内面・外面ともに徹底した役作り
――映画を見れば、きっと観客はあなたの変ぼうに驚くと思います。具体的には、ずいぶんとお痩せになりましたよね?
栄養士と一緒に取り組んだよ。幸運なことに、準備期間はあったから、最初の2ヶ月はカロリーを落としながら、自分でワークアウトした。撮影が始まる2ヶ月前には、栄養士と相談して、特殊なカロリー制限のダイエットに臨んだんだ。正直、とてもきつかった。でも、アーサーは人生に決して満足しておらず、常にもっと何かを渇望している。僕自身も減量を通して、その気持ちは共有できたね。徐々に目標体重に近づき、体つきにも変化が出てくると、筋肉の動きや感じ方にも影響が出てきた。欲望に打ち勝てたという、ある種の満足感で、力が漲ったんだ。そういった過程のすべてが、役作りの大きな要素となったよ。

――衣装もジョーカーという人物を物語るうえで、非常に重要なエッセンスだと思います。衣装デザインを手がけるマーク・ブリッジスとは、『ザ・マスター』『インヒアレント・ヴァイス』(ともにポール・トーマス・アンダーソン監督)でもタッグを組んでいますね。
彼は史上最高のデザイナーの1人だから、僕から何かを評価するとか、そういうものを超越した存在なんだ。もちろん、仕事ぶりはすばらしいけど、そのプロセスは謎に満ちている。ディテールへのこだわりもすごいよ。ポケットの中のハンカチとかね。そうだ、ジョーカーが着るスーツについては、秘密があるんだ。実は序盤のアーサーと、終盤のジョーカーは同じスーツを着ている。色は違うんだけど、それはマークが撮影中、段階的にスーツを染めてくれたんだ。まさにアーサーが、次第にジョーカーへと変ぼうするみたいにね。注意して見てみると、確かにだんだん赤色が鮮やかになっている。初見では見逃してしまうかもしれない繊細なこだわりだけど、キャラクターや作品全体への貢献は計り知れないよ。