【映画と仕事 vol.7】「ブラックシンデレラ」脚本家・吉田恵里香 AbemaTVでルッキズムをあえて描くワケ

「映画お仕事図鑑」第7回では吉田さんにロングインタビューを敢行! なぜABEMA配信の若者向けのラブストーリーであえてルッキズムをテーマにしたのか?

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「ブラックシンデレラ」(C)AbemaTV,Inc.
「ブラックシンデレラ」(C)AbemaTV,Inc. 全 21 枚
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「恋愛ドラマは難しい」と言われる昨今の風潮をものともせず、話題のラブストーリーを次々と世に送り出している脚本家・吉田恵里香。映画『ヒロイン失格』にアニメ「思い、思われ、ふり、ふられ」、そして“チェリまほ”こと「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」など映画、アニメ、ドラマとメディアを問わず幅広い活躍を見せている。

そんな彼女のオリジナル脚本による新ドラマ「ブラックシンデレラ」がABEMAにて配信中。この作品、ド平凡なヒロインと2人のタイプの異なるイケメンが…という、シンプルなラブストーリーのように見えて、いわゆる“ルッキズム(=外見至上主義)”をテーマにするなど、非常に挑戦的な作品となっている。

「ブラックシンデレラ」(C)AbemaTV,Inc.
「映画お仕事図鑑」第7回では吉田さんにロングインタビューを敢行! なぜABEMA配信の若者向けのラブストーリーであえてルッキズムをテーマにしたのか? といったことから、現代のラブストーリーの在り方、魅力的なヒロインの描き方までたっぷりと話を聞いた。


様々な経験が今の仕事に繋がった


――まず、吉田さんが脚本家になろうと思ったきっかけについて教えてください。

もともとは小説を書きたくて、いまも小説の仕事もしているんですが、そんな中で大学時代から西田征史(※「とと姉ちゃん」などで知られる脚本家)さんのアシスタントをしていたんです。そこでいろんな作品のプロット協力であったり、ラジオドラマをやらせていただくようになり、「脚本の仕事ってすごく面白いな」と思うようになりました。西田さんとの出会いで沢山素敵な経験をさせていただき、人生が変わったと言いますか……それで以前から映像作品も好きだったこともあり、だんだんそちらが主軸になっていった感じですね。なので明確に「脚本家になろう!」と思ったことはないというか、いま自分が脚本家なのかというのも正直、曖昧で…(苦笑)。大きな意味で物語を書く“作家”というイメージで仕事をさせてもらっています。

――実際、映画やドラマの脚本だけでなく小説、漫画原作など幅広くお仕事をされていますね?

そうなんです。とにかくお話が書ければ何でもいい…と言うと言葉が悪いですが(笑)、実際に絵本や漫画もやりたいなと思ってますし、“お話”に携わる仕事がしたいんですね。

――そもそも、そうやって「お話をつくる仕事をしたい」というのは小さい頃から?

そうですね。幼稚園の頃から絵本を描いてましたね。両親が映画や本が好きで、小さい頃から読み聞かせをしてもらっていて、絵を描くのも好きで、自分で“連載”していました。「バイオハザード」だったり、ジブリだったり、『フック』、『ジュマンジ』など、いろんな作品の要素を混ぜてパクッて(笑)、200話以上の物語にしてました。読者は親と数人の友達なのに、キャラクターの人気投票をしたり、手塚治虫先生に憧れて、手塚漫画みたいに作者を作中に登場させたり(笑)。お話の世界に生きていたい子でした。そういう意味ではずっとその頃の延長線上で生きている感じですね。

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――大学時代から西田さんのアシスタントをされていたとはいえ、大学卒業にあたり普通に就職しようという気持ちはなかったんですか? ご両親に反対されたりは?

