千葉県の高校を卒業後、シアトルに留学したディーンさんは、卒業後まもなくアジアの国々を巡り、香港でモデル活動を開始。2005年、香港映画『八月の物語』の主演に抜擢され、俳優としての道を歩み始めた。その後、拠点を台湾に移して数々のドラマや映画に出演。一方、ミュージシャン活動やクリエイター業にも意欲を見せていく。
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日本でも「あのイケメンは誰?」の声が聞こえ始めたのは、監督と主演を兼ねた日本映画『I am ICHIHASHI 逮捕されるまで』(2013年)や門脇麦&道端ジェシカ共演の『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』(2014年)の頃から。しかし、やはりディーンさんが逆輸入俳優として大きな注目を集めたのは、前述の「あさが来た」で演じた五代役あってのことだろう。主人公のあさを導く実業家・五代友厚が女性視聴者のハートをつかみ、出演終了時に“五代ロス”が起きたのは今更おさらいするまでもない周知の事実だ。
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しかし、ブレイクには反動がつきもので、一度ついたイメージの払拭に苦しむ役者も中には存在する。その点、ディーンさんは“五代後”を実に見事に、迷いなく駆け抜けてきた。結婚詐欺師を色気たっぷりに演じた主演映画『結婚』、そのビジュアルで原作ファンの支持も得た『鋼の錬金術師』など、快進撃は順調に続く。また、“五代ロス”に倣って“ダメ恋ロス”なる言葉も生まれた「ダメな私に恋してください」、武井咲とダブル主演の「今からあなたを脅迫します」、Amazonのオリジナルシリーズ「はぴまり~Happy Marriage!?~」など、ドラマ界にもディーンさんの姿あり。詐欺師、大佐、ドS、脅迫屋、再びドSと、これら5作だけを振り返っても紳士な実業家・五代様のイメージを覆す役柄、それでいて「こんなディーンさんも見てみたかった」と思わせるキャラクターに臨んでいる。
さらに、往々にしてディーンさんの役柄は、その色気なくして演じられないものに思える。実業家然として着こなすスーツ姿も、凛々しくエレガントな軍服も、非常にセクシー。かたや粗野な魅力を放つ役でも、やっぱりセクシー。醸し出す色気がキャラクターの特徴となり、目の離せない物語展開を生む。それは当然ディーンさん自身にも言えることで、世界を見てきた自信をどこか感じさせながらも姿勢は謙虚。私生活を感じさせないスター性を漂わせながらも、良き家庭人として地に足のついた印象あり。相反するイメージをスマートに混在させているのが、ディーンさんの強みであり、色気ではないかと思う。
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そんなディーンさんからまたしても新たな色気を感じられるのが、続々と控える新作たち。5月26日公開の主演映画『海を駆ける』では、海辺で発見された正体不明の男を演じる。舞台はインドネシア。身元が分からず、いつも静かに微笑みを絶やさない男。このキャラクター設定だけで、興味をかき立てられる人は多いはずだ。また、青い海をバックに無造作ヘアとシンプルなシャツ&パンツでナチュラルな佇まいを見せる『海を駆ける』から一転、カチッとスーツ姿のディーンさんも。6月15日公開の『空飛ぶタイヤ』では大手自動車メーカーの社員を演じ、自社のリコール隠し事件に巻き込まれていく。事件をめぐっては、運送会社社長役の長瀬智也と対峙。いずれも大人の男の色気を持つディーンさんと長瀬さんのスリリングなやり取りが見どころだ。
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さらに、4月19日から始まる主演ドラマ「モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-」は、セクシーなディーンさんの全部のせ状態になるかもしれない。アレクサンドル・デュマの「巌窟王」をベースにした復讐劇で、ディーンさんはささやかな幸せの中に身を置く漁師だったにもかかわらず人生が一変し、無実の罪で異国に投獄された挙句、自分を陥れた人間たちに復讐の罠を仕掛ける男を演じる。何とも壮絶な展開だが、漁師のディーンさんも、投獄生活に打ちひしがれるディーンさんも、復讐心を胸に華麗な変貌を遂げるディーンさんも全部見てみたい! ディーン・フジオカをもっとください。そんな声が途絶える日は来なさそうだ。
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