若手教師のウゲンは、ある日教官からブータンの秘境、ルナナにある学校に行くよう告げられ、ミュージシャンという夢を抱きながらも、渋々ルナナ村に行くことに。1週間以上かけ辿りついたその地には、「勉強したい」と真っすぐな瞳で彼の到着を待つ子どもたちがいた。慣れない土地での生活に不安を拭えなかったウゲンだったが、村の人々と過ごすうちに自分の居場所を見つけていく――。
各国の映画祭で絶賛され、第93回アカデミー賞国際長編映画賞ブータン代表に選出された本作。舞台となる標高4,800メートルの地にあるブータン北部の村ルナナで暮らすのは、大自然とともにある日常に幸せを見つけ生きる大人たちと、親の仕事の手伝いをしながらも、学ぶことに純粋な好奇心を向ける子どもたち。写真家としても活躍するパオ・チョニン・ドルジ監督は、長編デビュー作となる本作で「ブータンの独自性を記憶に焼き付けたい」と人々の笑顔あふれる暮らしを圧倒的な映像美で映し出した。
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今回到着した映像は、僻地にある学校へ渋々赴任した若き教師ウゲンが、子どもたちを前に最初の授業を始める様子が映し出されている。
黒板もない教室に戸惑いをみせる中、ウゲンが自己紹介し、続いて子どもたちが自己紹介をしていく。歌手になりたいペム・ザムは、大人びた歌詞の歌を披露し、一方、先生になりたいというサンゲは、「先生は未来に触れることができるからです」とまっすぐにその理由を述べ、ウゲンは複雑な表情を一瞬浮かべる様子も。実は、教師を辞めてオーストラリアに行き、歌手になることを夢見ていた…。
本作は、実際にルナナ村にある学校で撮影され、生徒役は全員村に住む子どもたちが演じている。学級委員として登場するペム・ザムについては監督が「ペム・ザムが出ているシーンすべてが一番印象的だった」とふり返っており、「彼女はどれほどの美しさ、無邪気さをこの映画にもたらしてくれたか」と大絶賛している。
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映像最後には、そんなペム・ザムと監督が初めて会った日に実際に監督に聞かせたという歌を歌うメイキング映像も収録されている。
また、本作をいち早く鑑賞した著名人から「子どもたちの好奇心に満ちた輝く瞳と、山の神々や大自然に捧げられるこの歌声が、気付かせてくれる。大切なことは遠くにあるのでは無いことに、近代的で便利な日々にあるのでは無いことに」(渡辺一枝/作家)、「すっかりルナナのファンになってしまいました」(加藤登紀子/歌手)、「現代ブータンの発展にまずはびっくり。その対極にあるルナナの人々の純粋さと強さに心打たれ、何気ない場面に幾度も涙があふれました」(紺野美沙子/俳優・朗読座主宰)などといった絶賛のコメントも到着している。
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『ブータン 山の教室』は4月3日(土)より岩波ホールほか全国にて順次公開。