そんな彼女にとって、俳優活動のひとつの軸といえるのが「アクション」だ。『ICHI』や「精霊の守り人」等々、多くの出演作でキレのあるアクションを披露してきた綾瀬さんだが、その特性を存分に生かしたあの作品を忘れてはならない。そう、『奥様は、取り扱い注意』だ。2017年にテレビドラマとして製作された本作は、大河ドラマ「八重の桜」で共演して以来「兄ちゃん」「はる坊」と呼ぶ仲の西島秀俊が相手役。元特殊工作員の妻・菜美(綾瀬はるか)と公安警察の夫・勇輝(西島秀俊)がお互いの素性を隠して夫婦生活を送るという物語で、放送時には大いに話題を集めた。
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その『奥様は、取り扱い注意』がこのたび、満を持して映画化。よりスケールアップし、かつツイストのきいた物語が展開する。新型コロナウイルスの蔓延による公開延期を乗り越え、3月19日より劇場公開された本作をフックに、綾瀬さん流の「アクション」「俳優論」などを聞いた。
常に動ける体を作っておくため、自トレを重ねた
劇場版『奥様は、取り扱い注意』は、冒頭から怒涛のアクションが畳みかける「これぞ映画!」な仕上がり。綾瀬さんのきりりと引き締まった表情と、しなやかな身体表現に驚かされる。とはいえ、ドラマ版からは約3年半の時間を経ての映画化だ。3か月前からトレーニングに時間を費やしていたというが、準備は大変だったのではないか?
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「ドラマの頃から、基本的な体幹トレーニングは週に1回くらい、欠かさずに続けていたんです。次(劇場版)があるかもしれないな、とは思っていたので。その後映画化が決まって、撮影が近づいてきたら、トレーニングの時間を増やしました。動ける体を作っておくということは、個人的にやっていましたね」
さらりと語る綾瀬さん。やはり、一朝一夕ではなしえなかったのだ。本作はカリとシラットという実践武術をミックスさせた動きがベースになっており、“止め”や“突き”などを高速で、かつピンポイントに繰り出さなければならない。綾瀬さんは「何もない状態から始めたドラマ版のときは、すごく大変でしたね。それこそ家で腕立て伏せ200回×何セットもやっていましたが、今回は前回の経験もあったので、家での個人練習はそこまでハードではなかったです」と振り返り、経験者の余裕を感じさせる。常日頃から準備を怠らない彼女のプロ意識がうかがえるが、同時に「いまはもうやってないんですが…」と申し訳なさそうに付け加えるところもまた、彼女のキュートな魅力といえよう。
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「撮影前には、対人稽古も行いました。その中で、徐々に体が思い出したり慣れてきたりしたら、相手役の人と劇中で行う動きの“合わせ稽古”を始めましたね。振付のように、覚えないといけない動きが多かったです。並行して、タイミングを合わせたりスピードに変化をつけたりちょっとずつ調整して、動き自体が完成したら何回も何回も練習して、本番で怪我がないように精度を高めていきました」
言葉で聞くだけでも大変そうだが、撮影は夫婦そろってのアクションシーンからだったという。「いきなり山場のシーンというのはさぞかし大変だったのでは?」と聞くと、「アクションが先だったから、夫婦の本気がアクションに乗って、そのうえでこの夫婦ならではの会話のやりとりができたのかなと思います」と何とも頼もしい答えが返ってきた。