神秘的な魔法が満ちあふれていた妖精たちの世界は、科学技術が発達したおかげで、いまや便利な生活が当たり前になり、かつての魔法も消え去ろうとしていた…。
日本公開が待たれる長編アニメーション『2分の1の魔法』の舞台とは、つまり人気タイトルの続編という“便利さ”に頼った結果、持ち味だったオリジナリティという魔法を失ったピクサー・アニメーション・スタジオのことを示唆している。本作はピクサーの魔法を取り戻すための挑戦であり、その旅路の“半歩”を踏み出した作品だ。原題「Onward」には、「前へ進む」という意味合いがあり、文字通り、ディズニー&ピクサー作品を前進させるという意思表明にも受け取れる。
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その心意気は確かに伝わった。ただ、一歩前進と言い切れないのは、『2分の1の魔法』が正反対のコンビが繰り広げるバディもの、亡者に対する過度な思い入れ、クライマックスだけが突然すばらしいといった、近年のピクサー作品の“くせ”から抜け出せずにいるから(結末だけは歴代ピクサー作品として、5本の指に入る感涙ものだ)。
そんな本作を安定のクオリティとして許容するか、「また、これ?」と不満を抱くか。悪い作品ではないだけに、ピクサーらしさが魔法ではなく“呪縛”になってしまう傾向が、ファンにとっては悩ましいところだ。
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Netflixをはじめ数々のライバルが台頭し、快進撃を続ける現在、長年王者として君臨し続けたピクサー・アニメーション・スタジオは、これまで以上に多様なテーマと語り口を獲得していく必要がある。求められるのは、やはりオリジナル脚本の精錬だ。繰り返しになるが、『2分の1の魔法』はその旅路を半歩前進させる佳作であり、未知なる可能性に期待をしたくなるという意味では、重要な一作といえる。