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【レビュー】『ブラック・イズ・キング』ビヨンセが“黒人女性”として放つ最強のエンパワーメント

1年前、超実写版でスクリーンに蘇った大ヒット作『ライオン・キング』に合わせ、ナラ役を務めたビヨンセが「ライオン・キング:ザ・ギフト」というアルバムを発表して話題となった。

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『ブラック・イズ・キング』(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT
『ブラック・イズ・キング』(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT 全 16 枚
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1年前、超実写版でスクリーンに蘇った大ヒット作『ライオン・キング』に合わせ、ナラ役を務めたビヨンセが「ライオン・キング:ザ・ギフト」というアルバムを発表して話題となった。

その「ライオン・キング:ザ・ギフト」(以下、ザ・ギフト)の楽曲の世界観をより広げ、壮大なスケールで映像化させた85分ものビジュアル・アルバムが、7月31日よりDisney+ (ディズニープラス)にて世界同時配信されている『ブラック・イズ・キング』。ビヨンセが製作総指揮・脚本・監督を務め、自らも歌い、踊る。

『ブラック・イズ・キング』(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT「ALREADY」(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT
そこに広がる映像世界は「アフリカへのラヴ・レター」という同アルバムコンセプトのごとく、『ブラックパンサー』にも通じる黒人の歴史やアフリカン・カルチャーの魅力が凝縮され、奇しくも今年「Black Lives Matter/ブラック・ライヴズ・マター」運動の盛り上がりの中で象徴的な作品として輝きを放っている。

85分の壮大なビジュアル・アルバムとしての見どころ




物語は、大自然に抱かれた大河を下っていく小さな命が、聖母のごとく佇むビヨンセのもとにたどり着くところから始まる。「サークル・オブ・ライフ」(命の環)について語るムファサ役のジェームズ・アール・ジョーンズの語り、「より大きな存在の一部になった」と子の誕生を祝福する最初の楽曲「Bigger」からも、『ライオン・キング』の物語を「ザ・ギフト」に参加したアフリカ系アーティストたちとコラボした楽曲によって概念的に表現していくことが分かる。

『ブラック・イズ・キング』(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT「Bigger」(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT
少年から青年になるシンバはやがて誘惑に負け、ヌーの大群を模したバイク集団によって父を失い、南アフリカ出身の俳優ウォーレン・マセモラ演じる存在感たっぷりのスカーの影に怯えながら成長期を過ごしていく。

そして黒と赤、緑の星条旗がはためく中、「自分が何者であるかを思い出せ」とのムファサの言葉に、自らのアイデンティティと誇りを取り戻し、やがて故郷へと帰っていくのだ。

南アフリカや西アフリカでも撮影された雄大な映像の中で、圧巻なのは「Bigger」の「ウェンディーニコル(WENDY NICHOL)」の聖母のようなドレスから、「Already」の「バーバリー(Burberry)」のアニマルプリントのトップスほか、鮮やかな赤や青の原色ドレス、全身ヒョウ柄、『ミッドサマー』ばりの花まみれ、古代エジプトの王女ネフェルティティを思わせるスタイルまで、目まぐるしく変わる衣装やヘアメイクの数々。その絢爛豪華なビジュアルをじっくりと楽しむためだけに何周でもできそうだ。

『ブラック・イズ・キング』(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT「WATER」(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT
先日は、アデルがビヨンセと同じ「マリーンセル(MARINE SERRE)」のボディスーツを着たショットをInstagramにアップしたことも話題となった。

ジェイ・Z&ルピタ・ニョンゴら豪華ゲストが参加


『ブラック・イズ・キング』(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT「Brown Skin Girl」(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT
中盤、シンバがナラと再会するシーンでは、黒人女性へのエンパワーメントを感じさせるMr.EAZIとのコラボ曲「Brown Skin Girl」がフィーチャーされる。なんとそこにはビヨンセの愛娘のブルー・アイヴィー、スーパーモデルのナオミ・キャンベル、ナオミに続く存在として注目を集めている南スーダン出身のアダット・アケチ、アカデミー賞女優のルピタ・ニョンゴらが登場。

さらに、ビヨンセとの確執も伝えられたことがある元「デスティニーズ・チャイルド」のケリー・ローランドと笑顔を見せ、ハグし合う姿も。

そのほか様々な編み込みヘアで登場し、“パールのような肌”を輝かせる全世代の女性たちに心奪われ、ビヨンセ、母ティナ・ノウルズ・ローソン、ブルー・アイヴィー、2017年に誕生した双子の女児ルミと3世代の女性たちが並び立つところも圧巻。ブルー・アイヴィーの歌声も聴くことができる。

なお、少年シンバが故郷と離れて出会う超リッチな一家のシークエンスとなる「Mood 4 Eva」には夫のジェイ・Zが登場。この曲にはチャイルディッシュ・ガンビーノこと超実写版『ライオン・キング』でシンバ役を務めたドナルド・グローヴァーも参加しているが、本作では絶妙な登場の仕方をしている。また、「Water」にはファレル・ウィリアムスが参加している。

女性たちが根幹で支える「Black Lives Matter」


『ブラック・イズ・キング』(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT「SPIRIT」(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT
超実写版『ライオン・キング』で最もテンションが上がったシーンの1つが、ビヨンセ自身による新曲「スピリット」が流れた瞬間だった。成長したシンバが、自分が何者であるか、どんな使命のもとに生まれたかを思い出し、王国へと帰っていく場面で起用されていた。この曲でグッと気持ちが盛り上がったファンは多いはずだ。

そんな「スピリット」はもちろん、「Brown Skin Girl」でのまさに女神のような女性たちの姿からも、脈々と続くアフリカン・カルチャーの美しさ、豊かさを感じとることができるが、奇しくも今年はジョージ・フロイドさんの死亡事件を受け、これまでになく「Black Lives Matter/ブラック・ライヴズ・マター」運動が高まっている。

『ブラック・イズ・キング』(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT「Keys To The Kingdom」(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT
1年前から準備されていた女王ビヨンセが放つ本作が、その集大成のようなエンパワーメントとなるとは…神のみぞ知る偶然か、必然か。しかも「Brown Skin Girl」たち、ビヨンセの専属スタイリストも務める衣装デザイナーのゼリーナ・エーカー、序盤の「Don't Jealous Me」に登場するナイジェリアのアフロポップ・シンガー、イェミ・アラデ、「Keys To The Kingdom」の同じくナイジェリア出身ティワ・サヴェージ、文字通りに力強い「MY POWER」に参加する南アフリカ出身のムーンチャイルド・セナリーといった女性アーティストら、ブラックウーマンパワーがその根幹にあることも忘れてはならないだろう。

『ブラック・イズ・キング』(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT「OTHERSIDE」(C)2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT
「Disney+(ディズニープラス)」公式サイト
『ブラック・イズ・キング』はDisney+ (ディズニープラス)にて配信中。

《上原礼子》

「好き」が増え続けるライター 上原礼子

出版社、編集プロダクションにて情報誌・女性誌ほか、看護専門誌の映画欄を長年担当。海外ドラマ・韓国ドラマ・K-POPなどにもハマり、ご縁あって「好き」を書くことに。ポン・ジュノ監督の言葉どおり「字幕の1インチ」を超えていくことが楽しい。保護猫の執事。LGBTQ+ Ally。レイア姫は永遠の心のヒーロー。

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