギリまで質問が飛び交う大盛況ぶり。終了後には、会場の外で観客を出迎えた白石監督が「とても感動した! ありがとう!」とサイン攻め、握手攻めにあう光景も見られるなど、共感度0%、不快度100%の“まぎれもない愛の物語”が、トロントでセンセーションを巻き起こしていた。
日本が誇る実力確かな豪華俳優陣の熱演と、『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』の白石監督が初めて挑んだ本格的な大人のラブストーリー。本映画祭の最高賞となる観客賞(People’s Choice Award)は、期間中に作品を観た一般の観客の投票によって決定するが、過去に観客賞に輝いたのは『ラ・ラ・ランド』『英国王のスピーチ』『スラムドッグ$ミリオネア』など、アカデミー賞作品賞をはじめ数々の賞を総ナメにし、日本でも大ヒットを記録した作品ばかり。邦画作品では北野武監督『座頭市』(’03)が同賞を受賞しており、邦画作品として14年ぶりの受賞の快挙となるか、今後の動向にも要注目。トロント国際映画祭は9月17日(現地時間)まで開催される。
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『彼女がその名を知らない鳥たち』は10月28日(土)より新宿バルト9ほか全国にて公開。