この映画を観て驚くのは、猫と共存しているイスタンブールに住む人たちのあたたかさだ。日本にも神奈川県の江ノ島をはじめ、東京都の谷中、宮城県の田代島、愛媛県の青島、沖縄県の奥武島…など、調べると猫の島、猫の街、猫の聖地といわれる街や地域はけっこうある。
しかもいまは空前の猫ブーム。ペット市場では犬よりも猫の数が多くなり、日本国内で約1000万匹の猫が飼われている。けれど、普段生活するなかで野良猫と出会うことは滅多にない。
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イスタンブールでは、猫は神聖な生き物のように考えられ、そこに住む人たちが野良猫の面倒をみている。街の人と猫との関わりを通して考えさせられるのは、思いやりや感謝の気持ち、助け合うことについて。タイトルにあるように“猫たちに人生を教えてもらう”素敵なエピソードが語られる。
ジェイダ・トルン監督は7匹の猫を映画の中心に据え、彼らの日常を通してイスタンブールの街を映し出していく。
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子猫のために市場の食べ物を狙うサリ、撫でられるのが好きなベンギュ、有名なレストランの守護神としてネズミを狩るアスラン、野良犬からも一目置かれている気性の激しいサイコパス、オーガニック・マーケットのマスコット的存在のデニス、アーティストが多く住む地域で暮らすガムシズ、高級レストランに通う美食家のデュマン。それぞれに愛称があることからも、猫たちがどれだけ愛されているか伝わってくる。
面白いのは、人間の目線ではなく猫の目線で描かれていることだ。ジェイダ監督と撮影監督のチャーリー・ウッパーマンは、さまざまな“猫カメラ”を開発。地上10cmでの撮影、暗い裏通りでの撮影、屋根の上にドローンを飛ばしての撮影など、決定的な瞬間をカメラに収めた。そのカメラで撮影された猫目線の街の風景は、まるで自分が猫になったかのような体験をさせてくれるだろう。
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観光としてのイスタンブールもいいけれど、この映画を観ると、猫たちに会いにイスタンブールに行きたくなる。人と猫のあたたかな交流に触れたくなる。(text:Rie Shintani)