『ハスラーズ』『スキャンダル』『チャーリーズ・エンジェル』…女性の連帯描く映画のすすめ

3月8日は国連が定めた「国際女性デー」。映画界では、いま、女性たちの“連帯”=シスターフッドを描く作品がひと際注目を集めている。

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『ハスラーズ』(C)2019 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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3月8日は国連が定めた「国際女性デー」。もともとはアメリカの女性労働者たちが参政権を求めてデモを起こしたことが始まり。今日では、女性たちの権利向上や自由と平等をめざし、性差別や性的搾取などに改めてNOを突きつける日、ともいえる。

ところが日本に目を移してみると、男女格差を国別に数値化した「ジェンダー・ギャップ指数」(世界経済フォーラム発表・2019)では調査対象153か国中の121位と過去最低を更新。これまで、一度ならずとも「女のくせに」とか「だから女は…」といった言葉を浴びせられた人も多いのではないだろうか。そんな中、新型コロナウィルス感染拡大防止の影響により、大作の公開延期やチケット払い戻しなどが行われている映画界で、いま、女性たちの“連帯”=シスターフッドを描く作品がひと際注目を集めている。


『ハスラーズ』ストリッパーたちが“家族”となって共闘


『ハスラーズ』(C)2019 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
まずは、「ニューヨーク・マガジン」に掲載された記事「The Hustlers at Scores」を基に、ジェニファー・ロペスがノーギャラで製作・出演したという『ハスラーズ』。ニューヨークのストリップクラブで働く女性たちが、2008年のリーマン・ショックの後、ウォール街のリッチな金融マンから大金を奪った実話ベースの物語。『ジョーカー』や『パラサイト 半地下の家族』と同様の経済格差を背景に、女性たちの連帯・共闘による反撃を見事に描き出している。

その企ての中心となり、ストリッパーたちを取りまとめるトップダンサー、ラモーナを演じているのがジェイローだ。迫力のスーパーボディと猛特訓を重ねたポールダンスを披露する、驚異の50歳。祖母を養うためにストリッパーになったデスティニー(『クレイジー・リッチ!』のコンスタンス・ウー)が、そのパフォーマンスに圧倒されて思わず見とれてしまうように、彼女のゴージャスな毛皮に包まれたくなる人が続出中だ。

『ハスラーズ』(C)2019 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
本作は、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』の影で起こっていたもう一つの現実であり、なぜ彼女たちがそうしたのか、それぞれの事情にも踏み込んでいる。やがて彼女たちは、ラモーナのカリスマ性と包容力に導かれ、共謀して金融マンから大金を奪うことでますます絆を深め、友情というよりむしろ疑似家族のような関係性で結ばれていく。しかし、加護者のようなラモーナの母性は、思わぬ形で破綻のきっかけをもたらすことにもなってしまうのだ。

『ハスラーズ』(C)2019 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
ジェイローはゴールデン・グローブ賞、全米映画俳優組合賞(SAG)賞、放送映画批評家協会賞などで候補に挙がりながらも、アカデミー賞では『アス』のルピタ・ニョンゴや『フェアウェル』のオークワフィナらとともにノミネートから落選。また、本作監督・脚色のローリーン・スカファリアも、ナタリー・ポートマンが授賞式で着用したローブに名前が刺繍されていた女性監督のひとりだった。

つい先日、ジェイローはオプラ・ウィンフリーのトークイベントで初めてこの件に言及し、「キャリア史上最高のオープニング興収を記録した」のだし、「自分であることを証明するのに、アワードは必要ない」と力強く発言したばかり。シャキーラと臨んだ今年のスーパーボウルのハーフタイムショーも圧巻だったジェイロー。そんな姐御が真価を発揮する意欲作には、手垢のついた賛辞や権威は確かに不要なのかもしれない。


『スキャンダル』#MeToo直前の実話を映画化


『スキャンダル』(C) Lions Gate Entertainment Inc.
シャーリーズ・セロンに、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーという人気実力派女優3人が豪華共演。アメリカで視聴率NO.1を誇る保守系テレビ局「FOXニュース」で2016年に実際に起きた、テレビ界の帝王といわれたCEOロジャー・エイルズ(故人)によるセクハラ・スキャンダルの裏側を描く。シャーリーズはプロデューサーとして自分のシーンがないときにも撮影に立ち会い、『マネー・ショート』のアカデミー賞脚本家チャールズ・ランドルフ、『トランボ ハリウッドに嫌われた男』のジェイ・ローチ監督とともに本作を作りあげた。

