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【MOVIEブログ】2019ベルリン映画祭 Day4

2月10日、日曜日。昨夜2時半就寝だったのに6時に目覚めてしまうのは時差ぼけの効用。ここぞとばかりにパソコンを開いてたまったメールに少し返信し、朝食を食べて外へ。雨だ! 数年前なら雪になるところなのだけどなあ。雨は憂鬱だ…。

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“God Exist, Her Name is Petrunya
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2月10日、日曜日。昨夜2時半就寝だったのに6時に目覚めてしまうのは時差ぼけの効用。ここぞとばかりにパソコンを開いてたまったメールに少し返信し、朝食を食べて外へ。雨だ! 数年前なら雪になるところなのだけどなあ。雨は憂鬱だ…。

8時15分からマーケット会場に行き、明日の一般上映のチケットを取得するために並ぶ。開場すると、通常3台ある受付カウンターのパソコンの2台が故障しているとのことで、一つのカウンターに人が殺到して朝からプチ混乱。列は出来ているものの割り込みもあったりするので、ちょっと殺伐とした雰囲気にもなり、朝から勘弁してほしい…。

それでも無事に目的のチケットもゲットできて、メイン会場ベルリナーレ・パラストに移動し、本日も9時のコンペの上映からスタート。見たのは、“God Exist, Her Name is Petrunya”(写真)というマケドニアの作品。

今年のベルリンのコンペは賞対象となる作品が17本あり、そのうち7作が女性監督によるもの。女性監督作品を積極的に取り上げて行こうという意識が昨年から各映画祭で盛り上がってきており、ベルリンも重視していることが伺える。本作もその1本で、主題も性差別を扱っている。

30過ぎで両親と同居している無職の女性が主人公。就職面接で侮辱を受けた帰り道、神父が川に投げ入れた十字架を半裸の男たちが取り合いする伝統行事に遭遇し、ヒロインは思わず川に飛び込んで十字架を見事手に入れてしまう。彼女は十字架を自らのものと主張するものの、女人禁制の儀式を汚したと男たちは怒り、警察沙汰になってしまう。しかし法治国家において宗教的慣習を破ったことが逮捕に結びつくわけはなく、その慣習にしたところで性差別と無縁でないわけで、騒ぎは大きくなっていく…、という物語。

主題は硬派であるものの、メッセージはストレートで語り口に淀みがなく、ユーモアもあり、とても見やすい作品に仕上がっている。自信を無くして行き詰った人生を送りながらも、正論をきちんと述べる主人公のキャラクター造形も魅力的で、好感が持てる作品だ。マケドニア映画に馴染みはあまりないけれど、どの国の人も共感できる普遍性を備えている。これはひょっとしたら何らかの賞に絡むかもしれない?

10時半に上映が終わり、場所をメイン会場から隣接するモールへと移し、東京国際映画祭が1月から始めてみたネット配信番組「TIFF Studio」用のベルリンレポート動画を同僚と撮影する(2月14日22時に配信予定!)。いったんホテルに戻って20分ほどパソコンで確認作業をしてから、再び外へ。

12時半からドイツの映画機関が主催するランチに参加。ドイツの若手監督たちと各国の映画祭関係者が交流する場で、マーケット会場の向かいにあるレストランで着席のランチ。ベルリンのドイツ映画部門に出品している監督たちと話が出来てとても有意義な時間だ。お酒を片手の夜のレセプションもいいけれど、ランチというのも頭がすっきりしているし、いいかもしれない。トーキョーでも参考にしなければ。

14時15分に中座し、マーケット会場へ。14時半から18時半までミーティング。スウェーデン、デンマーク、ドイツ、フランス、フィンランドなどの人々と情報交換する。ベルリンでは主に欧米系の会社とのミーティングをこなし、アジア系の人たちとは3月の香港のマーケットで会うのが毎年のパターン。特にベルリンは年初なので「今年もよろしくお願いします」的な挨拶まわりの意味もあるし、各社の年間のラインアップが伺える貴重な機会でもあるので、ミーティングもとても大事なのだ。

18時半にマーケット会場を離れ、数ブロック先の建物を目指して移動し、「パノラマ」部門のパーティーに顔を出してみる。特にパノラマ部門を重点的に見てはいないので(どうしてもコンペ優先になってしまう)お目当ての監督がいるわけではないのだけれど、顔見知りの人が数名いたので少しだけ話をしてから、滞留時間30分ほどで退出。

上映に戻ることにして、映画祭会場のシネコンCinestarに行き、19時45分から「フォーラム」部門の『Serpentarius』というポルトガルの作品へ。アフリカを舞台にしたモノローグと社会的メッセージを含んだ詩的映画。少し一本調子だったかな…。

21時に終わり、メイン会場ベルリナーレ・パラストに移動し、22時からコンペでポーランドのアニエスカ・ホランド監督新作“Mr. Jones”へ。

ウェールズ出身のジャーナリストであるガレス・ジョーンズという男性が、1930年代にスターリンの取材を試みてモスクワに赴き、その過程でウクライナにおける悲惨な飢饉を目撃することになる。当時は飢饉など存在しないとソ連当局は発表しており、世界もそれをうのみにしていた状況の中で、ジョーンズは自らの命を危険にさらしてまでも事実を世界に向けて報道しようとする…。

しっかりと予算を使った完成度の高い作品で、史実に基づく偉大な人物の物語であり、当然ながら商業公開に耐えうる作品だ。ただ、2時間20分は少し長かった。冗長なシーンも目立ち、もう少しすっきりとさせることも出来たのではないかなと思いながら見てしまったことも確か。もっとも、22時からの2時間越え作品は辛いという、こちらの体力的精神的バイアスがあったことは否めないけれど!

ホテルに戻って0時45分。やれやれ本日も終わりというわけにいかない。1時10分から、日本の朝のラジオ番組に生出演。声をかけてもらえただけでも光栄だし、疲れを見せる(聴かせる)わけにはいかない。ベルリンの街の雰囲気や、ベルリン映画祭の特色、今年の傾向、出品されている日本映画、そして注目の作品について、などなど、ベルリン映画祭に関する話題を5~6分話し、無事(だといいけど)終了!

そこからブログを書き始め、ああ、そろそろ3時ではないか。ダウンします。

《矢田部吉彦》

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