ありましたね。実際、大学で教員免許も取ってまして、子どもの教育に興味があったので、もし(脚本家の道が)ダメでも…と言うと教師の方に失礼ですが、先生をやりながら小説を書いたりしてもいいかなと考えてました。

一番大きかったのは父から「3年やってみて、何かしらの手応えが得られなかったなら、それを主流にするのはやめなさい」と言われたことですね。当時は実家に住んでいたんですが、3年は何も言わないから好きなことをやればいいと。

――この世界でやっていけるかどうかを試すための3年の時間を与えられて…。

“手応え”ということに関しては(アシスタントではなく)私個人のお仕事をもらえるようになればいいんじゃないかということで、結果的に3年の間に一応、自分の仕事をもらえるようになったんですね。

具体的には「シャキーン!」というNHKの教育番組の構成の仕事、西田さんが書いたドラマ「実験刑事トトリ」のノベライズ、それから学生時代から西田さんと共同で脚本を書いていた「TIGER & BUNNY」もオンエアが始まりました。その後、日本テレビの「恋するイヴ」というSPドラマのオファーもいただけて、ポツポツとですが、未来のスケジュールが埋まるようになってきて、それで私自身「もうちょっと頑張ってみよう」となりましたし、親も「頑張れ」と言ってくれました。

ちなみにそれまでは「誰かに報告しないと人は怠ける」ということで毎月、両親に「こういう仕事をいまやっています」「こういう仕事でいくらもらいました」「こんな企画をつくったけど通りませんでした」とか報告書を提出することを義務付けられていたんです(笑)。いま考えるとありがたいですが、当時は「大学も卒業したのに何でこんなことを…」と思ってましたね。報告をしないといけないので、通らなくてもドラマの企画書をとにかくいっぱい書いてみたり。

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――アシスタント時代も含めて、初期の頃から脚本だけでなく、ノベライズから番組の構成まで様々な分野の仕事をされていたんですね。

そうですね。最初から希望通りに小説を書かせてもらえてたら、そうなってなかったと思いますが、事務所の社長からも「小説を書きたいなら、賞を獲るか、仕事を積み重ねていくしかない」と言われていましたし、そうやって何でもやっていくうちにいろんなお仕事をもらえるようになった感じですね。

――そうやっていろんな仕事をされる中で、作家として鍛えられ、成長につながったのはどういう業務ですか?

まず「最初から最後まで書く」という作業ですかね? 当たり前ですけど仕事なので必ず最後まで終わらせないといけないので。学生時代は途中で放置している作品が沢山あり、物語を作るアプローチの仕方は明確に変わりました。終わりまで書き切らないとそれが面白いのか? 駄作なのかもわからないですから、それはどの仕事でも言えることだと思います。

“鍛えられた”という意味では、自分が素人の時はドラマを見ても安易に「つまらない」「私には合わない」とかで終わってたんですが、そこで終わらず「なんでつまらないのか?」「自分ならどうしてたか?」ということを考えることは、この仕事を始めてからやるようになったことですね。

そうやって自分で考えてみると「こうやればいいんじゃない?」と思いついても「いや、それじゃ主人公が全然輝かないな」といったことが見えてくるんですね。それで「そう考えるとこの作品、あまり面白くはないけど、やろうとしてるテーマは間違ってないな」とかわかるようになってくるんです。そうやって見ていくと、実は世の中、そこまでつまらない作品ってないんだなと思いますね。

もうひとつ、具体的に鍛えられた仕事は「TIGER & BUNNY」のコミカライズの脚本ですね。これがすごく大変で毎月短編を1本書かないといけなかったんです。どうやって切り口を変えながら、いろんな話を書いていくかという勉強をさせてもらいました。

この3つが、いまの自分を作ってくれたのかもしれないですね。

――ちなみに、吉田さんがアシスタントをされていた西田さんは、あまり恋愛作品を書くイメージがないのですが、吉田さんは映画やドラマでラブストーリー、少女漫画の実写化の脚本を書かれることが多いですね。吉田さん自身、もともとラブストーリーを書きたいという思いはあったんですか?

結果として得意になったというところはありますね。私、もともと向田邦子さんの作品が好きで、いまでも向田さんみたいになりたいんです。ファミリードラマも恋愛ドラマも書きたいし、エッセイも書きたいなぁと。

事務所に所属した時は年齢が若かったこと、恋愛作品を観るのが好きだったこと、そして西田さんが恋愛ものをあまり書かないことから、私はそっちの分野を仕事を頼まれる脚本家になろうというのもありました。自分の転機となった作品で『ヒロイン失格」という映画があったんですが、あの作品を評価していただいたことで、そこから恋愛作品のオファーをいただくことがグッと増えましたね。

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《text:Naoki Kurozu》

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