シャーリーズ・セロン『スキャンダル』 (C)Lions Gate Entertainment Inc.
#MeToo運動の引き金ともいえる、わずか数年前の出来事をもう映画化してしまうスピード感もさることながら、注目を集めたのはカズ・ヒロが2度目のアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞に輝いたシャーリーズらの変身ぶり。シャーリーズは当時のFOXニュースの看板番組キャスター、メーガン・ケリーにそっくりに。ニコールはロジャーに対しセクハラ訴訟を起こしたミス・アメリカ出身のキャスター、グレッチェン・カールソンに、そしてベテラン俳優ジョン・リスゴーがロジャー役になりきった。

マーゴット・ロビー『スキャンダル』 (C)Lions Gate Entertainment Inc.
マーゴットが演じている上昇志向の若手ケイラ・ポスピシルだけは架空のキャラクターで、実際の被害者を複数組み合わせたような人物だという。3人の女性はいずれも美しいブロンドが特徴的。FOXニュースではそれがキャスター採用のデフォルトだったようで、しかもミニスカートにハイヒールの彼女たちの脚が見えるようにガラス張りのテーブルにし、引きで全身を映すよう指示していたのもロジャーだった。

それぞれ異なる立場にいる3人の女性たちが顔を揃えるのは唯一、あの異様なまでの緊迫感に溢れたエレベーターのシーンのみ。その後、同じ階で降りたある者はクビを宣告され、ある者はセクハラの被害に遭うのだ…。

シャーリーズ・セロン『スキャンダル』 (C)Lions Gate Entertainment Inc.
権力を持った男性は密室での出来事に「そんなつもりはなかった」「うそだ」「勘違いだ」などと言うが、劇中にも登場する当事者の女性が見せる恐怖や憤り、悔しさが詰まった涙の意味を理解できる女性は多いはずだ。とはいえ、本作はセクハラ・パワハラ男を撃退して万事解決!一件落着!とはいかない。セクハラや性差別はいまも、そこら中に蔓延している。この瞬間にも同じ思いをしている女性たちがいる。女性たちの反撃を描きつつも、それぞれに守るべきものがある彼女たちが必ずしも一枚岩ではないこと、セクハラの加害者というのはその点を平然と突いてくることにも迫っている。


『チャーリーズ・エンジェル』現代版にアップデート


『チャーリーズ・エンジェル』
上記2作は実話がベースで、現実同様ほろ苦さが残るだけに、スカッとしたいならば締めにはこちらを。1970年代後半、ウーマンリブの流れの中で誕生した「チャーリーズ・エンジェル」が2000年代初めの映画化に続く形で、“エンジェル”のひとりドリュー・バリモアが製作総指揮、『ピッチ・パーフェクト』エリザベス・バンクスが監督・脚本・製作で現代的に、よりスタイリッシュにアップデートされた。

3人の新生エンジェルもまた、女性たちの憧れとなるクールかつチャーミングで強力な面々が集結。『トワイライト』以降、作家性の高いインディペンデント作品を選んできたクリステン・スチュワートは久々の大作出演で、アクションも披露する姿はカッコよさと美しさが共存し、惚れ惚れするほど。演じるサビーナが、ストリート育ちと見せかけて実はお嬢様という設定も効いている。

『チャーリーズ・エンジェル』
『アラジン』でブレイクしたナオミ・スコット演じるエレーナは、当初は保護される対象であり、観客と共に新しいエンジェルたちの世界に誘われる役回りだが、MITを首席で卒業し、今回のキーアイテムとなる新エネルギー技術<カリスト>の生みの親でもある天才エンジニア。

『チャーリーズ・エンジェル』
元MI6のエージェントで、スーパーモデルのようなスタイルから華麗なアクションを繰り出すジェーンを演じるのは、本作が本格的な映画デビューとなるエラ・バリンスカ。戦闘力は抜群だが、時に情にもろいところがあるギャップも魅力だ。

また、悲劇に直面してもクールにやり過ごそうとするジェーンに、監督でもあるエリザベス演じる女性のボスレーが「ハグは大事」とそっと抱き寄せるところは、まるで『ハスラーズ』のラモーナのような姐御感。そんな彼女たちが互いに違いを認め合い、協力し合って悪事を働く男たち(セクハラ野郎も含め)を倒していくさまは実に爽快。

『チャーリーズ・エンジェル』
さらにエンドロールには、“初代”エンジェルのあの人から、トランスジェンダーの女優の代表格、有名スポーツ選手、日本でも人気の若手実力派女優などなど、豪華なカメオ出演が実現しており、最後の最後まで楽しませてくれるのもポイント。

奇遇なことに、この3作品や、スマッシュヒット中の『ミッドサマー』『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』、まもなく公開される『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』にはある共通項が…。もしかしたら、女性たちの“抑圧”からの“解放”と何かしらの関係があるのかもしれない。

《text:Reiko Uehara》

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