自分とはタイプの違う、破天荒な一護を演じるのは「挑戦だった」と語る福士さんに対して、「絶対、福士くんは一護ができるだろうなと思っていた」と語る吉沢さん。リラックスした雰囲気のなか、行われたインタビュー。それぞれのペースでゆったりと話し、ときおり穏やかに笑い合う彼らの言葉に耳を傾ける──。
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──2016年11月にクランクアップしてから、1年以上かけてCG制作などを行ない完成した映画『BLEACH』ですが、完成版をご覧になられてどのように感じましたか?
福士:若さからくる勢いにエネルギーを感じました。もちろん「制服を着ているから」というのも大きいですが、ルキアとふたりで稽古するシーンなんかは…部活をやっているような感覚もあって、「ああ、青春だなあ」と思いました。演じているときにはまったく意識していませんでしたが、完成したものを観て、そういう爽やかさを「気持ちいいなあ」と感じました。
吉沢:青春感はすごくあったね。あのさ、修行のシーンでルキアをこう…。
福士:うん?(笑)
吉沢:タイヤに乗っけて引っ張るシーンで、ルキアが漫画を読んでるのとか、すごくいいなと思って。
福士:一護の引っ張る力が強くなって、ルキアが漫画を落っことしちゃってね(笑)。
吉沢:そうそう(笑)。「青春だなあ」って感じがして、観ていてすごく面白かったです。
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──CGがふんだんに使われている、アクションシーンにも引き込まれます。
福士:迫力がすごかったです。現場でひとつひとつ丁寧にやっていたものが…「すべてつながると、こんなふうになるんだ」という驚きがありました。
吉沢:現場では見えていなかった…よくわからないでやっていた部分が、CGによって「こんなにすごいことになるんだ」と思いましたし、面白いなと思いましたね。
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──撮影の際、ホロウがああいった形状をしているというのは、ある程度説明されていたのでしょうか?
福士:「キャラクターデザインはこんな感じになります」というのは説明されていましたが…現場では、段ボールになんとなくの絵を描いたものがあったんです(笑)。
吉沢:そうだね(笑)。そんな感じでやってたね。
福士:「こういう感じで、ここにいまーす。それで、これがこう来まーす」みたいな説明だったので、それぞれが頭のなかにイメージしていたものは…おそらく微妙に違っていたと思います(笑)。
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──映像になって、実際に動いているホロウはいかがでしたか?
福士:動物的で、すごくリアルだと感じました。
吉沢:僕も「なんか動物っぽい!」と思いました。
福士:実写だからこその“リアル感”がホロウたちにも出ていて、いい意味で「気持ち悪いなあ」と。それに、現代の街並みのなかに、急にホロウが現れる“ミスマッチ感”だったり…まあ、一護が死覇装 (しはくしょう=BLEACHに登場する死神が身に纏っている黒い袴)を着ている時点でミスマッチなんですが(笑)、その違和感がすごく好きで。(佐藤信介)監督も「それを狙ってるんだよ」とおっしゃっていました。
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──ちなみに、今作のオファー以前から原作を読んでいましたか?
福士:自分は読んでいなくて、出演のお話を頂いてから74巻までを一気に読みました。実は、普段は漫画を読まないようにしてるんです…ハマっちゃって、他のことを放り出して寝る間を惜しんで読んじゃうのが恐くて(笑)。でも、一護を演じることが決まったので、「よし、読もう!」と思って読み始めたらやっぱりハマって、一気に読んじゃいました(笑)。
吉沢:僕はたぶん…連載したばかりのときぐらいから読んでいましたね。それこそ、小学校ぐらいから漫画を読んで、アニメも観て。『BLEACH』で育ったと言っても過言ではないぐらい、すごくい好きな作品なので、今回のお話をいただいたときは本当に嬉しかったです。
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──まさか雨竜を演じるとは思っていなかった?
吉沢:思ってはないですね、まったく(笑)。「そっちか!」って思いましたけどね。話が進んでいくと、たくさん死神たちが出てくるじゃないですか。だから、もし『BLEACH』のキャラクターを演じるとしても、死神たちのなかの誰かかなあ? って思っていたら…雨竜だったという。
福士:ふふふ、クインシーのほうだったね(笑)。
吉沢:うん(笑)、だからそれがすごく嬉しかった。
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──原作を読んで、「一護のここは、特にこだわって演じたい」 と思ったところはありましたか?
福士:ワードとしてパッとイメージがついたのは、「護(まもる)」という字でした。セリフのなかにも「俺が護る」っていう言葉が結構出てくるんですが、一護にとってはやっぱりその部分が大切なんじゃないかなと思いました。母親が死んでしまったのは「自分が護れなかったせいだ」と思い込んで、今度は絶対にルキアを「護りたい」と思う気持ち…そこはまず第一に、大切にしないといけないと思って演じました。
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──一護はヤンチャな面もあるので、普段の福士さんとはかけ離れたタイプなのかな? と感じました。
福士:自分にとって、挑戦ではありました。自分はあんなに明るくなかったり、口調が強いタイプではないので…毎回そういった役をいただくと、「挑戦だな」と思ってやっているんですが。でも今回は原作やアニメなど、ヒントになるような資料がたくさんあったので、それらを読み解いていくことで、自然と自分のなかに一護が入ってきて…それをふまえて、現場で中身の部分を作っていくという感じだったので、「すごく難しくて、悩みに悩みました」というキャラクターではなかったです。
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──原作ファンの吉沢さんは、福士さんが演じる一護についてどう感じましたか?
