その立役者ともいえる調香師の日常を描いた映画『パリの調香師 しあわせの香りを探して』が、フランスの人々を勇気づけている。いくつもの選択肢の中からよりすぐられたエレメントが作用し合い、ひとつの香りとして花開くパルファン。全く違う人生を歩んでいた者同士が出会い補い合うことで、豊かに色づいていく人生。
香水も人生も、「調和」によって完成していくことを、情感たっぷりに映し出したのが監督のグレゴリー・マーニュと主演のエマニュエル・ドゥヴォスだ。2人のいるパリと東京を繋ぎ、映画について、香りについて話を聞いた。
香水と映画の共通点「根本にあるのは作りたいという欲求」
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――コロナ禍の大変な中、インタビューにお答えいただきありがとうございます。お二人は行動制限が多い生活の中で、創作意欲新たにしたのでしょうか?
エマニュエル:もちろんそうです。こういうときだからこそ、映画を作りたいという気持ちがますます強くなりました。今は撮影も再開しています。(2020年12月2日時点)。ただ、制作しても映画館が閉まっていて、映画産業は休止状態。だからグレゴリーも私も、スタート地点でスタンバイしている状態。やりたいという気持ちが深まっている気がします。
グレゴリー:この作品は、最初のロックダウンが解除された直後に公開することにあえて決めていました。映画館を訪れる人たちが観たいのは、こういう作品だろうと考えたからです。実際に映画館に駆けつけてくれた観客が喜んでくれたことは、僕らにとって大きな励みとなりました。
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――映画を見る前は、映画で香りどのように表現するのだろうと思っていました。ところが拝見していくうちに、香水が持つ「様々な要素が混ざり合って調和する」ということの美しさを、人間ドラマにおけるテーマとして強く感じ取ることができました。
グレゴリー:今回一番描きたかったのは、調香師と周りにいる人々の人間関係でした。どのようにすれば、まるで香りが漂っているかのように観客に感じてもらえるかということにも、とても興味がありました。香水と映画にも、似たところあるでしょうね。どちらも行ったり来たりしながら多くの要素を調和させて作るクリエイション。どちらも、根本にあるのは作りたいという欲求です。そして、作ったものがどのように受け取られるかという楽しみがあるところにも共通点がありますね」
――ドゥヴォスさんは、今回、本作のどんなところに惹かれたのでしょう。
エマニュエル:まずは脚本が決め手になりました。すぐに、この物語がとても気に入ったんです。フランス映画ではあまり描かれないタイプの人間関係もオリジナリティに溢れていると思いました。2番目に、調香師という役を演じられることにとても惹かれました。私自身、18歳の頃に調香師という仕事に興味を持ち、学校を調べてみたことがあったんです。今回はすべてのことが気に入り、グレグリーと会ってすぐに意気投合しました。シンプルにとても気持ちよく、わくわくしながらできた仕事でした。
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