>>『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』あらすじ&キャストはこちらから
アメリカ南部を舞台に人生で一度きりの特別な旅に出る冒険物語を描いたのは、本作が長編初監督となるタイラー・ニルソンとマイケル・シュワルツ。2人が書き上げた脚本は、『リトル・ミス・サンシャイン』『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』など多くのインディペンデント映画の良作を生み出してきたプロデューサー陣の心を掴み、映画化が実現した。

監督・キャスト同士が深く関わりあって、本作を作り上げてきたと語るシャイア。とはいえ、いままでは現場でも監督の指示をあまり聞いてこなかったと過去をふり返る。「私は自分のことしか考えられないタイプの俳優でした。私と仕事をしたことのある監督たちに聞けばわかりますが、彼らとの関わりは、ほとんどありませんでした。監督の言うことに合わせようとしなかったし、話もあまり聞いていませんでした。現場が与えてくれるものに心を開くこともありませんでした」。
しかし、今回は自身の中でも一番、監督・キャストと交流したという彼は、「優れた俳優は広い心を持ち、世の中を受け入れるんです。優れた人間も同じです。つまり、優れた俳優や人間というのは、周囲と密接な関わりを持てるんです」と本作を通して得た、新たな考えを明かした。

撮影現場では、ダウン症の青年ザックを演じるゴッツァーゲンが自由に演技できるよう、「まず監督が現場にダンスフロアを用意するんです(笑)。ザックがどこをどう動いてもいいように。共演者はそれに合わせないといけない」とジョークを交えつつ、彼の自由な演技に合わせて柔軟に対応してきたという。
過去に出演した話題作『ニンフォマニアック』での鬼才ラース・フォン・トリアー監督との現場と比べ、「あの映画は技巧的でした。彼の現場にはホワイトボートがあって、私が歩く場所やカメラの位置が書いてありました。だから、この映画とは正反対ですね」と語る。
「フォン・トリアーのあの映画は、彼の独自の手法を取り入れていたので、美的な魅力があります。あれは技巧的なもので、精神的なものではありません。彼は冷たさを好みます。そしてとても重苦しい映画でした。この映画はまったく違います。とても繊細で、温かくて、親しみやすい。重苦しさとは無縁の映画です」と、2作品の違いを分析。そして、「フォン・トリアー監督の作品はその技術に相応しい評価を得たんです。しかしこの映画は、誰も技の名前を知らない、魔法のような作品なんです」と付け加えている。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』は2月7日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて公開。