吉沢:いやもう、かっこよかったですよ。
福士:ははは!(笑)
吉沢:「やっぱりハマってんなあ」って思いましたし。一護の破天荒さみたいなものって、以前ご一緒した『仮面ライダー』シリーズで福士くんが演じていた役(如月弦太朗)にも似ていたので、「絶対、福士くんは一護ができるだろうな」と思っていたから(笑)。そういった性格的なところもめちゃめちゃハマっていましたし、迫力のあるかっこいいアクションで、観ていて面白かったですね。
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──吉沢さんは、雨竜を演じるうえでこだわった点はどこでしょう?
吉沢:まず、「外見をどこまで原作に寄せるか」ですよね。原作の雨竜って、前髪がめっちゃ長いんで…。
福士:たしかに(笑)。
吉沢:エクステとかで原作に寄せたほうがいいのか、「でも、それはやりすぎなんじゃないか?」とかって考えて。結果的にエクステはつけないで、地毛でやったんですけど。あと、外見以外のところでも…雨竜って、話が進んでいくとどんどん面白いキャラになっていくんですよね、ツンデレな可愛いヤツというか(笑)。でも、今回の映画は、そういった部分が見えるところまでは進んでいないので…クインシーという立場で死神と相対する「ミステリアスで、何を考えているのかよくわからないヤツ」というのは、演じるときに意識していました。
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──雨竜が弓を引くシーンもかっこよかったです。
吉沢:弓を引くときに、「かっこ悪く見えないように」っていうのもこだわりましたね。弓のところは完全なるCGなので…。CGと合わせたときに変なことにならないように、かなり練習しましたね。
福士:かなり練習したんだ?
吉沢:うんうん、弓の練習は結構した。
福士:実際に弓を持って?
吉沢:うん。「どれぐらい引くものなのか」とか、「引いたときに、かっこ悪くならないように」とか…肩が上がると、すごいダサくなったりするんですよね。あと、雨竜の制服がすごいピッチリしてるから、弓を引くとズズッと上にあがってくるんですよ(笑)。そういった部分も含めて、かっこ悪くならずに…というか、「かっこよく見えるには、どうすればいいのか」というのは、かなり意識しながら演じていたかもしれないですね。
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──一護もすごい大きな刀だったので、殺陣が難しかったと思いますが。
福士:そうですね。自分、いつも変わった武器ばっかりなんですよ(笑)。
吉沢:ははは!(笑)
福士:『無限の住人』では鎌のような斧で、『曇天に笑う』は鉄扇でしたから、普通の日本刀って…やっていそうで、やってないんです(笑)。でも、今回の斬魄刀がいっちばん大変でしたねえ。重いし、大きいし、長いので…扱えるけど、動きの見た目が地味になっちゃうんです。それをいかに、原作やアニメのあの派手さに近づけるかというのは、アクション部の方々とすごく話し合って、注意しながら撮りました。
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──佐藤監督とは、役作りに関してかなりディスカッションされたのでしょうか?
福士:監督は…口数はそんなに多くないんですが、“ご自分のイメージ”というのをすごく明確に持っている方なんです。なのでその監督のイメージにすり合わせていって、かつ「自分はこうしたいと思います」と意見をさせて頂いていました。
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──一護の髪の色についても、福士さんが提案されたようで。
福士:死覇装のときはいいんですが、制服を着ているときに「髪の毛の色が明かるすぎると、違和感が出るんじゃないか?」と監督はおっしゃっていたんです。でも自分は、髪色に関しては原作に寄せていきたくて。「もうちょっと明るくしてみましょう」と、ブリーチを重ねて、オレンジの色を入れていって…を繰り返しました。そこに関しては、監督と入念に打ち合わせをさせて頂きました。
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──ヒロインについても伺いたいと思います。本作でのルキアは、原作とは少し描かれ方が異なる部分もありましたが、お二人はどのように感じましたか?
福士:自分は「すごく人間的だな」と思いました。死神なんだけど、人を感じる…それはたぶん、杉咲さんが演じているからというのが大きくて。彼女のアプローチの仕方で、原作ともまた違ったルキアを演じられていたので、すごく魅力的だと思いましたし、護りたくなるようなルキアだと思いました。でも、花ちゃんにもルキアにも、芯が強いところがあるので、ぐいぐい言われるとちょっと引いちゃうんですけど(笑)、最終的には「護りたい」と思わせてくれるルキアになっているなあと…。
吉沢:本当にそうだね。
福士:「オマエじゃ、どうにもできねぇだろ! そんな小せぇ身体で!(一護調)」って言いたかったぐらい(笑)、「護りたい」っていう思いと、「芯の強さ」が強く表れたルキアだったと思いました。
吉沢:僕も、「人間的だなあ」っていうのはすごく思いました。誰よりも人間的で…観ていてすごく面白かったし、「かわいいな」って。やっぱり、人間性が溢れているから…まあ、彼女自身がかわいいっていうのもあるんですけど(笑)。本当に素敵なヒロインだと思いましたね。
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──最後に、完成した映画『BLEACH』をご覧になって、改めて「注目してほしい」と思ったところはどこでしょう?
吉沢:アクションシーンがド迫力で、「え? そんな動きすんの?」みたいなことがたくさんあるので、それだけでも観る価値があると思います。それから、それぞれのキャラクターに寄せたビジュアルにこだわっているので、原作ファンの方にも、「観ていて気持ちいいな」って思っていただけるだろうし…青春映画としても楽しめるでしょうし。いろんな角度から刺さる、とても勢いのある面白い作品なんじゃないかなと思います。
福士:すごくこだわって丁寧に撮影したアクションシーンが見ごたえたっぷりで、迫力のあるものに仕上がっていると思います。それから、仲間とか友情といった、人と人とのつながりをすごく感じる作品になっていると思うので、みなさんそれぞれ、どこかに共感できる部分が必ずあると思います。そういう視点で観ていただけると嬉しいです。
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