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初監督・初脚本となるデイモン・カーダシスの実体験とリサーチに基づく本作は、セクシュアル・マイノリティであることによるいじめや、家族でさえ自分のことを理解してくれない孤独や疎外感、家出などの辛い現実の一方で、土曜の夜の教会での新たな仲間との出会い、そして恋愛模様も描かれていく。
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しかし、物語が進むにつれて主人公ユリシーズには辛い経験が続き、現実逃避をするかのようにミュージカル調に歌い上げる空想も同調して増えていく。その空想は教会で出会う仲間たちにも広がり、彼らのダークな人生の中に光が射す瞬間をミュージカルタッチで描いているのも見どころのひとつだ。
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世界的大ヒット中の『ボヘミアン・ラプソディ』や『アリー/ スター誕生』も、音楽が感情を大きく揺り動かすシーンが印象的。本作も、主人公のユリシーズが学校でいじめられたときや、家出をしてストリートチルドレンになってしまったときなど、空想の中で溢れる想いを心いっぱいに歌い上げる健気な姿に心を揺さぶられる。
これは、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で主演のビョーク(移民のセルマ役)があまりにも辛い現実から逃避するときに歌うシーンに、監督自身が影響を受けたからだという。
この度届いた映像でも、学校でいじめられ、さらに追い打ちをかけるかのように家族にはありのままの自分を受け入れてもらえず、遂に家出してしまうユリシーズ。行く当てもなく街を彷徨い、ついには、ホームレスの収容施設に…。人生のどん底の夜、あまりの悲しみに、いつものように前向きな空想を始めると、一緒に寝ていたはずのホームレスたちも、いつの間にかともに踊り始める。
弱い自分に“さよなら”し、自分は“病気なんかじゃない。おかしくなんかない。前に進むよ!”と力強く歌い上げるユリシーズ。すると、一大決心したユリシーズを祝福するかのように、たくさんの色とりどりの花びらが舞い落ちてくる。ユリシーズが歓喜の表情で歌う姿は、人生の新たな1歩を踏み出したい全ての人に勇気と感動を与えるシーンといえそうだ。
『サタデーナイト・チャーチ -夢を歌う場所-』は2019年2月22日(金)より新宿ピカデリーほか全国にて公開。